第11話
夕飯は酢豚だった。前に一度、パイナップルを入れるという荒行に腹を立てたので、それ以降は母親も入れてない。
オレの隣にソラ、母親の隣が梨花の席となっている。
アイドルやっているだけあって、梨花は人一倍お喋りな性格だ。今日の現場はどうだったとか、共演者がどうだったとか、先ほどからずっと芸能界の話は続いている。
全く興味の無いオレは適当に相槌を打ち、テレビが好きな母親はニコニコと笑顔で聞いている。ソラはどうでも良さそうに、黙々と食べ続けていた。
「でも、やっぱり、入学式くらいは行きたかったな」と梨花が残念そうに言った。
そうは言うがな、梨花がダテリカと知られただけであの様だ。本人が登場したら、お祭り騒ぎになっても過言ではない。
「クロはあたしと同じクラスになれた?」
梨花の問いにオレは黙って頷いた。
「良かった」と従妹は何故か笑顔になる。
「どう? クラスにあたしより可愛い子居た?」
「梨花より可愛い子はそう居ないんじゃないの?」
母親が何故か自慢げな顔をした。
「そうだろうけどね」
「んなことない」
梨花の自慢げな態度が鼻につくオレは、ここで素直に肯定する気になれなかった。
「同じクラスの稲瀬さんって人はクールで綺麗だし、その友達の南さんって子も小さくて可愛かったし、それに……」
大丸アオさんの話のしようとしたが、オレは何故かそこで言葉に詰まってしまった。
すると梨花が口を尖らせて「何よ、それ」と、不満げな顔になった。このアイドルを差し置いて、他の女の子を褒めるなんてあり得ないという表情だった。
「明日はあたしも登校するから、その可愛いって子達を紹介してよね」
「えー……やだ」とオレは言った。
他はどうでもいいけど、大丸アオさんだけは何だか紹介したくないと思ってしまった。
仲良くなって、ある事無い事を話されても困るし。これだから、同じ学校に家族が居るのって、面倒なんだよな。
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