第58話 皇都デートの約束

■スタートス聖教会  ~第5次派遣2日目~


パパスの小屋から転移で戻って来たタケル達はミレーヌの食事ができるまで、部屋で待つことにした。


タケルは部屋に荷物を置いて、そのままノックスの部屋へ向かう。


部屋には、ノックスとマリンダがいた。

タケルの都合にはちょうど良い。


マリンダは目が合ったが、軽く目礼してくれただけだ。

なんか、そっけない気がする。


「勇者様、いかがされましたか?」

「ノックス司祭、今度皇都セントレアへ行ってみたいのですが、マリンダさんを2・3日貸してもらっても良いですか?」


「それは、構いませんが・・・、マリンダ、ご一緒できるのか?」

「はい、大丈夫でございますが、どのような用件で皇都にいかれるのでしょうか?」


やっぱり、目に優しさが無いような気が・・・


「はい、皇都大教会の司教にお会いしたいのです」

「リーブス大司教にですか!?」


ノックスとマリンダもかなり驚く相手のようだ。


「ええ、何か問題あるでしょうか?サイオンさんからの紹介状を預かっています」

「そうでしたか・・・、ならばお会いいただけるのでしょうが・・・」


「リーブス大司教というのはどのような方なんですか?」


(西條は気難しいと言っていたが)


「リーブス大司教様は私の師匠の師匠に当たる光の大魔法士様です。サイオン様や教皇と並ぶ光魔法の達人でございます」


(それだけ?)

「マリンダさんは直接会ったり出来るんですか?」

「とんでもない! 私からすれば雲の上の存在でございます!」


「サイオンさんより上って事?」

「上、下と言うことではございませんが・・・、非常に厳しいとお方とお聞きしています」


(気難しい、厳しい、イヤなヤツって事かな?)

(まあ、行ってみるしかないか)


「じゃあ、次ぎ来た時に私と2人で行ってもらうつもりでお願いします」

「タケル様と2人でですか?」


マリンダの目が大きく開いたような気がする。


「問題あるでしょうか? 夜はここに戻ってくるつもりですけど」

「戻ってくる?」


(そうか、転移ポイントについてあまり説明していなかったか)


「えーと。ここの転移の間なら、どこからでも戻れるように転移魔法を工夫していますから、大丈夫です」

「?」


(説明になってないな、見てもらうか)


「ノックス司祭、マリンダさんを少しお借りしますね」


タケルは部屋からリュックを持って、マリンダと一緒に教会裏の空き地へ出て行った。

外は真っ暗だ、宿舎から明かりが漏れているが、地面を照らすほどではない。


「タケル様、いったい何をされるおつもりですか?」

「見て貰った方が早いです」


いつもの手順で、聖教石を5本地面に刺す。


せっかくなので、マリンダの手を握って聖教石の真ん中へ立った。


「ジャンプ」


「ヒィッ!」


マリンダの可愛い悲鳴が漏れた。


周りの景色が、スタートスの転移の間に一瞬で変ったのだ、驚いても仕方ない

距離は数十メートルだが、距離感は伝わらない。

単に目の前の景色が変わる感覚だ。


「タケル様、今のは?」

「さっきの聖教石がここの聖教石と同じ役割を果たしています。だから、どこからでもここに飛んで来る事が出来ると言うことです」


まだ、目が開きっぱなしのマリンダと手をつないだまま、石を刺した場所に戻る。

ドサクサ紛れで握った手が汗ばんできた。


「この聖教石をたくさん作っています。だから、旅の途中でもこの石を刺した場所から、スタートスに夜だけ戻ってくれば、マリンダさんも安心でしょ?」

「安心と言うのは?」


「やっぱり、女性だし野宿は嫌じゃないの?」

「タケル様と一緒でしたら、野宿も楽しいかと・・・」


(ウン、俺もそうだけど、理性が保てないからね)


「それと、皇都には宿屋なんかもあるんでしょ?」

「はい、皇都は巡礼や行商等様々な方が訪れますので、宿もたくさんございます」


「だったら、皇都で泊まるから案内してよ。せっかくだからデートってことで」

「デート? というのは・・・」


「あぁ、それは、その2人で皇都を楽しむって事で・・・」

「はい、でしたら喜んで!」


この笑顔は反則だな、男は全員イチコロだ。


本当は皇都に着いてから、転移でマリンダを連れて行くことも出来るけど、一人の道中は寂しいし、多少の我がままは神様も許してくれますよね?


ね? アシーネ様!

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