第64話 ダイスケの刀

■パパスの小屋    ~第6次派遣 1日目~


タケルはダイスケを連れて、朝一番にパパスの小屋へ転移してきた。

予定通りなら、ダイスケの刀が出来上がっているはずだ。


「おはよう、待ってたよ。ちゃんと出来てるぜ」


パパスは挨拶もそこそこに、ダイスケへ刀を渡してくれた。

鞘に入った刀は日本刀のように弧を描いて反り返っているようだ。


ダイスケは礼を言って、鞘から刀を抜く。


(綺麗だ!)


抜かれた刀身が、キラキラ光っている。

片歯のやいばは白く輝いていて、いかにも切れるというのが伝わってくる。


「せっかくだから、聖教石を入れて試してみて良いですか?」


「勿論だ。俺も見てみたいからな」


柄頭つかがしらが外れるように細工してある。強く引けば外れる筈だ」


ダイスケが鞘に戻した剣の柄から、柄頭を引っ張り出した。

出した柄頭には聖教石が挟めるように細い鉄の棒が4本延びていた。


タケルは炎の聖教石を、柄頭にはめ込んで柄に戻した。

サイズもぴったりだ、中で動くことも無い。


「じゃあ、やろうか。ファイアーブレード!」


小屋を出たダイスケは、5メートルほど離れた木の前で鞘から刀を抜いた。


右足を半歩引いて正眼に構える。

数秒目を瞑ってから叫ぶ!


「ファイアーブレード!」


掛け声ともに刀身が炎で1メートル近く伸びた!


地を蹴って、ダイスケは前方へ振りかぶりながら飛び込む。


「リャァッ!」


掛け声と共に、袈裟切りに刀を斜めに振り下ろした!


炎の刃が更に伸びる!


-ブン!-バシュッ!-


空気を切る音と軽い音が連続して聞こえ、目の前の木が切った部分から横に倒れていく!


「おぉー、ダイスケ 良いじゃない!」


振り返ったダイスケは、自慢げに刀を眺めた。


「パパスさん、ありがとうございます。イメージ通りの重さと長さです。炎もイメージ通りでました」


「そうかい、俺が見てても良い魔法剣だったぜ。まぁ、魔力の方は石の力が凄いからだけどな」


「じゃあ、次は風の魔法剣も試さないとね」


タケルは、ダイスケの刀から柄頭を外して風の聖教石に取り替えた。


「風のほうは、まだ練習中なんですよ」


「良いって、何事もトライだから。しっかり、ウィン様に祈りを捧げてね」


頷いたダイスケが、木に向かって今度は右上段に構えている。


右足を少し引いてから、刀を振りかぶった。


「ウリャァ!」


掛け声と共に、刀身が煌きながら風を切る!


-ビュッ! ― バシーン!-


5メートル先の木が爆ぜた!


今度は切るところまで行かなかったようだ。

木の表面が斜めにえぐれたところで止まっている。


「やっぱり、風はまだ駄目みたいです」


「練習だね。俺が皇都に行ってる間にしっかり練習しといてよ。


「了解っす」


「パパスさん、本当にありがとうございました」


「いやぁ、いいってことよ。ロッドの台座も出来ているから渡しとくぜ。木が見つかって取り付け難いようだったら、持って来な。もちろん、自分で取付けても構わねぇ」


タケル達は新しいダイスケの刀とロッドの台座を手に入れて、スタートスへ戻ることにした。

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