第二章

第1話

ドサッ。


「いてっっ!」


地面に尻餅をつく。


「どこだここは?」


「ンーンーマイクテスト、マイクテスト、智也くん聞こえますか?聞こえますか?」


「しっかり聞こえてますよ!ちょっと、死神様!ここどこですか?しかも痛いし。」


「聞こえてるみたいでよかった。ここは君がいる宇宙とは少し離れた宇宙にある星さ。なかなか君が生活できる星って多くなくてね。」


「そんなに遠くまで移動してるんですか??


ていうか今感触があるんですけど僕の体どうなってるんですか?」


「それは僕がちょちょっと作った依代みたいなものさ。


悪くないだろう?」


手を握ったり開いたり、ジャンプしたりして確かめる。


「凄いですね。違和感もないし心なしか元の体より体がききますね。」


「まあ、この世界だと割と平均的な体ではあると思うよ。」


「この星はどんな星なんですか?」


周りを見渡しながら尋ねる。


「そうだねぇ、RPGゲームに出てきそうな星かな。君にはあんまり関係なさそうだけど、勇者とか魔王とかそういうのもいるし、科学より魔法が発達した世界だね。」


「おー!それは楽しみだ!ここでは僕はどんなことをするんですか?」


ワクワクしながら聴く。


「君が思ってるのとはちょっと違うかもしれないけどがっかりしないでね?


この世界は最近非合法だけど奴隷が出回るようになったんだ。


この奴隷の普及をさせないようにして、奴隷を解放してあげるのが今回の君の役目になるよ。」


「なるほど!わかりました!


頑張ってみます!」


「あ、一応言っとくと依代はそこそこ体をいじれるから色々な活動に支障が出ない程度に強いはずだよ。


魔王を倒すとか大それたことはしなくていいからね。奴隷は死のエネルギーが溜まりやすい良くない制度だからそれさえなくなれば十分だよ。どうにかうまくやってほしい。


では、これ以上この世界にいるとこの世界の創造主に怒られちゃうからまた今度!」


こうして智也1人の異世界冒険が始まった。


********************


「よいしょ、よいしょ、よいしょ。」


険しい山を上り終えると小さな村が見えてきた。


「おー!やっと見えてきた。


そういえば、言葉は通じるんだろうか?」


農作業を行う老人を見つけ、話しかける。


「すみません、私の喋る言葉はわかりますか?」


とりあえず日本語で話しかける。


「何を言ってるんだね、アッハッハ。


この世界の標準語ジャポヌス語を流暢に喋ってるのに。


おじいさんをからかってるのかい?」


普通に通じることがわかると、


「あ、いやぁ、旅人ジョークですよ!!


ジョークジョーク!


アッハッハッハ。」


ー 急に嘘ついたけど大丈夫かな?


「この辺で道に迷ってしまって、大きな街に行きたいのですが。」


「そうだねぇ、この辺だとパルムの街が近いかねぇ、まあ近いと言っても歩きだと1週間はかかるなぁ。


今日は時間も遅いしうちに泊まって行きなさい。」


「良いんですか!助かります!この辺の地理や情勢に疎くて非常に困っていたんです。


是非よろしくお願いします!」


おじいさんに案内され家へと行く。


「うわぁ!大きいお家ですね!」


老人が1人で住むには大きすぎる家へ案内され、驚く。


「そうだねぇ。最近の農村はどこも奴隷狩りがひどいみたいでねえ、若者はみんな労働力になるからって人が少ないところを狙って襲うらしいんだよ。


なんていう世の中になってしまったんだろうねぇ。


例年ならそろそろ美味しい作物の収穫をして家族に振る舞っていたんだけどねえ。」


ー 奴隷がそんなに浸透してしまっているのか。神様は非合法だと言っていたけど、合法になったらいよいよ手をつけられないな。


頑張らないと!


「おじいさん!必ず僕が家族を助けて見せますから!


待っていてください!」


「ああ、そうしてもらえると嬉しいよ。」


そう答えたおじいさんの表情はどこか諦めが混じっていた。


****************


「死神様、聞こえますか?」


夜、おじいさんも眠りにつき、辺りが静かになった頃、智也は話しかけた。


「うん、聞こえているよ、どんな感じだい?」


「そうですね、まだ非合法なんですが相当世の中に浸透しつつあるようですね。


頑張らないといけません。」


「そうか、また良い報告待ってるよ。


では、どうかよろしく!」



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る