第8話 人助け

「京を案内するって言った……!!」


ぶーぶー言う青丹達が歩いているのは都…ではなく、森の中


「奴らを信用しきった訳じゃないんでな…とりあえず離れる」


まだ何か隠しているであろう赤舌達から離れる理由が欲しかっただけ…都に今更興味などない


そうだ、無い、あいつのことも……


「……いろ……ヒーロ!!」


青丹が大声で呼ぶ


「っ…なんだよ急に」


「誰か叫んでる」


…叫ぶ?


少し耳を澄ませる


すると


「ーーーー!!!」



「……なにか…言い争ってる…か?」


確かではないが女の声がする


「行くぞヒーロ!」


「お、おい!!」


面倒事は嫌なんだが…



……



「離してください!!」


「いいじゃねぇか嬢ちゃん…おっ?この服…巫女か?」


「巫女様かぁいいなぁ」


緋彩たちが辿り着くと紅い瞳で金色の髪をした少女が男2人にからまれていた


男2人か…明らかに姿が人間じゃない…勝ち目ねぇぞ……


「やめろーー!」


「おい!馬鹿!!」


緋彩の制止も聞かず男たちの前に立ちはだかる青丹


「なんだおめぇ?」


「青丹は青丹だ!!この人困ってるだろ!」


その言葉に男たちは笑い出す


「…あのばか…」


緋彩が頭を抱える


「ガキが出てきて何かと思えば……ヒヒッ」


「おじちゃんたち忙しいんだどっか行け」


完全に相手にされていない


「あ、あの?危ないですから下がって…」


少女に心配されてるし……


「青丹は退かない!」


「どけよガキが!!」


1人の男が拳を振り上げる


「……ちっ、仕方ない…」


すぅっと息を吸い


『ヒョー、ヒョー』


と、2回


「あの声……」


「うわぁぁあ!!鵺だ!!近くに鵺がいるぞ!!」


男たちは焦った様子で山をおりていく


「ぬえ?」


「大変!山をおりましょう!」


少女も焦っていると


「大丈夫だ」


草むらから緋彩が現れる


「今のは俺が真似ただけだから」


「鳴き真似……?」


その言葉にぽかんとして


「す、凄いです!!本物かと思いました!!」


興奮気味に詰め寄ってきた


「ぬえってなんだ?」


「鵺とは獰猛な妖の事です。都の人たちは鵺の鳴き声を聴いただけで逃げていくほどですよ」


「へー」


腐っても祓い屋なら知っとけ!


「……あ!助けていただいたのに自己紹介していませんでした!私、楓と申します」


楓はぺこりと頭を下げる


「……緋彩だ」


「…青丹!」


「緋彩様と青丹様!お礼がしたいので私の勤めている神社へ来て頂けると嬉しいのですが…」


神社……?


「いや、お礼なんて……」


「お礼!行く!」


「はい!では案内します!」


……こいつら話聞かねぇな?

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