第50話 鬼、公認探索者顔合わせ会に出席す。①

【俺たちの】蒼き星について語るスレ part541【希望】


315:名無しさん

おいオマイラ!

ついにブルスフィが貯めたDPで公開ガチャするってよ! これURLな!


http://*****************


316:名無しさん

オワスフィワロスwww

なにやってもオワはオワwwww


317:名無しさん

ブルスフィはあれでやっぱ持ってるとこあるからなー

なんか引くんじゃね? とりあえず全裸待機


318:名無しさん

スマン

よく分かってないんだけどガチャってなに?


319:名無しさん

>>318

おまえブルスフィモグリかよ


320:名無しさん

>>318

ガチャって言うのはDPで引けるランダム要素が強いアイテム交換のことな

一応、武器ガチャ、防具ガチャ、アクセガチャ、スキルガチャと別れているがランダム要素が強い

で、ブルスフィはそんなガチャから当たりのスキルを引いて一躍有名になった

これマメな


321:名無しさん

ブルスフィって確か蒼炎とかいうスキルを手に入れて有名になったんだよな

懐かしいわ


322:名無し

さぁ、そんなブルスフィの公開処刑場がこちらです


323:ダンジョン情報まとめ

やめいwwww


========(略)=========


844:名無しさん

うおおおおおおおおおおお!!!?!


845:名無しさん

コイツら本当に運だけはスゲー!


846:名無しさん

ハジスフィ! ハジスフィ!


847:名無しさん

オマイラwww

でも俺もうおおおおおおおおおおお!!!


848:名無しさん

ブルスフィの時代がきてまうん???


849:名無しさん

ブルスフィこそ至高!!!!


850:名無しさん

オマイラ手のひらくるっくるやなwww


 ★


 一部の掲示板が、お祭り騒ぎで盛り上がっていることなど露知らず、大竹丸たちは土曜の早朝から三重県を立った。何せ、三重県から東京都を目指すとなるとまずは名古屋にまで行かないといけない。そこで特急から乗り替えて新幹線で東京へ――。そんな道程をこなすだけでも四時間も経ってしまうのだ。準備諸々を含めたら五時間半くらいは経っているのではないだろうか。


 そうして着いたのは東京駅。早朝の早い時間から出てきた事もあってまだ正午前くらいだ。ホテルのチェックインまでには時間がある。


「何か気付いたら東京に来ておった……」


「タケちゃん、電車の中でずっと寝てたもんねー」


 そんな本日の大竹丸の姿は昭和の女学生風ではなく、大きめの黒い帽子とサングラスを掛け、大きなマスクをした完全な不審者姿であった。そんな大竹丸はDPで交換した新品のジャージに身を包み、辺りをキョロキョロと見回している。どう見ても完全に不審者なのだが、都会の人間は自分に関わらないことならどうでも良いのか、大竹丸を注視する者はほとんどいなかった。


「そうじゃな。お目々すっきりじゃ!」


「この後って赤坂のホテルに向かうんですよね?」


 割りと大きなスーツケースを引きながら、黒岩が今後の日程を確認してくる。その顔には慣れない長時間の移動に疲れたのか、疲労の色が濃く現れていた。だが、そんな黒岩とは違い、三人娘は期待に目を爛々と輝かせる。


「ホテルにチェックインするまでに少し余裕があるからのう。御主ら何処か行きたい所とかあるかのう?」


 そう大竹丸が尋ねると、待っていましたとばかりに小鈴たちが希望を連ねる。それらを黒岩と吟味して「行ける範囲で行こう」ということになり、大竹丸たちは東京の観光とショッピングを楽しむのであった。


 ★


「死ねる……」


 赤坂のホテルに辿り着いた時には黒岩の顔色は真っ青であった。少々女子たちの買い物パワーを侮っていたらしい。ホテルの部屋に入るなり、自分のベッドにぶっ倒れダイブする。


 そんな黒岩の部屋に皆で集まる中、女子高生一同は高級ホテルというものが物珍しいのかキョロキョロと辺りを確認したり、引き出しの中を開けてみたりしている。


 そんな彼女たちに適当な場所に座るように指示を出しながら、大竹丸は今後の予定について皆と話し合おうとしていた。


「一応、この後、十八時半から会食を兼ねた顔合わせ会と公認探索者オフィシャルについての説明会が行われる予定じゃ。小鈴は妾とついてくるが、御主たちはどうする?」


「いや、流石に呼ばれてもいないのについていくのはちょっと……」


 代表してルーシーがそう言うと、あざみも黒岩もうんうんと頷いて同意する。どうやら飛び入り参加をするつもりはないらしい。


 まぁ、そうなるだろうなと予想していたので、大竹丸はホテルマンに貰ったチケットを取り出していた。


「では、このチケットコヤツを渡しておこう。これを見せれば最上階でビュッフェが楽しめるそうじゃ。これでたらふく食うと良いぞ。それと朝食もその券で食えるようじゃから失くすでないぞ」


「あ、ありがとうございます……。何か至れり尽くせりですみません……」


「っていうか、ビュッフェって何? レストランみたいな感じ?」


「ルーシーは乙女なくせに女子力が低い……」


「え、これ女子力関係あるの!?」


 最上階の展望スペースへの入場券を受け取った三人の反応は様々である。大竹丸はそんな三人の様子を満足そうに見つめた後で小鈴にもチケットを渡す。


「一応、会食の場で小鈴にも料理が出るとは思うが、出なかったら無視して最上階で食べてきても良いぞ」


「うん、わかったー」


「うむうむ、素直で宜しい」


「ちなみにタケちゃんさんは今日の会食で会う、公認探索者さんたちのことは知っているんですか?」


「いんや」


 黒岩が何となくそう尋ねると大竹丸は平気な顔でそんな事を言う。事前の下調べリサーチは重要なものではないのかなと黒岩は思ったが、まぁ大竹丸だしという言葉で納得することにした。


「初顔合わせじゃし、何も知らない方が先入観も無くて楽しめるじゃろ」


「流石、ペペぺポップ様。風格がある。大物……」


「名前ぐらいは覚えておいた方が良いと思うんだけどなぁ……」


 黒岩の的確なアドバイスは彼の声が小さかったことも合わせて、大竹丸に届かないのであった。


 ★


 会食の場所はホテルの二階にある宴会場を貸し切りにして行われる。大竹丸がその場所に向かったのは、予定の時間の五分前だったのだが、案の定迷って五分程遅刻して現場に到着していた。閉まっている両開きの扉を無遠慮に開き、中を見渡すと突き刺さるような視線が向けられる。普通なら怯んだりするところだが、大竹丸は破顔一笑。


「スマン! 迷って遅れた! メンゴじゃ!」


 大声で謝りながら登場する。


 それに対してブフッと空気を漏らしたような音が聞こえていた。見やれば癖のない黒髪を腰まで伸ばした少女が顔を逸らして肩を震わせて笑っているではないか。「ちょっと、姫……!」と隣に座る前髪の長い女性が注意を促すが、変な所でツボに入ったようだ。暫く収まりそうにもない。


 そんな最中を堂々と歩き、大竹丸は空いている席へと向かう。ロの字型に配置された席には既に全員が座っており、空いている席は二席しかなかった。そのひとつに大竹丸が座り、小鈴が続いて着席する。そして、改めて周囲を見渡して、濃い面子じゃなーと大竹丸はそんな感想を抱く。しかし、帽子、サングラスにマスクという一番怪しいスタイルなのは大竹丸である。そのことをどうやら本人は気付いていないらしい。小鈴が小声で助言アドバイスする。


「タケちゃん、変装取らないと」


「おっと、忘れておったわ」


 スパパっと変装道具を取って髪を下ろせば、此処彼処でため息が漏れる。あまりの美しさにまるで女神が降臨したかのような驚きようだ。それを見て、一瞬呆けていたらしい壮年の男が自身の気分を変える為にゴホンとわざとらしく咳を吐く。そして、一人で席を立つと、近くにあったスタンドマイクのもとへと向かっていた。


「えー、本日はお忙しい中、皆様にお集まり頂き誠に有難う御座います。私は内閣官房長官ダンジョン問題対策担当の大野政重おおのまさしげと申します。以後、お見知りおき下さい。本日、皆様に集まって頂きましたのは、昨今の皆様のダンジョン問題に対する目覚ましい活躍をお聞き致しまして、本日より施行となる公認探索者制度の公認探索者オフィシャルとなって頂けないかという打診の意味合いが御座います。とはいえ、いきなり見知らぬ者同士で横の連携は取れぬでしょうし、顔合わせとして会食の場を儲けさせて頂きました。まずは軽く自己紹介の後に会食し、公認探索者の役割とそれを受けて頂けた場合の特典を説明したいかと思います。では、まずは公認探索者第一席を予定されております大竹丸様より自己紹介をお願い致します」


 大野の言葉に後ろで待機していた黒服の男がマイクを持って、大竹丸のもとに現れる。それを見て、大竹丸は一曲歌おうかと思ったが、小鈴が真剣な表情で睨んでくるので止めた。


「あー、あー」


 ポンポンと叩いてマイクのスイッチが入っていることを確認。さて、自己紹介……と言っても何を言ったら良いのか。大竹丸はやや考えた末に名前ぐらいは名乗るかと思い付く。


「紹介に預かった大竹丸じゃ。まぁ何じゃ、宜しく頼む。あと、大野殿じゃったか。先程言っておった一席とはなんじゃ?」


「それは後程話すつもりでしたが、公認探索者制度ではランキング制を導入致します。数字が若ければ若い程に待遇や給与条件が良くなると考えて下さい。そして、現状、ダンジョンの攻略難易度と攻略時期を加味して大竹丸様が公認探索者のトップになりうると政府は判断致しました」


「ふむ、そうじゃったか! よきにはからえじゃ!」


「おいおいおい、ちょっと待てよ……」


 だが、上機嫌で対応する大竹丸とは違って、不機嫌さを隠そうともせずに絡んでくる男がいる。長いドレッドヘアに全身が赤銅色に焼けた皮膚。そして筋骨隆々のいかつい見た目から、一瞬、黒人かと見間違う容姿。その男がケチを付けた瞬間に、向かい側の席に着いていた美男美女の二人組から剣呑な気配が漂ってくる。


 だが、大竹丸にとってはいずれもとるに足らない些事なのか、興味は薄いようだ。腹減ったのう、と考えながらマイクをもてあそぶ。


「ソイツが俺たち公認探索者の代表ってことになるのか? そのチビが? 政府のお偉いさんは間抜けかぁ? なぁ?」


「島津様、口を慎しんで下さい。彼女……大竹丸様は君が攻略したダンジョンよりもツーランクも上のダンジョンをほぼ単独で攻略していらっしゃるんです。しかも、全世界で誰もなし得なかった事を、ダンジョン資格試験の最中にやっている……。実績、時期ともに今此処にいる探索者の中でも群を抜いていますよ」


 故に一席であると、大野は語る。むしろ、政府内では零席に据えて最終兵器として扱った方が良いのではないかという意見が出た程であった。それだけ、大竹丸のことは政府が特別視しているとみて間違いない。


 そして、そこまで理路整然と説明されると島津と呼ばれたドレッドヘアの男もケチを付けられないのか、チッと小さく舌打ちをして顔を背ける。


 その様子を確認してから大野は付け足すように言う。


「今、島津様からがあった通り、現状の順位は政府の独断で決めたものです。そして、この順位は今後の活躍如何によっては変動することもありますので、それを目標に励んで頂きたいと我々は考えています」


 大野の言葉に、会場内の空気がぴりっと張り詰めた気がした。誰も彼もが真剣な表情を見せている中、大竹丸の弛緩した表情だけが対照的だ。


 そして、そんな大竹丸の表情を見守る小鈴は――。


(これ、その内にタケちゃんは一席の座を追い落とされるんじゃないかなー?)


 ――そんな事を予感するのであった。

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