閑話 賑やかな時間 -後編-
「今日も混んでるわねぇ」
「予想はしてたけどさぁ……。土筆ってそんなに人気なの?」
海亀亭の列に負けずとも劣らない長蛇の列は、見ただけで疲れて、思わずため息が出てくるほどだ。これでは、いくら夕飯時で回転率が良かったとしても、数時間は外で待たされるだろう。
「あ、あの子。お店の前で客引きしてるの、モミジよね?」
「こんなに行列できてるのに、まだ人を呼ぶか、あの人は!」
「あの人、変な踊りしてるね。何だか楽しそう!私も混ぜてくれるかな?」
「疲れた体をほぐすついでに、外の空気でも吸いに出てきたんでしょ。遊んでるわけじゃないわ。……たぶん」
「中がまた、大騒ぎになってそうだね……」
ただでさえ、人気に対して人手が足りていない土筆だ。いくら不思議ちゃんな彼女とはいえ、一人でも欠ければお店が回らなくなる。
……懲りないなぁ、あの人は。
能天気と言うべきか、自由気ままと言うべきか。いや、彼女を一言で表すなら、やはり不思議が一番しっくりとくる。
ともかく、今頃中で慌ただしく働いているだろう従業員たちは、てんやわんやなことだろう。一度は共に働いた仲だ。密かにここからエールを送ることにした。
そんな気持ちとは逆に、神様の方は、あわよくばとよからぬことを期待している。
「モミジに頼めば、お店に入れてくれたりして。……ねぇ、アキラ、試しに声かけてきなさいよ」
「そう言うことなら、場所取りは私に任せて!」
「いや、二人とも無茶言わないでよ!お店の人にも、並んでるお客さんにも迷惑でしょうが!」
「……何よ、ちょっと言ってみただけじゃない」
「ちぇ〜。ダメかぁ〜」
「あのねぇ…………」
二人は残念そうに言うけれど、流石に無理を言っている自覚はあるのだろう。文句を口にしながらも、大人しく並ぶことにしてくれたようだ。
しかしながら、彼女の性格からして、自分たちを見つけたら黙ってはいないような気もする。
だから、なるべく大人しくしていよう。
そう決めて、列の中で息を潜めようとしていた時だった。
「…………あ」
「あっ!!」
柔軟のためか、腰に手をやり、大きく背中を後ろに逸らした彼女と、不意に視線が合ってしまう。
気付かないでと願う自分の気持ちとは裏腹に、彼女は満面の笑みでこちらへと近づいてくる。
そして、ガシッと。おもむろに自分の手首を掴んできた。
「……ぁ、あの〜、モミジさん?」
営業スマイルが顔に張り付いた彼女に、自分は恐る恐る声をかける。
しかし、彼女の表情は変わる気配がない。
「えへへ」
「あはは?」
……笑顔が不気味過ぎる。
もしかすると、知った顔を見つけて、ただ挨拶に来ただけかもしれない。
そんな期待は、もちろん彼女に裏切られる。
彼女は自分の腕を握ったまま、お店の方へと歩き出した。
「ちょっと、え?どこへ連れて行くつもりですか!?」
そんな自分の質問には一切答えてくれない割に、彼女は、列に並ぶお客さんには笑顔を振り撒きながら、世間話すらこなして見せる。もしかすると、自分はとんでもないものに捕まってしまったのかもしれない。
「ねぇ、ライラはこうなるってわかってたの?」
いきなり彼女に連れ去られた自分を追って、シャルが駆け寄って来てくれる。しかし、その声に緊張感はなく、心配してくれている様子はなかった。
「そんなことより、今は助けて欲しいんだけど!」
「え〜、なんで?とっても楽しそうだよ?」
「おい、この星には変人しかいないのか!?」
「大丈夫。心配しなくても、あんたもその内の一人だから」
「魔者怖い……」
そうこうしているうちに、気付けば、自分たちは店内へと連れてこられていた。
「どうぞ!」
「……いや、本当に入れちゃったよ。」
「ラッキー!」
「わ〜い、久しぶりの串カツだぁ!」
お店の奥に設けられた座敷に案内された自分たちは、一先ず腰掛けることにする。
「もう、何が何だか……」
「こうしてお店に入れたんだから、細かいことはいいじゃない」
神様はそう言うけれど、自分はもうわけがわからず、先程からずっと空いた口が塞がらない。
何やり不思議なのは、自分たちの明らかなマナー違反を誰も咎めないことだ。店員は愚か、お客さんさえ一人として嫌な顔をしない。
ふと、外での出来事を思い出した。
「……もしかして、モミジさんって、このお店の看板娘だったり?」
「あんな人が看板娘だなんて、冗談でもやめて下さい」
そう言って襖を開けて入って来たのは、しっかり者のヒナタさんだ。
「アキラさん、お久しぶりです。また迷惑をかけてしまったようで、本当に申し訳ありません」
「いえ、こちらこそ!……ヒナタさんも大変ですね」
「全くです」
「いつもこうなんですか?」
「はい。先輩なのに私より仕事ができないんですよ?もう少ししっかりして欲しいです」
後輩にここまで言われるとは、先輩として恥ずかしくはないのだろうか。いや、そもそも恥を恥と理解していないからこその行動なのかもしれない。
「お先に飲み物のご注文があれば承りますよ。どうしますか?」
ヒナタさんは自分たちの前にメニューを開きながら尋ねてくる。それに、嬉々としてシャルが飲み物選びを始めた。
とは言え、どうやらシャルは、初めから飲みたいものは決まっていたようだ。
「私はメロンソーダ!色が綺麗で好きなんだ!」
「はい、メロンソーダがおひとつですね。アキラさんはどうしますか?お車でなければ、お酒もいくつか置いてありますよ」
そう言ってヒナタさんはお酒の欄も見せてくれたけれど、自分はそこまでお酒は得意ではない。
「……あ、それじゃあ、これでお願いします」
メニューに懐かしい名前を見つけて、自分はそっと指を差す。
しかし、何故だかそれが、シャルとヒナタさんの
「……
「え〜。ライラ、あれ好きなの?」
「ダメだった?」
「そうじゃないよ。ただ、それじゃあ私は飲めないなぁって」
「他人の飲む気だったの?!」
「うん。家族とはよくしてるんだ」
確かに、身内で交換すれば、色々な飲み物を少しずつ飲むことができるだろう。
だが、シャルは、自分が赤の他人であることを理解しているのだろうか。普通は、初対面の相手と、しかも異性との間接キスなど、考えるだけでも気持ち悪いはずだ。
「……汚らわしい」
だから、今のヒナタさんのような視線は、むしろ当然の反応だった。
「修羅場ね」
「……ソラ、お願いだから今は黙ってて」
「はいはい」
しかし、いちいち指摘していては、こちらの体力が足りないというものだ。だから、シャルへの説得は諦めて、代わりに飲み物に口をつけないことで対応することにする。
……いや、嫌いな飲み物を選べば平気なのか?
そんなことを一人考えていると、また訝しげな視線をヒナタさんから向けられていることに気がついた。
「……今の、あだ名ですか?」
「アの発音が難しいそうで」
「……それなら良かったです。小さな女の子相手に偽名を使っているのかと思って、少し警戒してしまいました」
「自分を何だと思ってるんですか!?……もう、間違ってもそんなことしませんよ」
「いえ、信じてましたよ?」
「……せめて、利き手に握り込んだボールペンを隠してから言って欲しかったです」
「……気のせいです」
いざという時には刺す気満々だった右手の中の凶器が、即座に注文を記すための筆記具に戻る。
けれど、一度は恐怖を抱いた道具だ。そう簡単に文房具だと割り切ることはできず、身の危険を感じて、少しだけヒナタさんと距離を置いた。
「では、すぐにお持ちいたしますので」
二人分の注文を取ったヒナタさんは、一先ず厨房へと戻ろうとする。
「あ、待って!」
「はい、何ですか?」
ヒナタさんは首を傾げて、まだ何かあるのかと不思議そうにしていた。
けれど、次にシャルが話しかけたのは、彼女ではなかった。
「ソラは何飲みたい?炭酸?お酒?」
「わ、私?」
「うん、何でも言ってね!私が代わりに店員さんに頼むよ!」
今のシャルは、側から見れば、何もない空間に話しかける危ない人だ。ヒナタさんには神様が見えないのは、以前の時に把握済みだ。だから、今目の前で繰り広げられる光景は、ヒナタさんの瞳にはさぞ奇怪に映ることだろう。
「じ、じゃあ、コレ」
「オッケー!任せて!」
他人と話すことに慣れていない神様は、若干挙動不審になりながらも、なんとか飲み物を選んだ。
それを、宣言通りシャルが代わりに注文する。
「店員さん!ジンジャエールもお願い!」
「えっと、全部で三個ですよ?」
「うん、ソラの分だよ!」
「……アキラさん、後からお連れ様が?」
「ま、まぁ、そんなところです」
「わかりました」
一悶着も二悶着もありながら、ようやく自分たちは飲み物の注文を終えた。
……この調子で行くと、串カツの注文の時も大変そうだ。
しかし、不思議とそうはならなかった。
「私、この盛り合わせってやつがいいな。ライラはどう?」
シャルは、予め調べてきたかのように、またもや迷うことなく商品を選んだ。
「自分はそれでもいいけど。ソラは?」
「私は、串カツが食べれれば何でもいいわ」
「だって」
「じゃあ、決まりだ!」
タイミングよく飲み物を運んできてくれた定員さんに、シャルが食い気味に料理を注文する。そんな彼女を、自分と神様は微笑ましい気持ちで見守っていた。
「これ、ずっと食べたかったんだ!夢みたいだよ!」
「もしかして、家近所じゃないの?」
「ううん。実家は別の星だけど、今はこの街で一人暮らしだよ。でも、学校に行くためにお金も貯めなきゃいけないから、あんまり無駄遣いできないんだ」
「へ〜。意外としっかり者なのね」
「え、そう?そう言ってもらえると嬉しいな」
神様の言葉に、嬉しそうに笑うシャルだったけれど、自分はそんな彼女が心配になる。
今後通う予定の学校に行くのに必要な学費を、単身街へ出てきてアルバイトで稼ぐ。それも、話を聞く限り、いまから数年がかりで用意するというのだから、途方もない話だ。とてもではないが、自分だったらすぐに挫折してしまうだろう。こちらの事情もさることながら、向こうも向こうでそれなりに大変なようだった。
「それに、ほら。このメニューね、二人以上いないと頼めないんだよ。だから、ずっとこういう機会を待ってたんだ」
「友達を誘って来たりはしなかったの?」
「あ〜。私ね、友達作るの下手なんだ。それで、誘う相手もいなくって」
そんな悲しいことを口にするシャルは、しかし、また底無しに明るい表情で言うのだ。
「だから、今日はライラに会えて良かった」
「……何度も言うけど、そう言うのは目的を達成してから言うものだよ」
「そう?じゃあ、後でまた言うね」
「いや、別に気にしなくても……」
「なんで?ライラは、困ってた私を助けてくれて、こうして夢まで叶えてくれたんだよ?ちゃんとお礼しないと」
適当に誤魔化すつもりでいた自分に、突然シャルは、ぐうの音も出ない正論で攻めてくる。
……大袈裟だ。
彼女の真っ直ぐな感情を受け止めきれず、またいなすことも叶わなかった自分は、飲み物へと手を伸ばして気を紛らわす。
「アキラって、こういうタイプには弱いのね」
「……うあはい」
「あ〜、ライラ汚い!ストローに口付けたまま喋っちゃダメだよ」
子供っぽいシャルに指摘され、一瞬意固地になりかける。
でも、その方がよっぽど格好悪いと気が付いて、大人しく謝ることにした。
「それにしても、何でシャルはソラのことが見えるんだろうね」
何の脈絡もなく、けれど、どうしても気になって尋ねると、シャルには心当たりがあるのか、メロンソーダを飲んで一息ついた後、その理由を説明してくれた。
「私の魔法属性は風なんだ。で、契約してる精霊は水。だからかな、気とか、そう言う曖昧な存在も少しだけど感じられるみたい」
「そう言えば、そんなのもあったなぁ……」
この世界に生まれくる魔者ならば、誰しも魔法が使える。
けれど、自由に使えるわけではない。
火、水、土、風、光。この五種類の中から、自分の意思とは関係なく、先天的に一つだけ使えるのだ。シャルの場合、それが風属性である。
しかし、たった一種類ではできることも限られる。
だから、魔者の中では、”精霊契約”をするのが通例だった。
「便利だよね。手順を踏めば、ノーリスクで使える魔法が増えるなんて。それでも二つまでらしいけど、何だか羨ましいな」
「……そんなことないよ」
一瞬俯いたシャルだったが、すぐに顔を上げたあたり、特に気にすることもあるまい。
「ライラは、契約まだなんだ。なら、六種類の中だったら、どの精霊と契約するの?」
「精霊かぁ〜。……ん、今六種類って言った?」
「うん。火に、私の水でしょ?土と風が無くて、代わりに空と闇、あと光だよ。……あれ?もう一つは何だっけ?」
「いや、こっちが聞いてるんだけど」
「じゃあ、五種類ってことでいいや!」
「……い、いい加減だ」
しかし、こちらから尋ねておいてなんだが、考えたところで、人間の自分には関係のない話だ。
人間は、精霊と契約はできても、体が魔法を使えるようにできていない。下手をしたら、体を壊して命を落とすかもしれないのだ。興味がないわけではないのだが、リスクを背負ってまで挑戦する気には到底なれない。
不毛な話題をどうそらそうかと思案していると、その間にシャルの方が自分への興味を失ったようだった。
「ソラって、なんか存在感薄いよね。あんまり力が強く無いの?」
今度は、神様がシャルの相手をする番になった。
確かに、シャルの言わんとしたいことはわかる。けれど、常に神様と一緒の自分からすれば、共感し難い感想だった。
神様は普段、自分と二人きりの時以外は、気を利かせて静かにしていてくれる。その癖が抜けず、今もこうして大人しくしているのが、シャルに存在感が薄いと思われてしまった原因だろう。
だが、どうやらそう言う話ではなかったらしい。
それに、何故だか話の雲行きが怪しくなってくる。
「こいつが魔力をくれないから、本領発揮できてないだけ。本気出したら、私すごいんだから」
「え〜、そうなの!?私、ソラの本気見てみたいな!」
「だそうよ、ご主人様?」
「ソラの本気は高くつきそうだなぁ。ちなみに聞くけど、どれくらい持っていかれるの?」
そんな自分の問いに、神様は顎に手をやって悩んだかと思うと、今度は指を立てた手をこちらへと向けてきた。
そう、まるで物を指すように、人差し指を自分に向けてくる。
「……いち?」
いや、単位は何だよ。
ともかく、使用する魔力量が現実的な値だったとしても、実際に神様に魔力を渡すかと言えば、そんなつもりもない。
それに、人間の自分の場合には、エーテルの代わりに感情や記憶を神様側で魔力に変換する必要がある。神様やシャルの要望を叶えるために、安易に、「はいそうですか、遠慮なくどうぞ」などと渡せるような代物ではなかった。
「もしかして、アキラは魔力欠乏症なの?」
その問いの答えに悩んでいると、代わりに神様が答えてくれる。
「まぁ、似たようなものね。おかげさまで、随分と長い間魔法は使ってないわ」
「それは、ソラがお洒落だ〜とか言って、見た目変えるのに魔力を無駄遣いするからでしょうが」
「あはは、なんかソラっぽい」
「ちょっと、二人ともひどくない?」
納得のいかない評価を抗議する神様ではあるが、お洒落に興味のない自分や、同族の気配のするシャルの前だ。何を言っても無駄だと察したのか、神様は膨れてそっぽを向いてしまった。
「私も昔、魔力を使い過ぎてなったことあるんだ。回復までに時間がかかるよね」
シャルの言葉にどう返すのが正解なのか、実際に症状を経験したわけではない自分にはわからない。ただ、無闇に共感したり、へっちゃらだったと強がるのが良くないのは確かだ。
「でも、魔法って楽しいよね!折角”魔力炉”のお陰で魔法を自由に使えるようになったんだ。ライラも早く治るといいね!」
「……うん、ありがとう」
シャルの気持ちに感謝しながらも、自分は別のことを考えていた。
……シャルは知らないのか。
魔法を使うのに必要な魔力は、多かれ少なかれ生命力を削ることで得られる、摩訶不思議なエネルギーだ。それは、魔者ならば誰でも知っている常識であろう。
しかし、誰だって命を削るのには抵抗がある。だから、生命由来の魔力を他で補う方法が、これまで様々な者の手によって研究されてきた。その成果が魔杖であり、エーテルであり、また魔力炉である。
そして、特に魔力炉を生み出したのは、自分と同じ人間だ。
……本当に、天才だよ、人間は。
だから、知っている。あの技術が、いかにしてこの世に生まれ落ちたものかと言うことを。どれだけ画期的で便利な魔力精製炉であっても、それによって多くの人が幸せになったとしても、あれが”人道に反する負の遺産”であることに変わりはないのだ。
しかし、そんな話題は、シャルとするには少々重たすぎる。
それに、少し幼くはあるが、久しぶりの同年代と過ごす時間だ。このゆったりとしたひと時を、可能な限り長く楽しみたい。そんな気持ちが、自分の中で渦巻く嫌な思考を止めてくれた。
けれど、相手はシャルだ。こちらが遠慮をしたところで、彼女も自制するかと言えば、そんなことはない。
「でも、あれ?ソラって、ライラから直接魔力をもらわないと力を使えないの?なんか魔剣みたいだね」
「……ま!?」
シャルは、何の気無しに、とんでもないことを口にする。
あまりに予想外の言葉に、自分は他の誰かに聞かれてはいまいかと、猛烈に焦った。間仕切られた個室の中だと言うのに、息をするのも忘れて、必死に首を四方八方に振り回す。
だが、幸い、お隣さんは宴もたけなわのようで、こちらの会話が聞こえている様子はない。そこまで確認して、ようやく自分は一息つくことができた。
ミナトさんは、
シャルに言われてようやく気がついたが、本来魔杖は、完全ではないとは言え、外部の魔力を主体として魔法を成す導具のはずだ。だから、神様のように、使用者から相当量の魔力の供給が必須な魔杖は、確かに魔剣に分類されていてもなんらおかしくはない。
それに、魔杖「バク」で使える魔法は、”切れないものを切る”という、聞いただけでも破格だとわかるほどの高い性能を誇っている。どうせ使う機会はないと割り切って思考を放棄していたが、よくよく考えれば、到底等級三に収まる様な器ではないように思えた。
ともかく、詳しいことは神様に尋ねればわかるだろう。
そう高を括っていたのだが、むしろ神様は、自分の魔杖について、ほとんど何も知らないようだった。
「あ、でも、大昔には妖刀とか呼ばれてた時期もあったわね」
「何と言う物を押し付けてくれたんですか、ミナトさん……」
「……なんか思い出したら腹立ってきた。妙な噂を流されたせいで、刀の力欲しさに奪い合って無駄な血が流れるし、そのせいでコロコロと持ち主が変わって落ち着かないし。あぁ〜〜!!全く、付き合わされる私の身にもなってみなさいよ!」
よっぽど辛い経験だったのだろう。大層ご立腹な様子の神様からは、次から次へと止めどなく怒りの言葉が溢れてくる。その乱れ様は、もはや自分には止める手立てがないように感じられた。
しかし、そんな状況でさえ、シャルの空気の読めなさは揺るぐことはない。
「ん〜?よくわからないけど、ソラは特別ってことだよね?すごいじゃん!いいな〜。ますますソラの魔法が見てみたくなったよ!」
「そ、そう?なら、今度特別に、シャルにだけは見せてあげてもいいわよ?」
「え、本当?やったぁ!」
「…………相手がこの子で良かったよ、色んな意味で」
シャルのお陰で一瞬で上機嫌へと変わった神様に一人苦笑していると、部屋の襖の向こうから声が聞こえてくる。
「すみません、今開けますね!」
楽しそうに騒いでいるせいで声に気づく様子のない二人を置いて、待たせては悪いと、自分は急いで戸に手をかけた。
「お、お待たせしました……!」
料理を運んで来てくれたのは、モミジさんだった。その手には、串カツが山のように盛られた大きな黒い矩形のお皿を抱えている。
「あ、さっきライラの手を引っ張ってた人だ!」
「初めまして、モミジです!アキラさんのお友達さんですか?」
「うん、シャルロットだよ」
「シャルロットさんですね!よろしくお願いします」
「よろしく、モー……?メイ!!」
二人はお客と店員のはずなのに、何故か自己紹介までして、いつのまにか仲良くなっている。しかも、シャルはまたさりげなく人の呼び方を勝手に変えているし、モミジさんは疑問を抱く様子もなく素直に受け入れている。
……
こうしてまた、異種族との埋め難き溝をまざまざと見せつけられた自分なのであった。
「いただきま〜す!」
「『いただきます』」
去り際に聞いた、モミジさんが店長にコッテリと絞られた話はさておき、自分はシャルさんと軽く乾杯をした後、すぐに神様へと体の主導権を譲った。
改めて乾杯をしたシャルと神様は、この時を待ってましたと言わんばかりに、楽しそうに食事を始める。
「ソラが憑依すると、ライラの見た目も少し変わるんだね」
「『え?そうなの?どの辺が?』」
「う〜ん。どこがって言うより、全体的にライラにソラが混じったみたいに見えるかな」
シャルの指摘に、神様はおもむろにスマホを取り出すと、慣れた手つきでロックを解除し、カメラアプリを起動した。
「『本当だ。……なんか気持ち悪いわね』」
「そう?私は良いと思うんだけどなぁ〜」
インカメラを鏡代わりに、自分の顔をまじまじと見つめる神様は、側から見ているとなかなかに面白い。
だか、あくまでもその体は、自分のものだ。姿が変わって気味悪がられるのも、喋り方や挙手動作が女々しくて恥をかくのも、結局は体の持ち主である自分である。今日は仕方がないとしても、今度からは安易に憑依を許さない方が良さそうだ。
しかし、少なくとも、見た目が中途半端に変わってしまうのは、自分の側にも原因があるらしい。
「『あんたとは、集中しないと憑依できないから疲れるのよね。本当なら、意識ごと乗っ取ることもできるんだけど』」
「それってやっぱり、魔力が足りないせい?」
「『むしろ、無さ過ぎるおかげね。魔力がある状態で同じことをしたら、あんたの体、一瞬で壊れるわよ?』」
「おいおい、物騒なこと言わないでよ……」
「おもしろ〜い。ライラの声でソラが喋ってる」
緊張感のないシャルの言葉に、神様が突然下卑た笑みを浮かべた。
嫌な予感がして、体から神様を追い出そうと試みるも、残念ながら今の自分にその権限はないようだった。
それを知った上で、猶予をちらつかせて焦らしてくる神様は、おもむろにシャルの手を掴んだかと思うと、気障ったらしく、甘く囁くように言う。
「『シャル、好きだよ』」
「なっ!?ソラ!?」
「…………?」
突然ソラから告白の言葉を受けたシャルさんは、一瞬困ったような表情を浮かべる。
けれど、それは意味を理解していないが故に、必要な思考の時間だったようだ。
「私も、ライラとソラは好きだよ!」
シャルが無知だったおかげで、自分は命拾いをすることができた。つまらなそうにしている神様は後で言葉で殴るとして、今はほっと胸を撫で下ろす。
ただでさえ、魔剣疑惑のバクを抱えている上に、魔者の世界で人間という正体を隠しながら生きているのだ。その上、ナンパからのロリコン判定まで食らえば、いよいよ豚箱行きが目前になってくると言うものだ。
一体どうすれば神様が反省してくれるかと、そう一人思案していたけれど、どうやらその必要はなさそうだった。
「ライラとソラは、一緒にいて楽しいし、そんな二人も、私といて楽しそうにしてくれてる。なんだかまるで、ずっと昔からお友達だったみたいだね」
「『……そうだ!シャルは携帯待ってる?良かったら連絡先交換しない?』」
「え、良いの?……ライラも、私としたい?」
シャルはどうしてか、弱気に自分の方に尋ねてきた。しかし、自分には頷く度量も、断る度胸も持ち合わせていない。だから、どうせこの話には関係のない自分だ。神様の意見を、素直に尊重することにした。
「わ〜い!」
「『さっきの約束も、近いうちにね』」
手短に連絡先を交換すると、早速二人はメールを送り合っていた。シャルも神様も、楽しそうで何よりである。
しかし、そんな傍観を決め込んでいた自分の背中に、突然妙な悪寒が走った。
それと同時に、勢いよく襖が開け放たれる。
「ラ、イ、ラ、さ、ん?」
「…………あっ、不味いぞこれ」
そこには、二人の一連の会話が耳に入ってしまったのだろうヒナタさんが、鬼の形相でこちらを強く睨みつけていた。片手には、キャップの外れた青ボールペンが抜かりなく装備されてもいる。
……絶対勘違いしてるよなぁ。
先ほどは、自分をいきなり不審者扱いしてきた彼女だ。シャルさんとの怪しいやり取りを聞いて、やはりと、一目散に駆けつけてきたき違いない。
どうやらヒナタさんは、モミジさんとの一件もあり、まだ信用しきっていないようなのだ。
しかし、幸いなことに、ここには彼女の知る姿の自分はいない。
「『あ、ヒナタだ』」
「……あれ、アキラさんはどこに?」
「『あいつならトイレに行ったわよ。あの様子だと、当分帰ってこないんじゃないかしら。ね、シャル?』」
「よくわからないけど、ソラが言うなら、多分そう!」
初めに、後から連れが来ると伝えていたのもあって、ヒナタさんはすぐに納得してくれた。
その後、断っても彼女が土下座をやめなかった時は困ったが、しばらくすると納得したのか、ペコリとお辞儀をして帰っていった。
「『他人の体で遊ぶのって、案外楽しいわね』」
「……クズみたいな台詞だ」
「『はいはい、もうしないわよ。これでいいでしょ?』」
「なんだかなぁ〜」
そこからしばらくは、他愛無い会話と食事を楽しむ時間が続いた。
そして、ようやく自分の番が回ってくる。
けれど、自分のテンションは最低値だ。
「……もう少し気を遣って食べて欲しかったよ」
最初は山盛りだったはずの料理は、今は数えるほどしか残っていなかった。
けれど、それは別に構わなかった。神様が食べた分は、味や食感は感じないが、全て自分の胃の中に収まっている。今は、大方腹八分目といったところだろう。
しかし、それでも、自分の口で少しは串カツを味わいたかった。
それなのに、今お皿の上に残っているものと言えば、竹輪にニンニク、銀杏と言った癖のあるものばかりだ。
「ごめんごめん。美味しくてつい!」
「いや、シャルは悪く無いよ。それより、ソラが選り好みし過ぎなの!シャルが嫌がらないからって肉ばっかり食べて、野菜一本も食べなかったよね?」
「だって、美味しくてつい」
「シャルの真似しても許さないからね」
「……なによ、私にばっかり当たり強くない?やっぱりロリコンなの?」
「自分の胸に手を当ててから言って」
文句を一頻りぶちまけた後は、仕方なくあるものに手を伸ばす。口の中が物足りないが、懐も腹も厳しい状態では追加で何かを注文する気にもなれず、ため息をつきながらヤケクソで串に食らいついていた。
「…………ん?どうかした?」
「ううん、気にしないで」
満腹になったのか、手を止めたシャルは、しばらくの間自分の食事を眺めていたかと思うと、おもむろに部屋の外へと出ていった。
そして、どこで見つけてきたのか、木製のボードゲームを抱えて戻ってきた。
「四人用ゲームだから、私が二人分やるね!」
「片手借りるわよ」
「どうぞ」
そう流れで口にできたあたり、自分たちはすでに、シャルに相当毒されているようだった。
神様に利き手を明け渡した自分は、もう一方の手でのんびりと食事を続ける。
「何よこのサイコロ、ずっと一しか出ないじゃ無い!」
「あ、また六だ!」
「嘘でしょ、またぁ!?」
「はい、一つ目ゴール!六だから、もう一回振れるね!……あ、また六!」
「ねぇ、アキラ。私、シャルに運を全部吸われてるような気がするわ」
「気のせいだよ。……あ、六出た」
「二人して何なのよ!」
途中からは何故か、モミジさんとヒナタさんも参戦して(ソラは拗ねてヒナタさんに席を譲った)、それなりに長い時間ゲームを楽しんだ。
波乱を極めたこのゲームを制したのは、序盤から運に味方されていたシャルさんだった。
「やった!私の勝ちだよ!」
「あ〜、負けちゃった」
「あと少しで背中を刺せたのに」
「ヒナタちゃん、目が怖いよ……」
「まぁ、モミジさんよりも上は取れましたし、今日はこの辺で許してあげます」
「それゲームと目的違うよね!?」
そんな賑やかで楽しい時間も、ずっと続けるわけにもいかない。
「そろそろ帰りましょうか」
「え〜。もう少し遊ぼうよ」
「ここはご飯屋さんで、遊ぶ場所じゃ無いですよ。それに、ギアフロータスの治安を考えると、あまり遅い時間に帰るのは危ないですから」
その言葉に加勢してくれたのは、たまたま通りがかった店長さんだった。
「食材が切れたから、今日はもう店閉めるぞ。……と言うわけだ、お客さん。良かったらまた来てくれ」
それだけ言って去るものだと思っていたのに、店長は不意にこちらを睨んできた。
「それと、アキラ」
お店に迷惑をかけたことを怒られるものかと、一瞬自分は身構える。
しかし、店長の目つきが鋭いのは、そういえば元からだった。
そして、内容も注意などではなく、もっと”どうしようもないこと”だった。
「次来る時は、裏口から来てくれないか?」
「え?はい。でも、どうしてですか?」
「……表に並ばれると、モミジがまた暴走しそうだ」
「……あ、なるほど」
店長のそんな言い草に、物申すモミジさんではあったけれど、彼女を問題児扱いしているのは店長だけでなく、むしろ従業員全員の共通認識らしい。それがまたおかしくて、全く見ていられない。
ともかく、自分たちはお店の片付けの邪魔にならないように会計を済ませて、ガス灯が照らす薄暗い大通りへと出た。
「ご来店ありがとうございました」
「また来てくださいね〜!」
モミジさんとヒナタさんに見送られながら、自分たちはそれぞれ帰路につくことにする。
けれど、不思議とシャルは、大人しくして自分の横をついてきた。
「自転車、近いうちに修理してくださいね」
「……え?なんで?もう直ってるから大丈夫だよ」
ぼーっとしているのか、シャルの反応が鈍く感じる。
「こういうのは、動くかどうかよりも、いざって時に止まれるかの方が大事なの。怪我してからじゃ遅いし、家族も心配するよ?」
眠気に負けられて、モミジさんのようになってもらっても困る。だから、自分は普段よりも少し大きめの声で、脅かすように言った。
けれど、それでもシャルは、先程の元気を取り戻してくれない。
「……そっか。うん、わかった」
やけに素直なシャルが、自分は少し不気味で、また心配だった。
だから、不意打ちだ。
「わぁっ!?な、なになに!?」
シャルの耳元で気持ち強めに手を打ち鳴らすと、驚きに大きな声をあげながら、彼女の体が勢いよく跳ねた。
「どう、目覚めた?」
「びっくりしたぁ〜!!……ライラって、こう言うこともするんだね。なんか意外」
「気まぐれだよ。普段ならしない」
「嘘ね。本当は悪戯好きの癖に、隠してるの」
「いい加減なこと言わない!」
少し強めに言い過ぎただろうか、神様は後ろに引っ込んでしまう。
代わりに、顔を上げたシャルが、勢いよく自転車に跨りながらに言う。
「心配してくれてありがとう。わかった、気をつけるよ」
それだけ残して、シャルは自転車を軽快に漕ぎ始める。それこそ、そのまま走り去ってしまいそうな身軽さだ。
けれど、ふと彼女は足を止めて振り返る。
「またね!ライラ、ソラ!」
「えぇ、また遊びましょ」
「じゃあね」
そして今度こそ、シャルは夜の街を颯爽と駆けて行った。
すると、思い出したように、全身に温い疲労感が襲いかかってくる。
「……なんか、めっちゃ疲れた」
「確かに、濃い一日だったわね」
そう言って二人して見上げる空の景色は、特段美しいというわけでもない。けれど、それでも静かに見入ってしまうのは、そこに楽しい時間を見ているからなのだろう。
通りは珍しく閑散としていて、驚くほど静かだ。そんな偶然もまた、このひと時を愉しくしてくれる。
しかし、ずっとこうしているわけにもいかない。シャルにああ言った手前、危ないのは自分も同じである。
「いい加減、家を探さないとね」
「手伝うわ。この街で野宿はしたくないもの」
「お願いします」
幸い、お爺さんが用意してくれた部屋は、この店からそれほど離れていない。と言うより、このお店の近くに住みたいと言ったのだから、当然と言えば当然だ。
急ぐでもなく、むしろスローペースで、自分たちはアパートを探す。もう、やり残したことはない。だから、後は帰って寝るだけだ。
けれど、そこで何かが引っかかった。
……あれ?
そう、何か重要なことを忘れているような、そんな気が…………。
「…………自転車どこで買ったのか聞くの忘れたなぁ」
「……馬鹿なの?」
神様はメールで聞けば良いと言うが、いきなり送るのも悪い気がして指が動かない。
そうやって渋る自分に耐えかねて、神様は自分の体を奪い取ると、シャルへと勝手にメールを送ってしまった。
そうこうしているうちに、自分たちの新しい家の前についた。
「…………ねぇ、ここに住むの?」
「そうみたい」
目的地である縦長で細いアパートは、学生寮として転用するために、絶賛改装中なのだろう。遮音用のビニールが建物を覆うようにかけられており、夜の暗さも相まって、かなり不気味な雰囲気を纏っていた。
「意外と広いね」
エントランスの鍵を開けて中に入ると、そこには想像以上に開けた空間が広がっていた。
「常駐型の魔法ね。金持ちの考えることはわからないわ」
「まぁ、いいじゃんか。何にしても、雨風がしのげるだけ、ボロ小屋よりはまともだよ」
「どうだか」
神様には何か見えるのだろう。壁や空中を軽く指でなぞっては、つまらなそうにしていた。
「あ、ここみたい」
最上階である六階まで登る。その廊下の突き当たりに目的地である物置部屋はあった。
早速、錆びついた鍵を開けて扉を開こうとするも、立て付けが悪いのか、素直に開いてくれない。多少力を入れたところでは、びくともしなかった。
「おりゃ〜〜っ!……はぁ。良かった、開いた……」
ドアノブを両手で握り、全体重を後ろにかけてやっと、部屋の入り口を開くことが叶う。
恐る恐る中を覗いてみると、そこはとても部屋と呼べるようなものではなかった。
「狭っ!?本当にただの物置じゃない」
「住めなくはないだろうけど、確かにこれはひどい……」
この部屋は、魔法の効果範囲外に設定されているのだろう。外見に等しく、部屋の中は想像を絶する狭さだった。奥行きはそれなりにあるが、幅なんて自分が両手を広げれば、もう幾ばくも余裕がない。
大通りに面した大きな窓が、部屋の閉塞感を和らげてくれてはいるものの、正直喜んでばかりもいられない。月はもうじきに冬になる。そうなれば、部屋の熱を奪うだけの迷惑な冷房装置でしかない。
ともかく、ここに住むには、部屋の中の掃除から始めなければならないようだ。
「掃除するにも、骨が折れそうだなぁ」
「ミナトに言って手伝ってもらったら?」
「う〜ん。頼んだら来てくれると思う?」
「あの子なら呼ばなくても来るわよ。要らない心配だわ」
一先ず、足の踏み場もないような部屋をかき分けて進むと、本に埋もれた簡易ベットを見つけた。埃だらけではあるが、今日はこれで我慢するしかあるまい。
「それでも、あの小屋よりはマシだ」
壁は隙間だらけで、屋根は壊れて雨ざらし。布団も地面の上に藁を敷いただけのものだ。こう言ってはなんだが、よくあの環境で生きてこられたなと、我ながら感心してしまう。
幸い、この部屋の中は自由にして良いと言われている。快適に過ごすには、それなりに調整が必要だろうが、逆に言えば、時間と手間さえ惜しまなければ、如何様にも変えることが許されていた。
その一歩目として、ベット周りだけでも綺麗にしようと、無闇に埃を舞わせないように気をつけながら荷物を片付ける。しばらく窓を開けていると、部屋にこもっていた独特な匂いも気にならなくなった。
「ねぇ、シャルから返信きたみたいよ」
一通り作業が済んだところで、タイミング良くスマホの通知が鳴る。なぜだか知らないが、神様は少しそわそわとしていた。
「家に無事に着いたのかな?」
「それも後で聞けば良いじゃない。とにかく、今は返事を見ましょう!」
「そうだね」
急かされるままに、神様にも見えるようにメッセージを開く。
その内容は、実にシャルらしいもので、二人して思わず笑ってしまった。
「ダメ元で明日行ってみようか」
「そうね」
画面に表示された、『廃品集積場のおじさんにタダでもらった!』と言う文字。それを見るだけで、彼女の表情が浮かぶのだから、もう堪らない。お互いにお腹を抱えて、でも相手に悪いかと、小さくくすくすと笑い続ける。
そんなこんなで、自分たちの新しい街での一日目は、愉快に駆け足で更けていったのだった。
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