第22話
ただ、これでは大丸アオさんと梨花を仲良くさせるのに、何の参考にもならない。
二人が仲良くなれたのは、オレが互いと仲がいいってだけの話だ。押立クロという共通点があっただけ。
「そっか。なら、梨花とアオさんの共通点を探せばいいのか」
突然の良案にオレは自分の手を叩いた。
「共通点?」と大丸アオさんはお茶を飲みながら、可愛い目を丸くする。
「そう。ツツミチはオレという共通点があったから、仲良くなれた。だから……」
「その前にさ」とツツミチがオレの会話を遮るように口を挟んだ。
「大丸さんが梨花ちゃんと仲良くなりたいって思ったのは、やっぱりアイドルだから?」
ツツミチの言葉にオレの方が目を丸くした。
奴にしては適格すぎる質問だ。こっちだって薄々感づいてはいたが、やっぱりそうなのかもしれない。
この感情だけで言えば、好みの女の子が家族と仲良くなってくれるに越した事はない。
だけど、ちゃんとそこは白黒はっきりしておかなきゃ駄目なのかもしれない。何で大丸アオさんは梨花と仲良くなりたいと思ったんだろう。
「そう。って言ったら、幻滅する?」と大丸アオさんはオレの方を見て言った。
「する」とツツミチはハッキリ答えた。
「だって、それって自分がアイドルに近づきたいから、クロを利用しているようにしか見えない」
どの口がそれを言うか。お前だって、似たようなもんじゃないか。
「でも、ツツミチさ……」
「クロ」とツツミチはオレの言葉を再び遮る。
「利用されてもいいとか言わないよな? 俺は別に従妹がアイドルだって知ってなくても、お前とは友達になった」
ツツミチの言葉が胸に突き刺さるような気がした。
図星だった。オレはアオさんと仲良くなりたいから、利用されてもいいって思ってしまっていた。それから、仲を深めればいいと。
だけど、第三者から見れば、そんなのは不公平だ。増してや友達がいいように扱われるなんて、ツツミチからしてみれば面白くない話だろう。
「あのね、最初はそうやった……」
大丸アオさんが呟くように口を開いた。
「同じクラスにアイドルが居るって、仲良くなりたいって……けど」
オレは彼女の身体に纏う光を見てみる。嘘の色には全く見えなかった。
「クロくんと梨花ちゃんがプリントのやり取りしてるの見て、ダテリカもわたしらと変わんない普通の高校生なんだって思った」
「そりゃ、そうだ。梨花は普通の女子だ」
「だから、わたしも、ダテリカのファンだけど、それとは別に普通の高校生の、普通の友達として接してみたいって……」
オレは再び、彼女とメアリーの姿を重ねてしまった。
今は逆の立場かもしれないが、彼女の考え方はまるでギムレットに接した時にメアリーと同じだったのだ。
オレは自分が恥ずかしくなってしまった。
普段から梨花は普通の女だと言っているくせに、大丸アオさんが従妹のファンで良かったと思ってしまっていた。
身内がアイドルであるのを利用して、彼女に近づこうとしていた。
梨花を利用していたのは、オレの方だったんだ。
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