第78話 魔法鉱石の加工
■武具職人 パパスの小屋
~第6次派遣4日目~
バトラーは中々タケルを離してくれなかった。
オズボーンとはまったく違う意味で東方州都に居るように説得されたが、定期的に作った聖教石を見せに来ることと、魔法鉱石1個で我慢してもらった。
バトラーの部屋から何とか脱出したタケルは、魔法鉱石の加工をパパスに相談するために、パパスの小屋へマリンダを連れて転移した。
転移の間でマリンダと手をつないだが、握り返してくれなかった。
バトラーは俺のせいではないのに・・・
「あれ、勇者殿。どうしたんだい? 槍はまだ出来てねぇよ」
今日も大きい小屋で作業中だったパパスは笑顔でタケルを迎えてくれる。
「ええ、別件です・・・」
タケルは魔法鉱石の話を説明して、ダイスケ用の刀を打ち直して欲しいことを伝えた。
「なるほど、話はわかった。だが、俺も同じことを思いついて預かった石で剣をう打とうとしたんだが、どうやら炉の温度が足りねえようだ。うまく鉱石が混ざり合わねぇんだよ」
「もう試してくださったんですか! 炉の温度を上げれば何とかなるのですね。炉の炎はマキで起こしているんですよね?」
「そうだ、マキと木炭で火を起こしているが、温度を上げるときはフイゴで風を送っている」
「じゃあ、ちょっと試してみましょう」
タケルは炉の炎の中に赤い魔法鉱石を投げ込んだ。
バトラーのところで見たオレンジの強い炎ををイメージする。
「ファイア!」
炉の中の色が一気に変わった!
「こいつは、凄い! 風を送ってないのにこの炎か!」
「パパスさんも炎魔法で火をつけたり、消したりは出来るんですよね? 必要な時だけ魔法で火を起こせば、同じ炎の強さができると思います。火力が足りないときは今までどおり風を送ってみてください」
タケルは魔法鉱石を3つ渡してパパスの小屋を出た。
次回来るときには炎の刀と炎の槍をもらえそうだ。
■スタートス聖教会
パパスの小屋から転移魔法で戻って来たタケルは、前回同様にマリンダとキスをして別れた・・・、だがやはり前よりそっけない気がする。
(女心は難しい)
今日は16時で帰還になる。
あまり時間が残されていなかったので、修練はあきらめて部屋で聖教石の加工を始めた。
タケルが持っていた一番濃い色の聖教石を二つバトラーに奪われてしまった。
作れば良いだけなので、もう一度使い方をイメージして神に祈りを捧げる。
グレン様、槍から一直線に突き抜ける炎の力を・・・
ワテル様、ロッドから天へ昇る水のしずくを・・・
神はいつもどおり優しかった。
失われた石以上に綺麗な聖教石が出来上がった。
今回の派遣により転移で行ける範囲が大きく広がった。
リーブスのおかげで南方州都以外の州都にはすべて転移できる。
西條はリーブスのことを良いようには言わなかったが、むしろ好意的に対応してもらったような気がする。
(どこが、気難しかったのだろう?)
だが、枢機卿の宿題「光の固有魔法」については、見当がついていない。
次回までには解決したいが・・・何の光魔法だろう?
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