第24話
梨花とソラがこっちに引っ越してきたのは、ほんの二週間前くらいの話だ。
前の年から、二人がこっちの学校に通うのは決まっていた。
梨花は「テレビ局が近いから」という全うな理由があったが、ソラに関しては「梨花だけずるい」という大変子供じみた理由だった。
タイミングがいいのか悪いのか。二人の父親の単身赴任が決まったせいで、物事は大変スムーズに運んだ。
うちの父親が亡くなり部屋を遊ばせていたので、我が家にとっても悪い話ではなかったのだ。
という夢を見た。
実際の出来事が夢に出るって、普段から夢みがちなオレにとっては新鮮な話だった。
携帯電話を見ると、梨花からメッセージが返ってきていた。土曜日なら何とかなるみたいだった。
顔を洗い、歯を磨き、制服に着替えてリビングへと向かった。つまらなさそうな顔のソラが、パンをかじりながらニュース番組を睨んでいた。
我が家の朝食は基本的にパンである。親父が生きていた頃は和食だったけど、今は違う。オレとソラと次いでに母親。寝坊助が多いので、朝食に時間を割ける人間が少ないのだ。
ソラの対面に腰かけると、母親が焼き立てのパンと目玉焼きをテーブルに置いてくれた。
飲み物はどうするか聞かれる前に、オレの前に牛乳が出される。別に嫌いじゃないが、遠回しにチビと言われているような気分だった。
「おはよう、クロ」とソラはこっちを向いた。
「おはよ、ソラ」
次いでに母親にも朝の挨拶をして、オレはパンに手を伸ばした。
「そっちはもう通常授業?」
口にパンが入っていたので、オレはソラの問いに頷いて答える。
「こっちもだ。……みんな頭良かったら、どうしよう」
ソラは溜息を吐いた。昨日の梨花も、電話口でこんな表情をしていたのだろうか。
みんなという言葉がふと気にかかり、オレはソラにある質問を投げかけてみる。
「友達、出来たのか?」
今度はソラの口に何か入っていたようだ。口をモグモグさせながら、コクリと小さく頷いた。
「……梨花に会わせろとか、言ってこない?」
「そんな奴とは友達になんない」
「オレもだ。気が合うな」
オレが笑うと、ソラが勝ち誇ったような顔で堂々と言った。
「当たり前だ。家族だからな」
念のため、ソラにも土曜日の予定を聞いてみた。丸一日大丈夫だと言ったので、暇人かと返してやった。
「暇人だけど、クロの誘いだったら、デートでも断るかもな」とソラは笑顔で言った。
真実を述べた色をしていたので、デートは断るなと忠告を入れておいた。
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