第17話


 寄り道して帰ろうぜ。


 というツツミチの提案を蹴ろうとしたが、何故か梨花の方が乗り気だった。


 今日は何故か追けてきてる奴は居ないが、梨花を連れてどこか行くというのは問題だらけだ。


 国民的アイドルが店に入っただけで、他のお客さんの迷惑になりかねない。


 それなら変装をすると、梨花が言った。


 公園のトイレに入って少しすると、メイクの派手な茶髪の女の子が出てきてオレらに手を振った。


 ツツミチの知り合いかと思ったが、声を聴いてそれが梨花だと分かった。


 女の子はメイク一つで、ガラリと見た目も雰囲気も変わってしまう。おっかない生き物だと心から思った。


 こうして三人が向かったのは、駅前のドーナツ屋だった。


 昼食もまだだし、ここでいいでしょう。と提案したのは梨花だった。


 意外と庶民的なんだな、というツツミチの台詞をオレは鼻で笑い飛ばした。


「庶民的も何も、梨花は庶民だ」


 何を言っているんだコイツという感じで、ツツミチは呆れた顔をした。でも、梨花は何故か機嫌が良さそうだった。


 二人が色とりどりのドーナツを選んでいるにも関わらず、オレが頼んだのはラーメンだった。


 何故かここのドーナツ屋にはラーメンがある。逆にそれが無ければ、昼飯をドーナツ屋で済ませる事自体を反対していただろう。


 甘い物は嫌いじゃないけど、昼はちゃんとしたものを食べたい。


 オレらは敢えて窓際の席に座った。景色も悪くなかったし、今の梨花を見ても誰もダテリカとは思わない。


「いつの間に仲良くなったの、お前ら」


 先ほどから思っていた疑問をオレは二人にぶつけてみた。


 ツツミチは悪い奴じゃないけどアイドルは好きなので、下心でもあるんじゃないのかと思っていた。


 分かり易い性格だから、そういうつもりで近づいたなら、梨花だっていい顔はしない筈だ。


「そりゃ、お前。俺はお前の大親友だろう? その従妹と仲良くなるのは当たり前だろう?」


 様子を見る限り、嘘をついている色ではないが、胡散臭い笑顔だとオレは思った。


「あたしだってクロの友達とは仲良くなりたいし」と梨花が言った。


 妙に演技臭い態度で、濁った色をしていた。何やら裏がありそうな気もするが、面倒なのでそれ以上の追求はやめておいた。


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