第16話


 部活紹介は滞りなく終わり、これで本日は解放となった。


 話の流れを作りかったので、オレは南さんに何の部活にするかを聞いてみた。実は入学当初から、天文部に入ると決めていたらしい。


 部活紹介の時、天文部は何を言っていたっけか。


 綺麗な先輩と、ヤンキーっぽい人と、根暗な感じなイケメンが居たのは覚えている。


 オレの中学の時の先輩が、その二人と友達だったような気がする。それを考えると、天文部はパスした方が良さそうだ。星の知識も無ければ、興味も無い人間が入る部活ではない。


「大丸さんは?」とオレはいよいよ本題に入る。


 すると何故だか、大丸アオさんは少しむくれた顔になる。もしかしたら、聞いてはダメな話だったのだろうか。


「わたしは、見学してから、決めようと思ってぇ」


「そっか。……一緒に行こうか?」


「別に一人でいけます。おおきに、押立くん」


 そう言って彼女は席を立って行ってしまった。


 最後はあからさまに不機嫌な色を出してたけど、そこまで部活に興味を持たれたくなかったのだろうか。


 聞いちゃまずかったのかな、とオレは南さんに言ってみた。


 だけど、彼女も分からなかったようで、首を傾げていた。同じ女子が分からないのであれば、こっちが分かる訳がない。


 それでも、やっぱり原因は自分だと思うから何とかしないといけない。


「クロ、南さん」


 女の子の声に振り向くと、梨花がツツミチと一緒にオレの席に来ていた。


「部活どーすんの?」


 どうしようと、オレが口を開く前に南さんが「天文部」だと返答した。


「クロもか?」とツツミチが言った。意外そうな顔をしていたので、オレは全力で首を振る。


「星とか分からないし」


「……わたしも分からないんだけどね」と南さんは苦笑いを浮かべた。


「分からなくてもいい。興味あるなら、来れば?」


 気づけば南さんの後ろに稲瀬さんが立っていた。天文部は中学の時の先輩が関わっていそうなので行きたくないが、それを口にすると言及を求められそうだ。


「いいです。あまり興味もないです」


 適当な言い訳ではぐらかしてみたら、稲瀬さんは少し残念そうな顔をした。暖色だったのが、オレの一言で寒色になってしまった。少し悪い事をした気持ちになった。


「まぁ、無理強いはしないよ。それじゃ」


「またね」


 稲瀬さんと南さんが交互に言って、その場を後にした。


「梨花ちゃんはどうする?」


「あたしはクロと同じがいい」


 ツツミチの問いに、梨花は最初から決まっていたかのように即答した。


「お前、部活以前に学校にあまり来れないだろう」


 オレが言うと、梨花は不機嫌そうに口を尖らせる。


 今は落ち着いているが、新曲が出てしまえば色々なメディアの仕事が入ってくる。そうなると、国民的アイドルさんは忙しくなるに違いない。


「まぁ、オレは部活なんてやる気はないが、ツツミチは?」


「俺もさ」


 予想通りの答えだった。現にオレもツツミチも、中学の時は帰宅部だ。何の趣味も特技の無い男達は、下手に部活なんかしない方がいいに決まっている。


「帰るか」とツツミチが言った。


「ああ」とオレも答えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る