閑話 賑やかな時間 -前編-
夕飯時を前に、より一層賑わう大通りは、相も変わらず
そんな中、彼女の車から降りた自分たちはと言えば、道の隅で唸りながら手元の地図と睨めっこをしていた。
「簡単に着くと思ってたんだけどなぁ」
通勤手段として購入を検討している自転車の下見に行こうと、彼女にわざわざ近場に下ろしてもらったにも関わらず、歩いても歩いても一向に目的地へと近づいている気がしない。似た形状の建物が多いせいで目印にできる特徴ある建物も少なく、気を抜けば簡単に方向感覚を失ってしまいそうで怖かった。
何より厄介なのは、上空から街を見下ろしても目的地までの道筋がわからないことだった。神様の鷹の目を頼りに、この迷路の道案内をしてもらおうと思っていたのに、複雑に入り組んでいる上、立体的に建物や道が幾重にも重なっているため、素直にまっすぐ進むことはできそうにない。
「今さっき歩いてた道が、振り返った時には塞がっててもおかしくない街なんて。住んでる人たちの気が知れないわ」
「気持ちはわかるけど、少しずつ慣れて行くしかないよ」
常に、かつ身勝手に開発が進められるこの街では、地図はあまり役に立たない。それに、実際は三次元的構造となっている道だ。全てを正確に把握するには、階層ごとに地図を作らなければならないだろう。まぁ、どちらにしろ無意味であることには違いないのだが。
「ねぇ、アキラ。いつまでも恥ずかしがってないで、いいからそこら辺の人にでも道を聞いてみましょうよ」
「えぇ〜、嫌だよ、面倒くさい。それに、多分もうすぐ着くよ。ほら、行こ!」
「……あんたが方向音痴じゃなきゃいいけど」
自分の言葉を全く信用してくれていない神様を引き連れて、自分はひたすらに前へと突き進む。
幸い、神様の心配は杞憂で済んだようだ。
「とうちゃ〜く」
「あら、ちょっと見直したわ」
「こんなんで褒められてもなぁ。子供のおつかいじゃないんだから」
神様の中での自分の評価を改めたい気持ちもあったが、店の前で言い争いをするのも気が引ける。だから、今は評価が良い方に傾いたと、そう素直に喜ぶことにしておいた。
「なんか、思ったよりゴツいわね」
「その上値段もゴツい……」
お店の前には、商品であろう自転車が整然と陳列されている。主に扱っているのは、マウンテンバイクだろうか。オフロードでの走行に耐えうるような頑丈な仕様の商品が多く見受けられた。
……確かに、この街をママチャリで走るのは、流石に無理あるもんね。
ギアフロータスの街は、大通りこそ小綺麗に舗装されているものの、主要な道から横に入れば、そこから先、フラットな道は全く期待できない。障害物や段差も多く、路面も一様でない環境下では、シティサイクル、いわゆるママチャリが普及していないのも納得がいった。その上、ここは、潮風が常に鉄を貪る海上都市だ。そんな、類を見ない極限環境での使用に耐えうるように装備が充実している分、商品の価格も常軌を逸していた。
「しばらくは徒歩通勤だね。残念」
「まだ諦めるには早いわよ。中に入れば、手の届くものもあるかもしれないわ」
「ないと思うけどなぁ~」
「もう、つべこべ言わずにこっち来る!下見に行くって言ったのはあんたでしょ!」
神様の指摘が図星だった自分は、素直に店内を覗いていくことにする。
「意外と種類あるんだねぇ」
「そう?私にはどれも同じに見えるけど」
自分たちが入ったお店は、決して大きいとは言えない店舗ではあったけれど、中にもそれなりの数の自転車が置いてあった。
けれど、やはりどれも、今の手持ちでは買えないような高価なものばかりだ。
「アキラ、これとかどう?付属品も少なくて安そうじゃない?……って、げっ!?むしろ他のより高いじゃない!!」
「……あ~、そういうことかぁ。道理で軒並み値段が高いのね」
「何?どういうこと?」
表で自転車の価格を見てから、ずっと違和感を覚えていた。
街中の悪路を走破するだけの性能を確保するために、フレームやタイヤ、ブレーキらに高い性能が求められるのは理解できる。けれど、それを考慮に入れた上でも、この値段に納得するのは難しかった。
「コレのせいだよ」
自分は最寄りの自転車の前でしゃがみ込み、フレームに取り付けられている長細い箱を指差す。神様も隣に来て、一緒に売値を釣り上げている原因を覗き込んだ。
けれど、神様はまだ気付く様子はない。
「確かに、他の自転車にも似たようなのが付いてたけど。……でも、この箱がなんだって言うの?」
「これはバッテリーだよ。初めは走行アシスト程度のものかと思ったけど、仕様書を見る限り、もうエンジンだね」
そう言って今度は、商品近くに置かれた値札に目をやる。大雑把に商品の装備内容が記されているが、どうやら最高速度は原付のそれを優に超えるようだ。
「月では、電気よりも魔力が普及してるんだね。まぁ、当然と言えば当然なのかな」
「こんなの、もう半分魔杖じゃない。ここは何屋よ」
「この街に自転車の需要があるとは思えないし、だからと言って車を買うかと言えば、そもそも高いし維持費もかかる。そういう人たちの中には、物珍しさで欲しがる人がいてもおかしくはないんじゃないかな」
「にしても、この値段はどうなのよ。人の足元を見てるとしか思えない」
「まぁ、嗜好品なんて、どこもそんなもんだよ」
しかしながら、魔杖とて、皆が皆高価な代物と言うわけでもない。要するに、ここに並ぶ商品は全てぼったくりなのだ。
差し詰め、量産された魔杖が大量に売れ残っていたところを、ここの店主が買い占めて、抱き合わせ販売による販促と増益を試みたと言うところか。全く、小狡い商売をしているものである。
「通りで静かなわけね」
人間の自分ですら違和感を覚えるのだ。魔者がホイホイと引っかかるはずもなく、自分たちが入店してから他のお客は一人として見ていない。がらんとした店内は、もはやガラクタ置き場も同然だった。
その後も、神様と手分けして店内を歩き回ってみたが、自分たちの求める商品は見つからない。
「ここには普通の自転車はないみたいだね。全部魔杖が付いてるよ」
「専門店なのに、他に選択肢がないなんてね。とんだ無駄足だわ」
使えない機能にお金を払えるほど、自分の懐は暖かくはない。
それに、これだけ強気に出ているのだ。他の店舗を回っても、恐らく似たような感じなのだろう。
こうなると、自転車に代わる移動手段を他に見つけなければならない。そうわかると、とても気が重たかった。
「……なんだか、外が騒がしいわね」
「クレーマーかな?」
これからどうしたものかと思案しながら店を出ようとすると、何やら言い争いをする声が聞こえてくる。
「ですから、当店でご購入いただいた商品以外の修理サービスは受け付けていないんですよ」
「え〜。自転車屋さんなのに、どこが悪いか見てもくれないの?」
「すいませんが、そういうルールでして……」
声の主は、四十代の男性店員と、若い女の子のものだった。
「困ったなぁ……。これじゃあ家まで帰れないよ。どうしよう……」
防汚用のエプロンを着た店員のとりつく島のない回答に、パーカーにショートパンツと年相応に溌剌とした背格好の女の子は、頼みの綱がなくなってしまったと項垂れる。
とは言え、万事休すと気落ちしているわけでもないようだ。
「押して帰るにしても遠いし、修理したくても、壊れてるところがわからないんじゃ、私には絶対に無理だよ」
小さな体で腕を組み、くしゃくしゃに表情を歪ませながら深く悩み込む女の子ではあったけれど、やはり焦ったり絶望している様子は不思議とない。どうやら女の子は、自分とは相入れない、楽観主義者のようだった。
「何してるの?早く帰りましょうよ」
「あ、ごめん。ぼーっとしてた」
ともかく、自分が首を突っ込む案件ではない。そう断じて、波風を立てないようにひっそりと店を後にする。
……つもりだった。
「どこか悪いんですか?」
困った様子でウロウロと歩き回る女の子に、自分はおもむろに声をかけてみる。
「……ん?君、誰?」
「自転車の調子が悪いと言う話が聞こえてきたので、少し気になって」
「ちょっと、アキラ!?」
単身突っ込んでいく自分に、神様が慌てた様子で追いかけてくる。
そんな神様に、自分はそっと耳打ちをした。
「見てみて、この自転車」
「……あぁ、そういうこと」
女の子が修理を断られた自転車は、魔法用のバッテリーが装備されていない、至って普通の自転車だった。
困っている女の子を助けたいと、そんな気持ちがなかったわけではない。けれど、それが一番かと言えば、決してそうではなかった。
「もしかして、君がこの自転車を直してくれるの?」
「それは見てみないとわかりませんが、簡単な故障なら、自分でも応急処置くらいならできると思いますよ」
「おぉ!お願いお願い!」
自分の提案に、たちまち女の子は嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。疑うことを知らないのか、はたまた信用してくれているのかは定かではないが、なんだか女の子を騙しているようで気が引けた。
だから、せめてまずは、女の子の期待に応えなければなるまい。
「私はシャルロットって言うんだ。君たちは?」
「自分は玲……って、え?君たち?」
「あれ?そこの浮いてる人はお友達じゃないの?」
底無しに明るい女の子、もといシャルは、自分の横にいた神様を見ながらに言った。
「ソラが見えるの?」
「へ〜、ソラって言うんだ。私、シャルロット!よろしく!」
「え、えぇ。よろしく……」
相手の手も握れないのに、ぶんぶんと腕を振り握手をする素振りを見せるシャルに、神様も負けて、笑いながら向こうの動きに合わせている。どうやら、気が強くて口の悪い神様と、他人を疑わず気も遣わない真っ直ぐな彼女は、それなりに相性が良いらしい。
むしろ、実体のある自分の方が粗末な扱いを受ける始末だ。
「で、君が……。え~っと、何だっけ?」
「玲です。王様の王に、命令の令でアキラ」
「へ〜。なんか、偉そうな名前だね」
そんなことを、一切悪びれず、ただ素直な感想として言ってくるシャルに、自分は段々と頭が痛くなってくる。
……この子は遠慮というものを知らないのか?
相手が相手なら、怒られても仕方のない失礼な態度だ。
と言うよりは、シャルは、他人と話すのがあまりに下手過ぎる。明るく元気な彼女だ。素直過ぎるのが玉に瑕だが、人付き合いは得意そうな性格に見えた。
しかし、実際はどうだろう。距離感や言葉選びなど、経験不足としか思えないミスを繰り返し、その上相手を不快にさせていると気付いてもいない様子だ。そんな、見た目と中身がチグハグな彼女に、自分は妙な気持ち悪さを感じていた。
「変な子ね」
「……ソラ、聞こえてるんだからね」
「あっ」
いつもと同じ感覚で本音を愚痴った神様の声は、当然シャルの耳に入る。
「気にしないで。よく言われるんだ」
「ごめんなさい……。悪気はなかったの」
神様は、珍しく落ち込んでいた。
それもそのはずだ。折角、こうして会話ができる相手が現れたのだ。それなのに、普段は孤独を紛らわすために吐く愚痴を、気を抜いて本人の前で口を滑らせ嫌われたとなれば、もはや目も当てられない。
だから、自分なりにフォローを入れておくことにする。
「よく自分も馬鹿にされるんだよね。ソラが辛辣なのは誰に対してもだから、あんまり気にしない方が良いよ」
「はぁ!?こっちが下手に出ていれば、好き勝手に物言ってくれるじゃない!」
「でも、嘘はついてないつもりだよ」
「きぃ〜っ!ムカつくこいつ!!」
「へぇ〜。二人は仲がいいんだね。」
「よくない!」「よくはないかな」
「ほら、やっぱり仲良しだよ」
シャルは、どうしてか、苦笑いを浮かべながらそう言う。そんな彼女は、どこか焦っているようにも見えた。
「エイ……!?エイ……、エイラ……?ん〜、ごめん!君の名前、上手く言えないや!」
「無理はしなくていいですよ。自分も覚えるのは苦手なので、何となく気持ちはわかりますから」
「ありがとう。そう言ってくれると助かるよ」
ここまで来ると、シャルの奔放な振る舞いも慣れてきて、意味の分からない突飛な言動も、さらりと受け流すことができるようになっていた。
ともかく、修理をするにしてもしないにしても、お店の前でたむろしているのは迷惑かと、シャルに連れられて近くの公園へと移ることにする。
公園と言っても、子供が喜ぶような遊具はなく、どちらかと言うと空き地や廃材置き場といった方が正しいようにも思う。
しかし、そんな限られたスペースすら、この街に住む子供たちには貴重な空間のようだった。
「さて、直せるといいな」
公園の一角で自転車の前で屈んだ自分は、気付けばそんな不安を口にしていた。
「素人が触っても平気なものなの?いい加減にいじったら、むしろ壊れるんじゃない?」
「嫌なこと言わないでよ。指が動かなくなるじゃん」
「……見栄っ張りめ。どうなっても、私は知らないわよ」
「”私には関係ない”、でしょ?」
「え、えぇ。そうよ。わかってるじゃない」
相変わらず露ほども信用してくれない神様はさておき、シャルに自転車の調子の悪い箇所を尋ねながら、自転車の様子を確認してみる。
「なんかね、いつもよりもペダルが重たいんだ。何かが擦れるような変な音もするし、何だか落ち着かなくって」
「なるほど。じゃあ、チェーンかブレーキかな?」
「え、それだけでわかるの!?」
「流石にわかりませんよ。だから、これから見てみるんです」
「へぇ〜、そうなんだ」
関心があるのかないのか、そんなシャルの曖昧な答えに呆れながらも、黙々と故障箇所を探っていく。
幸い、すぐに問題の原因は発見することができた。
「後輪のブレーキが、何かの拍子に片側へ寄っちゃったみたいですね。道具がなくても最悪叩けば直りますが、場所が場所ですし……。今からでもお店に道具を借りに行きますか?」
そんな自分の提案に、シャルは任せると言い切る。
「……じゃあ、一先ず応急処置ってことで。出来るだけ傷つけないように気をつけますね」
「は~い、よろしくね!」
本来なら、迷うまでもなくお店に戻るべきだった。
けれど、先ほどの対応から鑑みるに、店主が協力的でないことは確かだ。
だから、自分は周りに落ちている廃材から使えそうなものを適当に引っ張ってきて、慎重に修理を始める。
「本当に助かったよ。君がいなかったら私、お家に帰れなくなってたかも」
「まだ修理中ですよ。そういう台詞は、無事直ってからでお願いします」
そうは言ったものの、この程度なら数分と経たずに直せるだろう。
……約束は果たしたから、そろそろいいよね?
初めに感じていたシャルへの後ろめたさは、彼女の悩みを解決することで相殺して消えた。これで、気兼ねなく、当初の目的を切り出すことができる。
しかし、こういう時、少し遠回りを選んでしまうのは、自分の悪い癖だ。
「……ところで、シャルさんはどうして自転車を?」
「…………え?」
「え?」
自分の質問に、何故だかシャルは、ひどく驚いたようで固まってしまう。想定外の反応に、しかし、理由がわからず、自分も困惑した。
「あの、どうかしました?」
「……だって今、私のこと、シャルって」
「あぁ……」
何か粗相があったかと尋ねると、シャルからは意外な答えが返ってくる。
言われてみて、自分でも不思議だった。
今考えると、初対面なのに壁を感じない話し方に、無意識に同級生感覚で彼女に接してしまっていたのだと思う。学校のクラスメイトや後輩に過度な敬語や遠慮をするのは不自然なように、彼女を呼ぶときは、どうしてか堅苦しいフルネームで呼ぶ気にはなれなかったのだ。
けれど、会って間もない相手から、呼び捨ては愚か、いきなりあだ名で呼ばれるのは誰だって抵抗があるだろう。
しかし、自分とて、理由なく相手の名前を気安く呼ぶような、そんな失礼な人間ではないつもりだ。
「こう言う名前の人は、ニックネームで呼ぶのが普通だって聞いたことがあって。……もしかして、間違ってました?」
昔見た海外の映画やドラマでは、登場人物たちは初対面でもニックネームで呼び合っていたように思う。だから、向こうではそう言うものなのだと、勝手に解釈していた節があった。
実際、シャルはその文化を否定しなかった。
「ううん、違くない!違くないよ!……あ、でも、ニックネームで呼ぶのに、”さん”をつけるのはちょっとおかしいかも」
「それは確かに…………。そうですね、シャルロットさんの言う通りです」
「えぇ〜、そっちに直しちゃうの?嫌だな」
「……じゃあ、シャル?」
「うん!そっちでお願い!」
そう言って自分の手を取るシャルは、何だかとても嬉しそうに見えた。
「改めて、よろしくね!ライラ!」
「はい。……ん?ライラ?」
「だって、君の名前、すごく発音しにくいんだもん。だから、私もニックネームで呼ぶことにしたんだ!」
シャルの言っていることは、手前勝手で無茶苦茶な言い分だが、そこに悪意がないことも今の自分は知っている。だから、自分は素直にその呼び名を受け入れることにした。
「……でも、ライラって、なんだか女の子っぽい名前だね」
「おい」
「違う違う!褒めてるんだよ!」
「いや、何をだよ……」
「あはは〜」
前言撤回。
本当は、この子の奔放にこれ以上振り回されるのが面倒だと思っただけだ。
そんなこんながあったが、無事に自転車の修理を終えることができた。
「すご〜い!本当に直ってるよ!!」
そう叫びながら、早速自転車に跨って辺りを走り回るシャルに、自分は内心冷や冷やだった。
「あくまでもその場凌ぎなんですから、あんまり無茶はしないでくださいね!」
「へ〜きへ〜き!ライラが直してくれたんだから、もう心配いらないよ!」
「いや、だから応急処置だってっ!…………もう」
「あれは聞いてないわね……」
それからも、シャルはしばらくの間、公園をぐるぐる走り回っていた。
しかし、無尽蔵かと思われた彼女の体力も、そう長くは続かない。
不意に、ぐぅ、と。シャルの腹の虫が、遠くからでも聞こえるほどに強く空腹を訴える。
「あはは。走ってたら、お腹空いちゃった」
恥ずかしがる様子もなくヘラヘラと笑いながら戻ってくるシャルは、らしいと言えばらしい。けれど、本音を言えば、もう少し恥じらいを覚えて欲しいものだ。
「ねぇ、夕飯の約束、ちゃんと覚えてる?」
「土筆でしょ?もちろん覚えてるよ」
夕飯のことをすっかり忘れていたシャルとは反対に、なんとも心配そうに言う神様は、よっぽど今夜の夕食を楽しみにしているのだろう。心なしか、体が踊っているように見えなくもない。
「その代わり、道案内よろしくね。地図見ても、ここどこかわからないんだよ」
「任せて。今度は必ず辿り着いてみせるわ!」
「よくわからないけど、なんか二人とも楽しそうだね!」
「……迷わないようにって必死なだけだよ」
「え~?そんな簡単に迷子になんてならないよ」
「そこはマトモなのね……」
「ん??」
しかしながら、今日の神様の気合の入り方は尋常ではなかった。いくら一人では食事が取れないからと言って、あまり他人の体を当てにするのはやめて欲しい。
自分は太らないからって、本当に止めるまで無制限に食べるんだもんなぁ……。
今日も、どれだけ食わされるのだろうと思うと、段々と夕食が怖くなってきた。
「ライラとソラは、これから土筆に行くの?」
「そうよ。よかったらシャルもどう?」
「え、いいの!?」
「もちろん!大歓迎よ」
「なら、行く!」
シャルに加えて、今のテンションの高い神様が結託したら、もう自分には手のつけようがない。
……まぁ、面白そうだし、いっか。
それに、神様にできた折角の話し相手だ。いつもお世話になっている分、神様のために時間を割くのもやぶさかではない。
「しゅっぱ~つ!」
「お~!」
こうして、どう言う巡り合わせか、初対面の女の子と夕食を共にすることになったのだった。
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