第26話
ホームルームが終わり、アオさんに話を持ち掛けようと、彼女の方を向いた。
何故か、アオさんはオレの顔を見た瞬間に、笑いがこみ上げてしまったようだった。
その後、話を持ち掛けようとする度に、アオさんは笑ってしまう。
人を笑顔に出来るのは才能の一つ。とかよく言うけど、そのせいで話にならないんだから困る。上谷戸きのみのせいで、よく分からない事態となってしまった。
それでも二限目が終わる頃には、何とか顔を合わせても大丈夫なようにはなってくれた。
いきなり本題から入るのは無礼だし、まずは軽い雑談から始めよう。
「ときにアオさん。上谷戸とはいつ仲良くなったの?」
その名前を出した瞬間、再びアオさんは笑い出してしまった。
悪い印象は与えたくなかったが、これでは話にならない。相手は葉菜類だが、根本から原因を絶つ必要がある。
「上谷戸、どこだ」とオレは立ち上がる。
「なに?」といきなり後方から声がする。振り向くと葉菜類女子、上谷戸きのみがこちらを向いていた。オレの左斜め前、南北の位置の席に彼女が座っていた。
「……何でそこに居る?」
「ここ、わたしの席」と上谷戸きのみが言った。嘘をついている色ではなかった。
「気づかなかった」
「嘘。押立くんって、天然?」
上谷戸きのみが目を丸くして言った。驚愕の色をしていたので、本気で言っているみたいだった。
「お前に言われたくない」
「わたしは人工です」
何故か勝ち誇った顔をして、上谷戸きのみが席に近づいてきた。
「オレもだよ」
こっちも似たような顔を返してやった。何故かアオさんは腹を抱えて笑っていて、何故か南さんも顔を抑えていた。
「いつ、アオさんと仲良くなったんだ?」
「それはこっちの台詞だよ」と上谷戸きのみは突っ込みを入れた。言っている意味が分からなかった。
「押立くんて、ほら、女子苦手だったじゃん?」
「ホモじゃねえよ」
変に誤解されても嫌なので、先に訂正しておいた。
「女好きなの?」
「男は皆そうだ」
成程という感じで、上谷戸きのみは納得の色を見せた。
「わたし。ほら、出席番号七番」
上谷戸きのみは唐突に七本の指を立てて言った。
「出席番号が近いよしみで、大丸さんと仲良くなったの」
今の話はアオさんと仲良くなった理由を説明していたのか。主語が無かったので、何の話かと思った。
そうだよな。入学したての頃って、出席番号が近い奴と話すよな。オレがツツミチと仲良くなったのも、それが切っ掛けだった。
「それじゃ、オレと似たようなもんか」
「身長が?」
「誰が豆だ」
あまり話した事はないが、話してみると失礼な奴だった。
そして、あまりにも上谷戸きのみが天然な会話をするせいで、昼休み中もオレはアオさんとまともに会話を交わす事が出来なかったのだ。
仕方が無かったので、オレは携帯電話のメッセージでやり取りをした。
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