第60話 水魔法の加工

■スタートス聖教会 教会裏空地  ~第5次派遣3日目~


今回の派遣で残りの2日は全て修練に充てることにした。

2日では新しい場所には行けない、この派遣システムの大きなネックだ。


ダイスケは魔法剣をブラックモアと。

アキラさんは体術をグレイスと。

タケルは弓をイングと・・・ それぞれ頑張る。


弓はかなり上達し、50歩の距離から10本中9本は当たるようになった。

今日からは100歩の距離からショット&ダッシュだ。


だが、距離が倍になると1本も当たらない。

そして、ダッシュの距離も倍だ。

2時間でギブアップして、イングから逃げ出した。

8倍効果で体力も技術も上がっているようだが、まだまだなのだろう。

この世界は練習しなければ、決して上達しないのだ。


イングには魔法の練習をすると告げて、リュックを持って泉に向かう。


シルバーも一緒だ。

最近は見かけないことが多いが、タケルが空地で修練しているときには、いつのまにか戻ってきている。

特に誘わなくても、嬉しそうについてくる。


前から水魔法をもっと工夫できないかをずっと考えていた。

水魔法といえば泉だ。

ちょうど汗もかいたところだし。

泉のほとりで着ているもの全てを脱ぎ捨てた。


泉の水はまだ冷たいが弓の練習で汗だくになった体には気持ちよい。

聖教石を両手に握って泉の中央まで進み、前と同じように顔をつけて体を浮かせた。

相変わらずの透明度だ、水の中の浮遊物まで見える。


(ワテル様、いつも力を貸していただいてありがとうございます)


全身で水を感じながら、神に祈りを捧げた。


水から立ち上がって目を閉じ、水の聖教石にイメージを伝える。

泉のほとりの木へ右手を向けて叫んだ。


「ウォーター!」


タケルの叫びとともに、1メートルぐらいの水球が木の手前に浮かんだ。


(ウィン様、引き続きお願いします)


「ウィンド!!」


差し出した左手の聖教石から強い風が水球に叩きつけられる!


「パーン!!!」


突風をぶつけられた水球が弾けて木に襲い掛かる!

木から小枝と葉っぱが飛び散っていく。


(やっぱり、獣へのダメージは弱いけど、広範囲に水が飛ばせるな)

(炎の魔獣がたくさん居ると効果があるだろう)


この世界の火や水の魔法は飛んでいかない。

今やったように、風で飛ばすしかない・・・のか?

他にやり方があるのかもしれないが、誰も教えてくれない以上はこの方法でしばらくやってみよう。


ナカジーとのコンビ芸の方が早く出せるけど、ナカジーが風と水がまだ使いこなせない。

手順を踏んでタケル一人で出来るようにしておきたい。


(俺用の風と水のブレスレットも作ろう)


もう一度体を伸ばして水に浮び、裸の体へ水と風の両方を感じる。

神はいつもタケルに好意的だ。

タケルも神に感謝を捧げた。


神との対話が終り、泉の中で立ち上がって服を脱いだ場所を振り返ると・・・


水辺にはマリンダがいた!!


(またもや、俺の全裸を)

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