第27話 ダンジョン挑戦 中編

■始まりの祠 入り口


街道を荷馬車で送ってもらい、洞窟の入り口までは1時間半で到着した。

ダイスケの時計だと7時30分になっている。


「じゃあ、進むけど覚悟はいいかな? 隊列はダイスケ、アキラさん、ナカジーで俺がしんがりね。」


「しばらくはダイスケの剣技に頼るので、ガンガン振り回して。」

「任して下さい!!」


(みんなには前回の10倍は出てくるはずと脅しておいたが、実際はどうか・・・)


洞窟に入ると外の明るさとのギャップで、真っ暗に感じる。

30メートルぐらい進んで、やっと目がなれた途端に、先頭のダイスケに蝙蝠の大群が襲い掛かった!


ダイスケは剣を振り回して叩き落しているが、飛んでいる相手に苦戦中だ。

アキラさんも短剣を振り回している。リーチが短く中々当たらない。

ナカジーは離れて様子を見ている。


タケルは最後尾から天井方向に向かって魔法をつかった。

「ウィンド!」


飛んでいたこうもりが、吹っ飛び壁と天井に叩きつけられた!


「落ちたやつを仕留めて!」


前に走ったタケルも地面に落ちたこうもりを、槍で立て続けに突く。

3人も剣と足を使って、刺しまくった。

全部で20匹以上をやっつけた。


「多いとは思ってましたけど、イキナリこれは勘弁ですよ。」

「ダイスケの剣は破壊力がある分、対空戦には向かないかもね。」


「それよりも、タケル! 今の何よ! また、コソ練したの?!」 

ナカジーがお怒りです。

「昨日、風の神様とバッタリお会いして、仲良くなった。蝙蝠関係は今のパターンで行こうか? 俺が風魔法で打ち落としてから、みんなで突きまくるって感じで。」


ナカジーはぶつぶつ言っているが、戦法に不満は無いようだ。


10メートルしか進まないうちに、スライムが二匹同時に天井から降ってきた。

1匹がタケルの肩に当たったがズシンと来た。この間のヤツよりかなりデカイ。

振り払って、槍で突き刺してから二つに切り裂いた。


「あ痛!!」 前方でダイスケの声がする。


下に落ちたスライムを右手の剣で刺しているが、左腕を振っている。


「どうしたの?」 ナカジーが近寄る。

「スライムが当たった場所が・・・」

「あらぁ、ちょっと皮膚が、ただれた感じね。」


腕まくりをしていた部分にスライムが当たり、やけどのようになっている。


「スライムもこの間とは違うから、肌は出さない方が良いね。ナカジー、本番ですよ。ヨロシクお願い。」


ナカジーは、目を閉じて両手をダイスケの腕にかざした。


「ウワッ! スゲー。 本当に治った!! ナカジーさん すごいっス。!!」

(ダイスケ、マリンダじゃなくてごめん)


「ナカジーは、この魔法のときに何も言わないの?」

「タケルは何か言うの?」


「タケル様命名『癒しの光!』です。 魔法覚えたら、好きな名前付けたほうがいいと思うよ。神様への願いがイメージしやすくなるから。」 

「なんか、癪(しゃく)に障るけど私も『癒しの光』で良いわよ。」

(何故、癪に障る?)


3人には天井も注意して、スライムを見つけたら炎魔法を使うように指示しておく。


「わかってると思うけど、まだまだ出てくると思うよ。」

そういって進み始めたが、100メートルぐらいは平和だった。


最初の分岐があったので、右に進む。

今日も全部右に行くようにダイスケに言ってある。


すぐに先頭のダイスケがスライムを見つけた。

3メートルぐらい先の天井に3匹並んでいる。


3人に下から炎魔法を使わせる。

「ファイア!!」


右手を天井に向け、落ちてくるまで炎を出す。

落ちてきたヤツを念のため、剣で二つに切る。


「これなら、無傷でいけるね。ダイスケ君 引き続き哨戒業務をヨロシク。」

(3人も魔法を実戦で使えばイメージつかめただろう)


その先も少し進むと、スライムと蝙蝠が何度も襲ってくる。

前回とは全く頻度が違うし、スライムはパワーアップしている。

1時間ほど歩いたが10回以上戦った。


少し疲れたようだったので、足を止めて休憩する。

水筒の水をカップ入れて、ナカジーに渡した。


「ありがとう。やさしいじゃない。」

「うん、俺ってそういう人だから。やっぱり魔法使うと結構疲れる?」

「うーん、多分そう。体がだるくなる感じかな。タケルは大丈夫なの?」

「俺は、魔法槍以外は大丈夫だった。100連発して試してみたから。」

「100・・・、やっぱり無茶苦茶ね。」


先のことを考えて、先頭としんがりを交代することにした。

ダイスケには、後ろにも注意するように頼んだ。

分岐になっているところは、進んだ後で必ず後ろを振り返るように念を押す。

またスライムが4匹いたので、タケルが順番に焼くことにする。


「ファイア」「ファイア」「ファイア」「ファイア」


それぞれ10秒ずつ燃えるイメージで炎を放った。

落ちてきたスライムを4人で突き刺す。


「ちょっと、連発ってどうやるのよ!」 ナカジーがお怒りです。

「連発って言うか、放った後に手を動かしても10秒ぐらいはその場所が燃え続けるようにグレン様にお願いしてる。」

「火がつくとすぐに手を動かして、次を放てるようになるって感じかな。だけど、連発すると疲れるかもしれないから注意してね。」

「あんたには言われたくないわ!!」 さらにお怒りです。


蝙蝠の大群は、引き付けてから天井に風魔法をぶつけてみた。

天井に当たった風が下向きに跳ね返って、蝙蝠が地面に叩きつけられる。

足と剣を使って、効率よくトドメを刺す。


同じパターンで5・6回やっつけて、タケルが先頭の方が効率がいいかなと思い始めたときに背後を突かれた。


「痛ッ!!」 

振り返るとダイスケの向こうにゴブリンの群れが見える。

石がダイスケに襲いかかり、足元には棒を持ったゴブリンが迫った。


ダイスケは左腕で顔をカバーして、右腕で剣を振り回しているが足元のゴブリンはすばやい。

アキラさんも参戦して、足元のゴブリンに蹴りを入れる。


「ナカジー、ふたりの後ろから 炎をぶつけて!」

そういいながら、タケルは前方に目を戻した。


案の定、前からもゴブリンの群れが現れた。

長引くと不利になると考えて大きい炎をイメージする。


「ファイア!!」

右手を大きく突き出して、叫ぶ。


横幅2メートルぐらいの炎が洞窟の幅いっぱいになってゴブリンの群れを襲う。


「ブギャー!!」


そのまま炎を燃やし続けると、前の方にいるゴブリンは後ろに戻れずに焼かれた。

後方のやつ等は石を放り投げて、通路の奥へ引き返した。


ダイスケ達を振り返るとまだ格闘中だが、だいぶ数が減っている。


ダイスケは両手で剣を払うように振り回している。

アキラさんは、ダイスケの剣にあたったゴブリンにトドメを刺している。

ナカジーは後方のゴブリンに炎を放つが、すぐに消えるので追い払う程度だ。


タケルも魔法で加勢する。


「ファイア」「ファイア」「ファイア」

小さめの炎を連発して、後ろから石を投げるやつらを狙う。


「ギィー!!」 


炎がついて、何匹も悲鳴をあげる。

後方のやつらが逃げると、ダイスケの周りのゴブリンも一斉に逃げ出した。


振り返って進行方向も確認したが、戻ってきていない。

ゴブリンの群れをやっつけた。


ダイスケとアキラさんは結構痛んでいた。

投石と足元への棍棒攻撃で打撲箇所がたくさんある。

ナカジーと手分けして、治療魔法を行う。


「すいません、タケルさん。俺が後ろの方に気がつくのが遅れたから。」

「そんなことは無いんじゃない?お互い後ろに目はついてないからね。それよりもその剣だと、ゴブリン相手は取り回しが良くないかも。」


「俺もそう思ってました、この剣ダメですかね?」

「いや、洞窟には向かないだけじゃないかな。それと、もっと大きいヤツ相手なら絶対役立つと思うよ。」


「アキラさんはその武器どうです?」

「蹴りの練習が必要。」


短い返事だが言いたいことは良く解った。是非練習してもらおう。


ダイスケの時計だと10時過ぎになっている。

入り口から2時間30分経過だ。ナカジーが帰る16時までに町まで戻るつもりにしているので、進んでもあと30分ぐらいにしよう。


先頭としんがりを代わって、10分ぐらい進むとと前方のダイスケが止まった。


「タケルさん。すぐ来てください。」


低い声でささやくように呼ぶ。

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