第68話 皇都セントレアへ

■皇都州 チタの町

~第6次派遣2日目~


日の出と共にチタの町へ戻って来たタケルは、光聖教石を回収してチタ聖教会へ向かった。


アキラさん以外は町を見物して良いと伝えて別れている。

マリンダは一緒に来たそうだったが・・・、ナカジーが引っ張っていった。


チタの司祭は拍子抜けするほど好意的で、昨日のライナーの態度を平謝りに謝ってくれた。

転移の間についても聞いてみたが、チタには無かった。

司祭自身も転移魔法は使えないらしい。


(人前で使うのは控えた方が良いのかも)


レンブラントはチタからも人が乗る旅馬車を手配してくれていた。

マリンダに聞くと、旅馬車はかなり値が張るらしい。


(帳簿も一度確認しないと・・・、だが文字が読めないか)


「タケル、乗り心地が荷馬車と全然違うじゃない! 何で、最初からこれにしないのよ!」


(乗り心地が良くても苦情です)


「それは、俺も知らなかったし。だけど、この馬車一回100万円ぐらいするらしいよ」


「100万!・・・」


(金額で静かになりました、100万円は適当だけどね)


皇都はチタから北に向かって、馬車で1日かかる。

朝早くに出たので、日暮れ前には着く予定だ。


道中は相変わらず代わり映えのしない景色が続く、このあたりも起伏の少ない平野部だ。

ドリーミア全体が平野の多い地形なのか?

いずれにせよ、農業には適している。

人口が増えても耕作地に不自由することはなさそうだ。


ナカジーから20回目ぐらいの「退屈」&「暇」を聞いた頃にセントレアが見えてきた。


■皇都セントレア


セントレアは遠目にもその大きさが良くわかった、見た感じはムーアの3倍ぐらいありそうだ。


2階建て以上の石造りの建物が多いのが遠くからでも判る。

そして、中央付近にひときわ高い尖塔が見えている。

皇都大教会だろう。


ムーアだと町を出るとすべて畑だったが、住居や店などが町から少し離れた場所にも散らばっている。


街道から町に入る入り口には、教会武術士が立番していたが、町に入る人を呼び止めたりはしていなかった。


ドリーミアでは入市税や通関税のような仕組みは無いらしい。


「町に着いたらどうするの?」


「今日は宿を見つけてから宴会。それだけ」


「OK♪」


やっと、ナカジーの機嫌が直った。

もう日暮れだ、教会訪問は明日しかないだろう。


■皇都セントレア 


タケルはマリンダが勧めた中で最も高い宿を選んだ。

ツインが大銅貨1枚(1万円)、シングルが小銅貨6枚(6,000円)だった。


部屋割りは・・・

女子部屋、ダイスケ&アキラさん、そしてタケルは一人部屋にしてもらった。


レストランは気取らない範囲でメニューの多い店を紹介してもらった。

勿論マリンダご推薦の店だ。


店は繁盛していた。

10人ぐらい座れる大きなテーブルが20程あるが、2テーブルしか空いていなかった。


注文はキャッシュ&デリバリーになっていて、カウンターで注文して引換券代わりの貝殻を貰う仕組みだ。


当然ナカジーが注文を仕切ることになる。


「ねえ、何頼んでも良いの? 予算は?」


(やる気満々だな)


「そうだね、ナカジーがもう一人出来るぐらい食べても大丈夫」


「OK♪ じゃぁ、肉は全部ね!」


そういって、豚、イノシシ、鳥、鹿を焼いたものを二人分ずつ頼んだ!

野菜の煮物とシチューも人数分頼んでいる!


(5人でも食えるのか?)


だが、お金はタップリ持ってきていて、金貨があるので1,200万円ぐらいはある。

使う予定は無かったが、せっかく稼いだ金貨を見てみたかったのが本音だった。


酒は乾杯用のエールと果実酒をビンで二本もらった。

カップはカウンターから適当に持ち出して、料理の前に乾杯だ。


「では、皇都セントレアへの到着を記念して、カンパーイ!!」


5人で心地よくカップをぶつける。

エールはスタートスのお酒よりも、後味がさっぱりして飲みやすかった


順番に焼きあがった肉はタケルの想像よりかなり大きかったが、ナカジーは怯まなかった!


肉を切っては食い、飲んでは切り、食っては飲んで・・・ひたすら口と手を動かし続けていた。


味はドリーミアにしては濃い目で美味しかった

特に鹿をあぶった肉にかけてある甘辛のソースが一番気に入った。


(マスタードがあれば更に良いかも)


5人で胃がもたれるほど食い倒して、果実酒を6本空けたところでレストランを後にした。


皇都でも夜は真っ暗だ、この世界では太陽と共に生活しているので、日が沈むと限られた店以外はすべて閉まっている。


各自が持っている聖教ランプだけが頼りになる。


宿の前に戻ってくると、暗い中でランプをもった人影が固まっていた。

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