第43話
終わり良ければという言葉があるように、その逆をしたら後味が悪い。
そう言われたにも関わらず、その逆をしてしまった馬鹿は皆に深く頭を下げた。怪我が無かったので問題なし、とアオさんは笑ってくれた。
その一方、彼女とは別の意味で、ツツミチは大笑いをしていた。あまりにも酷い嘲笑っぷりだったので、ソラ含む女性陣は全員引いていたのは言うまでもない。
悪い奴じゃないんだが、その極端さが女の子に受けないのを未だに理解していないのが馬鹿があいつだ。
色々あったけど、片付けまで終わり、解散の時間となった。
アオさんも上谷戸きのみも南タマキさんも、家を出るまでオレの指の心配をしてくれた。流石のツツミチも、最後には非礼を詫びて家を後にした。
皆が帰ってしまうと、もぬけの殻と表現できる程、リビングは広々と感じた。
ソースの匂いが付いたと言って、梨花はシャワーを浴びに出て行った。ソラは夕飯までゲームをしようと誘ってきたが、オレは適当な言い訳をして断りを入れた。
家を出たオレはそのままコンビニ方向へと、駆け足で進んだ。
一応、コンビニも覗いてみた。目的の人物はおろか、知った顔すら居なかった。歩道に出ると、点滅の青信号を急いで渡った。
イタリアンレストランの裏を駆け抜け、レンタルビデオ屋を過ぎると母校の小学校が見えてくる。校舎を外周するように、住宅街の路地を掛けていく。
レンガっぽい塀、屋根のある駐車場には車は止まっていなかった。よくある普通の一軒家、小さな格子のような戸を開けようとしている彼女を発見した。
「上谷戸っ!」
呼び止めるように声を出すと、彼女は驚いた状態の色を見せた。
「どうしたの、クロくん。今度は何の予行練習?」
こいつはいつまで予行練習を引っ張るつもりだ。
「違う。聞きたいことがある」
「どうしたの?」と上谷戸きのみは小首を傾げた。
オレは大きく深呼吸をして、息を整えた。なんせ、人前で初めて口にする単語だ。言い間違いは避けたい。
「お前も魔法が使えるのか?」
上谷戸きのみは少し考えるような仕草を取った後、満面の笑みをこちらに向けた。どういう意図の笑みだと思い、状態可視をした。そのまま意味で、喜びを示す状態の色だった。
「やっと、思い出したんだね。ギムレット」
その名前を耳にした瞬間、オレの心臓は大きな昂ぶりを覚えた。
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