第36話 はじめてのお買い物

■ 西方州都ムーア 教会前の泉


泉のそばではダイスケが一人で立っていた。


「あれ、ナカジーは?」


ダイスケが指差す方向を見ると、ぽっちゃりした女性が肉串を焼いている屋台を真剣に覗き込んでいる。


3人で近づいて声を掛ける。

「食べたいの?」

「うん、でも良いの。早く帰ってミレーヌにお昼作ってもらおうよ。」

「いいよ食べて。ミレーヌにはお昼ご飯は要らないって伝えてもらったし。」

「? お金どうすんの? 伝えてもらった??」

「10万円ぐらい持ってるから大丈夫ですよね、アキラさん。」

アキラさんはニッコリ頷く。


ナカジーとダイスケににレンブラント商会の件を説明した。

ナカジーは不満だったようだが肉串3本で手を打ってくれた。

1本小鉄貨3枚だそうだ。

(30円ぐらい?)


6本買って、大鉄貨1枚と小鉄貨8枚を払った。

当然、3本はナカジーが食べた。

肉串は大きな鶏肉にたまねぎが刺さっていて、甘辛い味付けだった。

ビールに合いそうだ。


それ以外にも焼き饅頭やくるみパン、ジュースを売っている屋台があったので、ナカジー主導ではしごする。

ナカジーのお腹が満足したようなので、旅に出る道具を買い揃えたいことを3人に説明する。


「旅で使えるようなものが売ってる店あったかな?」

「俺が行った店は、皮関係の商品がありましたよ。毛皮から、革のかばんとかベストとかそう言うのがたくさん置いてました。あと、大工道具の店にも行ってきました。」

「わたしは、服と靴のお店、それとお肉の店と調理道具がある雑貨のお店に行ってきた。服は殆ど同じようなデザインでつまんなかった。でも、肉屋にはソーセージがいっぱいあった。」

(ソーセージが食べたいってことね。)


最初に皮革製品の店へいくことにした。

ダイスケの言うとおり、店内には皮製のかばんや衣料品が雑多に置かれていた。

毛皮の敷物や、皮自体も販売されている。


ダイスケ達に大き目の荷物が運べるバッグを4人分選ぶように頼んでおいて、店の主人に欲しいものを伝えた。


「野宿するときに地面に引くような皮を4枚と、指先がカットされた手袋はありますか?」

「皮はどんなのがいいんだい?」

「出来るだけ、柔らかい寝心地がいいのがいいです?」

「じゃあ、森いのししの毛皮がいいかな。1枚小銅貨4枚と値が張るけど大丈夫かい?」

「他にもたくさん買うので、まとめて値引きしてください。」

(4千円は多分高級品なんだろう)


「しっかりしてるねぇ。じゃあ、値段は全部決まってからにするか。手袋は木こり用のヤツでいいかい?」

店主が奥から持ってきた手袋はタケルのイメージしていたオープンフィンガーで手首のところを皮ひもで縛る作りだった。

大きさもタケルの手のひらにちょうど良かった。


「これで、いいです。それと手のひらぐらいの薄い皮の端布(はぎれ)はありますか?」

「薄い皮かい? 豚皮だったらあるけど、大きいのになるな。適当に切ったらどうだい?」

店主の持ってきた皮は薄くてイメージ通りだったので、それもいただくことにする。

ハサミで切れば問題ないだろう。


「皮を縫う糸とか、針とかはありますか?」

「なんだ、自分で加工したいのかい? 売り物じゃないけど、俺が使ってた古いやつなら安く譲ってやるよ。皮に穴を開けるキリもつけとくぜ。」


ダイスケ達が選んだ大きいリュックと小さめのショルダーバッグとあわせて、お勘定をお願いした。


店主の言い値は・・・

リュック     1個 小銅貨3枚(約3千円)×4 = 小銅貨12枚(約12千円)

ショルダーバッグ 1個 小銅貨1枚(約1千円)×4 = 小銅貨4枚(4千円)

森いのししの毛皮 1個 小銅貨4枚(約4千円)×4 = 小銅貨16枚(約16千円)

革手袋      1個 小銅貨1枚(約1千円)×1 = 小銅貨1枚(約1千円)

豚革       1枚 大鉄貨7枚(約700円)×1 = 大鉄貨7枚(約700円)

針・糸・キリ   1組 小銅貨1枚(約1千円)×1 = 小銅貨1枚(約1千円)


全部で小銅貨34枚、大鉄貨7枚(約34,700円)だった。


(半値ぐらいに出来るんじゃないかな・・・まあ、ほどほどで良いか)


「全部で大銅貨2枚(約2万円)にしてくれるなら買う。」

「イヤイヤ、それは全然ムリだよ。大銅貨3枚までなら勉強するよ。」

「じゃあ、大銅貨2枚と小銅貨3枚で手を打つよ。」・・・


最終的に大銅貨2枚と小銅貨5枚(約2万5千円)で豚革を2枚おまけしてもらってタケルは納得した。

なんと言っても、今日は4千万円ぐらい稼いだから。

店主は不満そうな顔を作っているが、また来てくれと言っているから絶対儲かってるはずだ。


「タケルって、あんな値切り交渉するんだ?」

「いや、この世界の値段って多分適当だと思うよ。値札無かったでしょ。」

「そういえば、・・・」

ナカジーは納得してくれた。


おそらく、値決めは適当で相手を見てその場で決めているはずだ。

間違っても言い値で買ってはいけない、相手もビックリするはずだ。


雑貨屋では、大小のなべと、小さめのフライパン、焼き網、それと野外で火になべをかける鉄くいと木の棒のセットを購入した。

全部で小銅貨7枚(約7千円)だったので、やっぱり革製品は、ぼったくられたような気がしてきた。


最後に肉屋に行った。

もちろん冷蔵庫はないので、ガラスケースなど無い。

店の中には、それなりに生々しいお肉様がつるされている。

ソーセージも確かにぶら下がっていた。


見た感じ50本ぐらい連なっているので、値段を聞くと1本小鉄貨3枚(30円)だった。

ほぼ、言い値どおりに払って全部買った。

小銀貨1枚鉄貨5枚(約1500円だった)


マリンダへのお土産も出来た、スタートスへ帰ろう。

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