第77話 バトラーの勇者?

■東方大教会 司教執務室

~第6次派遣4日目~


魔力を注がなくても炎が出続ける武器。

もし作れれば魔法力に関係なく強くなれるだろう・・・


「武器にするなら、他の鉱石と混ぜて使えば良いという事でしょうか?」


「基本的な考え方はその通りね。だけど、作ったことがある人は居ないと思うわ」


「?」


「私も、この石を見るのは初めてなのよ。実家は代々魔法士なんだけど、特に聖教石とこの魔法石に詳しい家だったから、資料を読んだことがあるだけ。それも何十年も前の話よ」


「実際に加工するとなると、腕の良い職人が必要なはずだわ」


(パパスに頼めば何とかしてくれそうな気がする)


「ねぇ、勇者さまぁ。この石だけどぉ。一つ譲ってくれないかなぁ? もちろん、お返しはするわよ。 私自身でも良いし、私が愛する聖教石と交換でもいいわよ」


(この、キャバ嬢がおねだりするようなノリは何とかならんか)


「お返しは別にして、一つなら構いませんよ。もう一つを武器にして見ますから。バトラーさんは、この石をどうするのですか?」


「私? 私は石をを集めるのが大好きなの。そうだ! まだ、私の愛しい聖教石を見てもらって無かったわね」


バトラーは壁に作りつけられている棚から、アタッシュケースのような木のかばんを持って来て開けた。


カバンの中は宝石を並べるように、ベルベット地の上に綺麗な色の聖教石が並んでいる。どれも色がはっきりしており、強い魔力が込められているのだろう。


「私は風の魔法士だから、お祈りしても白にしかならないのよ。だから、赤いのとか青いのは、他の司教にお願いして作ってもらったの。凄く綺麗でしょ」


(確かに綺麗だが、自分で作った物の方が濃いような気がする)


「赤いのはオズボーンに頼んだんだけど、あのオヤジ勿体つけて中々作ってくれなかったから、手に入れるまで随分時間が掛ったのよ・・・・?」


「あれ? あんたは、こんなに綺麗な聖教石に興味が無いの? 見るのは初めてなんでしょ?」


「・・・」


(うかつな返事はしないほうが良さそうだな)


「ちょっと、 あんた! もしかしたら石を持ってんじゃない? すぐに見せなさいよ!」


バトラーは返事も待たずに、タケルが座っている横に飛び込んできた。

足元に置いたリュックを無理やり奪い取る。


「あ、バトラーさん、そんな乱暴に・・・」


「!! ギャー!!! 何これ!!」


バトラーはリュックの中身をひっくり返して、タケルが持っている聖教石をテーブルの上にぶちまけた。

赤、青、白、そして黄金色、全ての石がバトラーの石よりも色がはっきりしていた。


「こ、これ・・・あんた、ひょっとして自分で作れるの?」


(もう隠しても意味が無い)


「え、ええ。神様が親切なのでお願いすると色々できるようになりました」


「スッゴーイ!! もう最高!!」


叫びながらタケルに抱きついて、頬にキスしてくる。

腕にはノーブラの豊満な乳房が押し付けられる。


「ちょ、ちょっと、バトラーさん離れてください」


「だめよ、絶対離さないんだから。あんたは今日からバトラーの勇者だからね!」


「え!?」


(この人何言ってんだろう・・・)

(もう一人の美女の目も怖いし・・・)

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