第25話


 学校へ着くと、クラスの奴らがダテリカは今日も休みか聞いてくる。


 ここでは梨花の親族として、悪い印象を与えないように応えなきゃ駄目と言われている。


「休みだコノヤロウ」


 昨日も同じ内容を聞かれたので、いい加減うんざりしてしまった。


 自席の方に目をやると、そこには女子の姿があった。


 右の席に南タマキさん、後ろの席にアオさんが居たので、間違いなくあそこはオレの席だった。


 よく見ると、南タマキさんの横には稲瀬さんも居て、四人で楽しく雑談を交わしているようだった。


 悪い印象を与えないようにしたいので、割って入りづらい。


 ホームルームにはまだ時間はあるようだし、ツツミチの所まで行くか。オレは悪友の姿を探してみるが、遅刻魔がこんな時間に来ている訳が無かった。


 再びアオさんの方へと目をやってみると、何故か南さんと目が合ってしまった。オレを見た瞬間に焦りの色を出していた。焦る必要はないし、悪い印象は与えたくなかったんだ。


 とりあえず近づいてみると、オレの席に座っていた女子が立ち上がって苦笑いをした。


 誰かと思えば。オレの席に座っていたのは、上谷戸きのみだった。


 後ろ髪を束ねて折り畳み、バレッタでアップにしているのが特徴的な女子。尻尾に見える髪型だけど、ポニーテールではない。


 どっちかっていうと、八百屋で見かける束になった葉菜類みたいだ。ホウレンソウとかチンゲンザイみたいな。名前がきのみなのに、葉菜類ってどうなんだろう。


 そんな葉菜類女子の彼女とは中学が同じだが、話した事があったか無かったか。その程度の関係性を持つ女子だ。


「ごめんね。ちょっと、話してて……」


「いや、別に気にすることはない」


「本当? じゃあ、ここに引っ越してきていい?」


 上谷戸きのみが小さく首を傾げ、嬉しそうな顔をして言った。


 こいつ、折角捻じ曲げたオレの結果を横取りする気か。それに引っ越しするなら、それ相応の準備をしてから言えっての。


「そりゃ駄目だ。消しゴムを用意しなさい」


 オレが言うと上谷戸きのみが首を傾げ、疑問の色を浮かべた。


「え、いくつ?」


 あまりにも上谷戸きのみが突拍子も無い事を言ったからか、アオさんが大きく噴き出した。


 見れば南さんも小さく笑っていて、稲瀬さんに至っては両手で顔を抑えているくらいだった。常識的に考えれば、人数分に決まっているだろう。


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