第2話

「うーん。」


眠気から覚め、朝の光で智也は起床した。


「いたいなぁ。やっぱり地球のベッドって凄かったんだなあ。」


腰をさすりながら立って部屋を出ると、良い匂いがした。


ー 朝の農作業に行ってくるから起きたらゆっくり食べなさい。


という書き置きとともに料理が盛り付けられていた。


シンプルなサラダとパン、そしてスープ。全てを食べ終えた智也はおじいさんのところへと向かう。


「おはようございます!


美味しい朝ごはんご馳走さまでした!」


声をかけると額に汗を浮かべたお爺さんが笑顔で答えた。


「おう!そうだろう、そうだろう。


自慢の野菜や小麦を使った料理だ。


朝一番の採れたてを使ったからねぇ。


もうじき出発するのかい?


少し待っとくれ。


途中で食べられる軽食を作ってあげよう。」


「本当ですか!嬉しいなぁ。


実は道中でご飯をどうしようかと困っていたんです。


助かります!」


暫く手伝いをした後、農作業に一段落ついたのか一旦家へ戻ることになった。


30分後、智也が身支度を整えたところでお爺さんの軽食が出来上がった。


「昨日に今日と本当にありがとうございました。


必ず奴隷を解放してまたお爺さんに良い報告をしに戻ってきます!


では、行ってきます!」


「気をつけるんじゃぞ!」


米粒のように小さくなるまで手を振り続け、智也は村を出た。



*******************


見晴らしの悪い森へ着いた。


お爺さんからもらった地図を見ると、この森を通らないと2日ほど遠回りになってしまうため、気をつけながら通る方が良いというのを確認し、智也は足を踏み入れた。


「なんだか昼間なのに暗い気がするなぁ。


武器も無いしそこら辺の石でも持つか。」


足元にある石を拾い上げ、投げる準備をする。


「ジュウジュウ!!」


木の陰から大きなネズミのような生き物が出てきた。


「うわぁ、なんだこいつ、目が赤く光ってるぞ?」


ネズミが智也に飛びかかる。


シャキンッ。


間一髪で避けるもネズミの爪で手を引っ掻かれた。


「うわぁ、痛ててっ!やめろっ!」


手に持っていた石を投げるつける。


「ギャンッ!


ジュウッッ」


逃げ回りながら石をぶつけ続けると、ネズミは動かなくなった。


「ふう。痛てて!アドレナリンが切れたかなぁ。


あ、川があるぞ!」


綺麗な川を見つけ、急いで傷を洗い流す。


「悪化はどうやらそれほどしなさそうだ。


よかったよかった。


ていうか今更だけど依代でも痛みを感じるんだな。


これからはもっと用心しないと。」


夜になれど、智也は森から出ることは叶わず、そのまま野宿をすることとなってしまった。


お爺さんにもらった火打ち石と拾った木々を集めて焚き火を始めた。


昼間に傷を洗った川で何匹か魚を取ることができたため、魚の塩焼きを焼いている。


すると


「ガサガサッッ、ジャリ。


ガサガサッッ、ジャリ。」


音が聞こえてきた。


ー 不味いな、危険な生物か?


事前に準備をしていた石を持ち、音のする方に注意を寄せる。


「あれ?こんな森のど真ん中に焚き火があるぞ!


魚まで、ある! 


ギル!見てくれよ!」


「あぁ、本当だ! そこに隠れてる人が食べようとしてたんだろう。」


ー !! バレてるな、姿を見せるしか無いか。


「やあ、どうも、旅人の智也です。


悪い事をしようとして隠れていた訳では無いんですが。


お二人は?」


「あぁ、すまないね。


私の名前はギル。一応一級ハンターをしている。


そしてこの横にいる小さいやつがロビン。


私の弟子で三級ハンターだよ。


我々はこの辺の国に限らず世界中の国で活動しているから、半分旅人みたいなものだね。」


「僕は小さく無いよ!


僕の村じゃ同い年で一番大きかったんだよ!


あなたは誰なの?」


「僕の名前は、智也と言います。


僕も旅人で最近ここら辺に来たばかりなんです。」


「そうか、君も旅人なのか。


ん?その服は修道服か何かなのかい?」


「あ、いえ、そういう訳では無いんですが、出発するときにこの服をもらいまして、特に支障もないのでずっと着ています。」


「そうだったんだね。ハンタークラスは何なんだい?」


ー やばい。ハンタークラスって何だ?


誤魔化さずに言うか。


「だいぶ田舎の方から来たので、まだハンタークラスについて詳しく知らないんです。」


「そうか、そうか、これも何かの縁だし私で良ければ何でも教えよう。」


「あ、ありがとうございます!


グゥゥ。


あ、お腹が鳴ってしまいました。


先ご飯にしますか。


一人分にしては多すぎるので、魚ご馳走します!」


お腹の音の恥ずかしさを誤魔化すように早口で智也は言った。


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