第5話 妹、襲来 前編

 ピンポーン

 翌朝、俺は玄関チャイムの音で起こされた。寝ぼけたまま着替え、インターフォンを見てみるとそこには妹がいた。何も考えずに応答を押すと

「おはよう、アニキ!荷物おかせてー」

と朝から元気な声が入ってきた。俺は

「はいよー」

と言うとオートロックの鍵を開けていた。そして、玄関の鍵を開けに向かうと足元に女物の靴があることに気づいた。

 そして俺の目は完全に覚めた。そこから大慌てで部屋の方に戻ると彼女の部屋をノックした。

コンコン

「はい」

そして妹が来たことを説明した。彼女はおどろいていたが

「わかりました。とりあえず着替えますね。それから最近入ってきた同居者ということにしておけばいいのではないでしょうか。今度来るまでには出ていきますし、急な転勤が決まったと言えば納得されるのではないでしょうか」

と冷静に対処法を考えた。

「わかった。とりあえずそうしよう」

 いきなり来たということもありテンパっていたので俺は彼女の案に深く考えずに賛成した。

「アニキ、おはよー」

妹が元気に玄関のチャイムをならした。俺は

「とりあえず着替えてきて。その恰好だと変な誤解されるから」

と言いばたばたしながら鍵を開けに向かった。

 鍵を開けると

「おそーい!ソファで二度寝でもしていたの?」

と元気に入ってきた。その恰好は半袖のパーカーにショートパンツでスニーカーだった。まだ朝は少し寒いのにと思いながら入ってくるのを見ていた。妹は

「それにしても昨日メッセージ送ったのに何で返信くれないの?」

と文句を言いながらスニーカーを壁に手を付けながら脱いでいると突然動きを止めた。

「なんでここに女物の靴があるの?まさか彼女?だったら言ってくれたら来なかったのに」

と言った。俺は慌てて

「ちがう、ちがう。一昨日から住み始めた新しい入居者だよ」

と訂正をした。

 妹はジト目を向けながら

「へんなことしてないよね?」

と言い出した。

 会ったばかりの人に変なことするわけないのに失礼な妹だ、と思いながら

「してない、してない。」

と言った。

 しかし、なぜか信用されていないのか

「ほんとにぃ?」

と言いながらリビングへ向かっていった。

 そしてリビングの扉を開けるとまたまた固まった。

 そこには昨日買った服に着替えた彼女がいた。

 妹はやがてぎこちない動きでゆっくり回れ右をすると耳元で、

「本当に新しい人?なんか思っていたより若いのだけど。なんなら私と同じくらいだよね」

と問い詰めてきた。

 まぁ、確かに高校の制服着ていたから同じくらいどころか同じなのだけどと思いつつ

「新しい入居者だよ」

「めっちゃきれいな人じゃん。というかいるならいるってちゃんと連絡してよ。もっとかわいい服着てきたのに」

と言った。

「急にお前がきたのだろ」

と言うと

「昨日連絡いれたじゃん。返信しなかったくせに」

と言うのでスマートフォンを確認すると

『明日、そっち行くからね。朝ごはんの準備よろ』

とメッセージが入っていた。

「うわ、本当だ、ってお前送ってきていんの1時じゃねーか、これは昨日とは言わない

ぞ」

「あれ、そうだっけ。ごめーん」

とまるで反省していない謝罪が返ってきた。

「昨日、寝る前までは知らなかったから朝飯用意してないからな」

というと

「ええー」

というので

「まあ、まだ食ってないから今から作るけどな」

と言いリビングに入った。そして、朝食の準備を始めていた彼女に

「おはよう。突然ですまんが紹介していいか」

と言い妹の腕をつかんで部屋に入れると

「妹のだ」

といい

「それと急に申し訳ないが朝飯もう一人前増やしてもらえるか?」

と聞いた。

 彼女は、少し驚いた顔をすると

「最近入居したです。朝食の分を増やすのですね。分かりました。ちょっと待ってくださいね」

と言いテキパキと準備を進めた。

 今日の朝食はベーコンエッグと食パンだ。ベーコンの焼ける音と香りが食欲を掻き立てる。彼女のご飯はどれもおいしいものばかりでこっそり毎回楽しみにしていた。

「ご飯、できましたよ」

という声がかかると俺は立ち上がり盛り付け作業を手伝った。そして盛りつけたお皿を食卓の上に並べると

「「いただきます」」

「いっただきまーす」

と言い、3人で食べ始めた。彼女のベーコンエッグは焼き加減、塩加減ともに最高で朝から至福の朝食となった。

 朝食を食べた後は、コーヒーや紅茶で一息つきながら妹への尋問タイムが始まった。

「急にどうしてこっち来たのだ?たしか明日は学校だろう?」

「えーっとね、昨日文化祭だったから明日は代休なのだ!それに今日、好きなバンドのライブがあるからそのついでにアニキに会いに行くかって思って夜行バスで来た」

「ライブのがあるなら前もって連絡しろよ。ったく」

「ごめーん。だって当日券あるってしっての一昨日だし、行くの決めたのも一昨日だし、許して、おにーちゃん♪」

と妹はめったに言わないことまでいい甘えてきた。

「はぁ、来たものは仕方ないしまあいいけど、いつまでいるのだ?」

「明日の最終の新幹線で帰る。旅行シーズン終わっていて安いし、お父さんから軍資金たんまりもらえたから」

と言った。高校生のくせに贅沢なと思い、うちの家の人間は妹に甘すぎるだろと思った。

「あ、そだ。夜行で来たからベッド貸して、そして2時に起こして。そしてライブ会場まで車で送って、そんで終わった頃に迎えに来て」

と、要求を一気に伝えてきた。

「はい、はいわかったよ。とりあえず寝るなら、はよ寝ろ」

といい部屋の方を指した。

 すると妹は

「やっほーい。ベッドだ、ベッド!」

と言い彼女が使っている部屋へ入っていった。

「おい、そこは」

バタン

「アニキ!」

「忘れていた。彼女が使っているのだ。しゃないからソファか俺のとこ使ってくれ」

 それを聞いた妹は

「それをさきにいえー!」

と言い回し蹴りを俺に入れ、俺の部屋へ入っていった。

「お客さん用の布団、借りるから。寝ているときに入ってきたら殺す!」

と言い部屋の鍵をかけた。

「俺、着替えられないのだけど」

と途方に暮れた。

 仕方ないと今日はおとなしく家にいるかと思い、リビングに出てテレビをつけた。

 そして、朝からたいしたことのないニュースが流れているのを見ながら時間をつぶすことにした。

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