第28話 激闘、魔法少女

「貴様らはバカか? そもそも吾輩は、正義感エネルギーを集めていると言っただろう。それを、こんなに放出してくれるとはありがたいことだな。はっはっはっ」


 魔法少女たちの四人揃っての必殺技をもろに浴びたレクターは、逆にその正義感エネルギーを体内に取り込んだってことか……。

 きっと折れた腕が治ったのも、視界をあっさり取り戻したのもそれが理由だろう。

 戦い始める前よりも元気になったように見えるレクターとは対照的に、全力の攻撃を否定された魔法少女たちの方は動揺が隠せない。


「そんな……あたしたちのあの精一杯の攻撃が、手助けになっちゃったなんて……」

「あんまりだよ、こんなのって……」

「わたくしたちは、余計なことをしてしまったのでしょうか……」

「悔しい……」


 正義感エネルギーを出し切って、肉体的に疲れた果てた魔法少女たち。しかもその攻撃が完全に裏目だったと聞かされたら、精神的ダメージも大きいはず。

 魔法少女たちの憔悴ぶりは、アイマスクを着けていても隠しきれない。

 へたり込む彼女たちの戦意は今、完全に消失した……。



「気は済んだか? ならば後は、おとなしくそこで見ているがいい」


 地下室中央での戦闘を終えたレクターは、力尽きた魔法少女たちにそう言い捨てると、彼女たちに背を向けて俺の方へと振り返る。

 一歩、また一歩と俺に歩み寄る度に、レクターは口角をニヤリと吊り上げていく。

 そして、壁際の分娩……リクライニングチェアに括りつけられている俺をひと睨みすると、すぐ脇にある操作卓にレクターはその手を伸ばした。


「さて、お遊びもここまでだ。今度こそお前に蓄えてある、正義感エネルギーの回収に移るとしようか」

「俺に高圧電流を流すのか……」

「心配するな。ピリッとしたと思ったら、次の瞬間には絶命しているから大丈夫だ」


 全然大丈夫じゃない。

 だけどこうして拘束されたままじゃ、どうすることもできやしない。そんな無力な俺は、レクターに向かって情けない叫び声をあげることしかできなかった。


「助けてくれよ、死にたくない、死にたくないよ。童貞のまんまで生涯を終えるなんて、俺絶対やだよ!」


 いくら俺が泣き喚こうが、レクターの気が変わるはずがない。俺の声なんて軽々と無視して、レクターは大きくなったその身体で操作卓に向かって作業を始めた。

 鼻歌でも聞こえてきそうなほどに軽やかに、レクターは鋭い爪で器用にキーボードを叩く。俺の運命もここまでか……。


「さっきは中断させられたが、あと十分もすればお前は楽になる。正義感エネルギーを全て放出してな。がっはっは」


 あれ? 十分? さっきは五分って言ってた気がするけど……。

 でも、たった五分間寿命が延びたところで誤差でしかない。俺は迫る決別の時を嘆きながら、魔法少女たちの姿を一人ずつこの目に焼き付けていく。


 ――みーたんは目を大きく見開いたまま、噛み切りそうなほど唇をきつく噛み締めて、溢れ出しそうな涙を必死にこらえている。

 俺の初めての対戦相手、そしてファーストキスの相手。あの、初めて触れたおっぱいの感触は死んでも忘れないよ。

 他人の不正を正そうとする君の行動は絶対に間違ってない。たとえ他人に疎まれたとしても、自分を信じてこれからも生きてくれ。ただ、君が今履いてるスケスケパンティを、じっくりと拝めなかったことだけが俺の心残りだ……。


 ――リーンはうつむいて床をじっと見つめながら、ポタポタと滴り続ける涙で水たまりを作り出している。

 初対決からひどい目に遭わされ続けたけど、良い思い出もたくさんありがとう。密室の観覧車は本当にドキドキした。あの時俺に勇気があれば、大人の階段を上れてたのかもしれないな……。

 小学生の時、いじめられた俺に差し出してくれたハンカチにも感謝しかない。そのまま黙って立ち去ることだってできたはずだから。だからこれからも、いじめられてる俺を思い出して、好きなだけオカズにしてくれ……。


 ――カリンはギュッと膝を抱えて小さく丸まり、肩を大きく震わせながらシャックリ混じりの嗚咽を漏らしている。

 君にはたぶん一番世話になったよ、ごちそうさま。

 これからはもう屋上に連れて行ってあげられないけど、失敗を恐れなくなった今の君には必要ない場所だよな。

 そうそう、君は無防備すぎるから気を付けるんだぞ。今だって、体育座りでシルクのパンティが丸見えだからな。重ね重ね、ごちそうさまでした……。


 ――ナイツはふてくされたような表情で視線を泳がせている。表情からは読み取りにくいけど、きっと悔しくてたまらないに違いない……よね?

 ナイツ、君は宿題をちゃんとやれよ?


 俺が心の中でみんなに別れを告げる中、レクターはニヤニヤしながら嬉しそうに作業を続ける。あれから何分経っただろう。俺に残された時間はあとどれぐらい?

 俺は再びみーたんを見つめる。みーたんはどうやら俺のことを見ていたらしくて、そのまま二人の視線が絡み合った。

 すると、みーたんは表情を大きく崩して涙を溢れさせ、くしゃくしゃの情けない顔になる。そしてそのまま立ち上がると、泣き喚きながらレクターの背中に向かって駆け出した。


「いやぁ、止めて、お願いだから止めて。泰歳くんだけでもいいから助けて」

「え、みーたん、お前……今」


 由美子……いや、みーたんは魔法少女の姿のまま俺の名前を叫んだ。

 そっか、やっぱりバレてたんだな……。

 みーたんがいくら懇願したって、レクターが作業を止めるはずがない。レクターはみーたんの声を無視して作業を続ける。

 そんなレクターに向かって、みーたんは叫びながら殴りかかる。けれど、すでに力を使い果たしているみーたんのパンチは、あまりにも非力だ。


「本当は、泰歳くんが大変だって聞いたから助けに来たの! お願いだから、泰歳くんだけでも放して。あたしが身代わりになってもいいから!」

「痛っ、こら、やめんか!」

「きゃっ」


 再度背中を殴りつけたみーたんを、レクターは煩わしそうに鋭い爪の光る前足で振り払う。

 胸元に強烈な爪痕を刻み付けられて、みーたんは横っ飛びで床に転がった。

 そんなみーたんを見て、俺は血の気が引く。でも大丈夫、身体に傷はついてない。きっと魔法少女に変身してるから、その肉体は守られているんだろう。

 刻まれたのはブラウスだけ。その胸元が切り取られたように、パンティとお揃いの透けた水色のブラジャーが露わになる。


「でかした!」


 俺はレクターを称賛したわけじゃない。称賛の相手はみーたんだ。

 そして何を称賛したかといえば、勇気を振り絞ってレクターに殴り掛かってくれたこと。そのおかげで、最悪の結末はまだ書き換えられるかもしれないと、俺に気付かせてくれたからだ。

 心が折れてしまったのか、仰向けのまま起き上がれずにいるみーたんに、俺はたった今目撃した事実を伝える。


「そっちからは見えなかったかもしれないけど、レクターは痛みで顔を歪めてたぞ。今のパンチはきっと効いてた、だからまだ諦めないでくれ」

「貴様はもう少しの辛抱だから黙っていろ。すぐに高圧電流を流して楽にしてやる」


 レクターは俺を黙らせるために恫喝する。でもそれは、俺の言葉が正しい証拠とも受け取れた。

 確証はない。だけどこの望みは捨てちゃいけない。

 俺は今度は魔法少女のみんなに向かって、鼓舞するように大声で呼びかける。


「理由はわからないけど、今のみーたんの攻撃は確かに効いてたんだ! だからまだ諦めるな。頼む、レクターをやっつけてくれ! 魔法少女のみんな!」


 そんな俺の必死な声に反応したのは、意外にも魔法少女カリンだった。彼女は涙を拭って立ち上がる。

 そしてカリンは勇猛に、作業を再開したレクターに背後から挑みかかった。


「泰歳さんは失敗ばっかりのわたくしを、そのたびに励ましてくださいました。今度はわたくしがご恩を返す番。泰歳さん、お慕いしております!」


 俺本人に向けたカリンからの告白。こんな状況だっていうのに、俺は思わずニンマリと顔が緩む。だけどカリンが叫んだのと同時に、彼女の身体が薄っすらと輝きだしたのも見逃さなかった。

 そんなカリンは、レクターの背後に駆け寄って素早くしゃがみ込む。そしてそのまま、レクターの後ろ足のふくらはぎの辺りに噛みついた。


「ぎゃおぉぉ……」


 レクターは絶叫して、その場にひざまずく。そしてうずくまって、噛みつかれた部分を繰り返し前足でさすっている。よっぽど痛かったらしい。

 するとカリンは何を思ったのか、背中に手を回して蝶々結びの帯をスルリと引き解いた。当然はだける浴衣の衣装。シルクの上下の下着を露わにしたまま、手にした帯を前屈みになっているレクターの首に巻き付けた。

 そのままカリンはレクターの背後に回り込んで、力任せに首を締め上げる。


「ぐ、ぐふぅ……」


 だけど残念なことに、カリンの力じゃレクターを落とすことはできなかった。

 レクターは首もまた、頑丈な筋肉で覆われている。いくら魔法少女に変身しているといっても、カリンの腕力じゃやっぱり力不足だ。

 それでもカリンは手放すことがないように、帯の両端を自分の手首に何重にもきつく巻きつけて、しぶとくレクターの首を絞め続ける。


「ええい、またお前か。しつこいやつめ」


 レクターが立ち上がると、カリンの身体も宙に浮く。

 帯を手首に巻き付けてるせいで、逆にカリンが吊り下げられた形だ。みるみる鬱血して、カリンの両手が赤黒く変色していく。それでもカリンは、決して手を緩めようとはしない。


「絶対にこの手は放しません」

「いい加減にしろ。こうなったら、力尽くで振り落としてやる」


 レクターが身体を左右に揺さぶると、振り子のようにカリンが大きく揺れる。

 さらにレクターの動きが大きくなると、はだけた浴衣の中でカリンの豊満な胸もより一層、上下左右に激しく揺さぶられる。

 そんなカリンの暴れ胸が、普通のブラジャーで抑えきれるわけがない。

 揺れるたびに広がっていく胸の谷間。左右のカップは外側へ、外側へと追いやられていく。少しずつ顔を出していく、肌色の濃くなった部分。その頂点の、さらに色濃くなっている突起物をさらけ出すのに、そう時間はかからなかった。

 両手は帯を握り締めてるから隠すこともできない。でも今のカリンは、きっと両手が自由だったとしてもレクターへの攻撃を優先するに違いない。


「ちょっと、抜け駆けしないでよ。あ、あたしだって、泰歳くんのことが好き。泰歳くんは、あたしが助けて連れて帰るんだから!」


 そんな恥ずかしい言葉を叫びながら攻撃に加わったのは魔法少女みーたん。まるで俺を取り合ってるみたいなその言葉は、もちろん嬉しい……けど恥ずかしい。

 カリンの頑張りに触発されたのか、それとも先を越された対抗心なのか……。

 みーたんの勇ましい今の姿は、ついさっきまで力尽きてたのが嘘みたいだ。

 復活したみーたんに対してレクターは、首からカリンを背中にぶら下げたまま、身体を反転させて対峙する。


「あのまま寝ておればいいものを……」

「そうはいかないわよ。彼女にだけ恰好……頑張らせるわけにいかないもの」


 みーたんは、カリンのせいで集中力を欠いてるレクターに、まずはローキックをお見舞いした。足元にレクターの注意を向けたところで、今度は飛び上がりながらのハイキック。みーたんの足の甲が、見事にレクターの顔面を捉える。

 そして着地するなり、今度は脇腹へと回し蹴り。そんなみーたんの身体もまた、光に包まれているように見える。


「くそっ、貴様ら……調子付きおって……」


 レクターへの攻撃は間違いなく効いてる。それを実感したのか、みーたんの表情にも明るさが戻ってきた。

 俺の動体視力じゃ追いきれない高速の蹴りが、面白いようにレクターに決まる。気を良くしたのか、みーたんの攻撃はさらに大きくて威力のあるものになっていく。

 ボクシングのガードみたいに、顔の両側を前足で覆うように猫背で小さく丸まるレクター。ライオンはネコ科だっけか。

 防御一辺倒のその姿は、虎視眈々と何かを狙っているようにも見えた。


「みーたん、気を付けろ! 大振りになりすぎてる……あっ!」


 俺のアドバイスは遅すぎた。

 みーたんが放った最上段への大振りのハイキックは、レクターの右の前足によって受け止められてしまった。

 さらにレクターは切り返して、そのままみーたんの左足を脇の下に挟み込む。

 あいつはこれを狙ってたのか……。


「こら、放せ! その手を放しなさい! くっ、この……」


 レクターはその腕力で、がっしりとみーたんの踵を極めにかかる。

 足を高く上げたままの開脚姿勢で、みーたんは身動きが取れなくなってしまった。

 俺の目は当然、大事な一点に注がれる。


(あれは……一体どうなってんだ? あの部分がこうなってて……って、あっ!)


 ビシッと少し低い音を立てて、リーンのムチがレクターの顔面で弾けた。

 たまらずレクターがみーたんの足を解放してしまったせいで、水色のスケスケパンティが一瞬にして姿を隠す。あっさり終わってしまった俺のフィーバータイム。この根性無しめ……。

 そして、みーたんの危機を救ったリーンも何を思ったのか、告白とも受け取れる言葉を叫ぶ。


「私だって……。泰歳を返して! 泰歳をいじめていいのは私だけなんだから!」


 いや、俺は許可した覚えないぞ。

 理不尽な宣言と共に幕を開ける、リーンの猛獣使いショー。予測不可能なムチの雨あられを、容赦なくレクターに浴びせ掛けた。

 レクターも引っ掻くような動作で反撃をみせる。けれど首にぶら下がるカリンや、みーたんの蹴りも影響してレクターは防戦一方だ。

 その鋭い爪がリーンに届いたのは、左の肩紐を捉えた一回だけ。そして当の本人は振り回すムチの快感に酔いしれてるせいか、そんなことは気にも留めてない。


「泰歳、泰歳、泰歳を返せ! 私はずっと泰歳を見ながら育ってきたの。私が誰よりもいっぱい、泰歳と一緒の時間を過ごしてきたんだから!」


 伸ばした膝小僧みたいになだらかな胸。その中心には、爪で痕を付けたようなマイナス型の窪みがこんにちは。

 リーンは、ムチを振るう度にその感情を昂らせていく。それに伴って身体も強く輝き、ムチの唸りも力強くなっていく。

 それはみーたんも同じ。輝きを増した彼女の蹴りは鋭さに磨きがかかっている。

 この魔法少女たちの光の正体はなんなんだ……?

 相変わらずレクターにぶら下がったまんまのカリンだってそうだ。レクターに巻き付けられた帯は、さっきよりも力強くその首を細めている。

 苦悶の表情を見せ始めたレクター。さすがに無視できなくなったのか、輝きを増したカリンに向けて、鋭い爪を光らせながら右の前足を振り上げた。


「ぐぅ……こいつ……。いい加減に離れろ!」

「そこよ!」


 それを見逃さなかったリーンは、その前足にムチを打ち付けて巻き取る。そしてそのまま、力任せに引き寄せた。今のリーンは、レクターの腕力とも渡り合っている。

 動きが止まるレクターの右前足。レクターが、封じられた右の代わりに左の前足を振り上げると、今度はナイツがそこに飛びついた。


「こんなやつでも居なくなったら先輩が悲しむ。だから私が取り戻す」


 こんなやつで悪かったな。

 みるみるうちに輝き始めるナイツの身体。そのままナイツは、しがみついた左前足を強く抱きかかえると、一気にそれをへし折った。


「ぐわおぅっ!」


 レクターの左前足が、だらりと垂れ下がる。

 右の前足はリーンのムチで捉えられたまま。

 レクターは今、完全に無防備となった。

 レクターを倒すなら今しかない。だけど対する魔法少女たちだって、体力の限界をとっくに超えてるはず。あとは気力の勝負だ。


「泰歳くんを返しなさい。あたしは泰歳くんに、もっともっと辱められたいのよ!」

「私だって、もっと泰歳をいじめてあげるの! だから絶対、泰歳を取り戻す!」

「わたくしだって、泰歳さんの支えがなくなってしまったら生きていけません。ですからわたくしは、あなたを打ち倒させていただきます」

「私は先輩と共に。先輩の幸せに必要なら、私はなんだってする」


 今日の俺はいったい何者なんだよ……。突然のハーレムっぷりに俺は困惑する。

 きっと魔法少女たちは戦闘で脳内麻薬が出まくってるのと、女同士の謎の対抗意識のせいで妙なテンションになってるんだ。なんなら吊り橋効果もつけよう。

 だけど、そんな怪しげな感情が魔法少女たちの力の源になってるのは確実。俺は彼女たちの背中を押すために、目一杯の声を張り上げて声援を送る。


「頼む、レクターを倒して、俺を助けてくれ! 倒せるのは君たちしかいない!!」


 俺の声が届いたのか、四人の魔法少女たちはそれぞれに拳を固く握りしめる。するとその手が強く輝きだした。

 その光に、アリオメーヤ星人の声が重なる。


「それだ! レクターを倒せるのは、キミたちのその愛情エネルギーしかない!」

「なに……? あ、愛情エネルギーだとっ!? よ、よせ、貴様ら。それを吾輩に使うなぁぁ!」


 レクターの困惑の声はそのまま焦りに。その必死な制止の声は、その攻撃がレクターにとって都合が悪い証拠だ。

 もちろん魔法少女たちの手は止まらない。

 握った拳を最高点にまで振り上げた彼女たちは、腹の底から声を絞り出す。


「泰歳くんを!」

「泰歳を!」

「泰歳さんを!」

「そいつを!」


 振り上げられた拳がさらにまぶしく輝きだす。

 さらに光量を増して、さらに増して、目がくらむほどに……。

 そして四人一斉にその拳を振り下ろす、同じ言葉を大声で叫びながら――。


「返せー!!」


 突然、視界が白一色に覆われる。

 レクターの声は聞こえなかった。ただ一瞬、言葉を詰まらせたような「くっ」という短い音が耳に届いただけだった。


「こ、これが、愛情エネルギー。素晴らしい、なんて神々しい輝きなんだ!」


 真っ白い世界の中で、アリオメーヤ星人の一匹が叫び声をあげる。

 だけど俺は痛みさえ感じるほどのまぶしさに耐えきれず、本能のままに目を瞑る。その闇の中で、ズズズンという地鳴りのような音が部屋に轟き渡った……。


「終わった……のか?」


 しばらくして俺が目を開けると、光はもう収まっていた。でも眩んだ目が視界を取り戻すにはしばらく時間がかかる。

 やがて少しずつ目が慣れてくると、ぼんやりと部屋の様子が見えてくる。

 そこには真っ白なライオンのようなレクターが、力尽きて横たわっていた……。

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