第6話
オレの従弟である押立宇宙は女みたいな顔をしているが、れっきとして男である。その証拠として、奴の股間にはオレと同じ物がぶら下がっている。
二人とも母親似だけあって、梨花とソラの顔つきは本当に似ていた。小学校の時なんて、ランドセルと服装で区別をつけなきゃならないくらい。今以上に同じ顔をしていたのだ。
中学になれば俺だって、背も伸びるし筋肉もつく。とソラは豪語していたが、本当に母親の遺伝子が強いのだろう。十四になった従弟の身長は、未だに百五十を切っている。
「入学式、どうだった?」とソラがパンを頬張りながら言った。
「別に普通」
夢に出てくる前世の想い人が居るとは言えず、オレは適当な答えを用意した。
「……俺は梨花の弟だって、速攻でバレた」
クラス中の奴らに取り囲まれて、すごい疲れたとソラは言った。表情と色から、疲労感はたっぷりと伝わった。
「そういや、オレも速攻でバレた。バラして良かったのかね」と言ってオレはシチューを口にした。
「……良かったって?」
ソラが首を傾げたので、オレは今日の出来事を一通り説明した。
ファンに囲まれて説明する羽目になったり、終いには後を尾けられたり。家がバレたら一大事になるんじゃないか、という危惧も話した。
「さぁね、梨花のことなんて知らんよ」とソラは鼻で笑った。
顔が似ているのもあり、梨花で色々と苦労しているのは、オレもよく知っている。故に二人の姉弟仲は決して良好とは言えない。
「別にオレだって梨花なんざ知ったこっちゃないが、それでお前に迷惑が掛かるのもどうかと」
「それはクロのせいじゃない」
口を尖らせてソラは言った。こういう仕草も梨花と本当に似ている。
ソラが立ち上がると、再び戸棚からパンを出してトースターに入れる。次は空になった皿にシチューのお代わりを注いで、再び食事を再開した。
絶対に残すのが目に見えてるから、オレはお代わりをしないでおいた。見事に従弟は全部食いきれなかった。
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