第9話 小さな神社

「京の都の端にある……ここです!」


山のなかに1本の長い階段


それを登った先にお世辞でも綺麗とは言えない神社がぽつりとあった


「あはは……最近あまり人が来ないんですよねー…あの宇迦之御魂神うかのみたま様を祀っているのですけど……」


……宇迦之御魂神ねぇ


「お稲荷さんか!……にしても建物は古いけど敷地内は綺麗だな!」


「ありがとうございます!みんなで頑張って掃除していますからねっ」


嬉しそうに胸をはる楓


こいつら気が合うみたいだな……


「あ!楓おかえり!」


「こら銀、お客様のまえよ」


楓に抱きつく銀と呼ばれた銀髪の…少年…?


「おい犬、仕事ほっぽって何して…あ!楓様おかえりなさい」


次に現れたのは箒を持った漆黒のような髪をひとつに結んだ光のない真っ黒な目の男


「犬じゃねー狼だ!この烏野郎!!」


……狼?烏?


「烏野郎じゃない鴉天狗だ」


「な、なあヒーロ……」


あの青丹が狼狽える


「ああ……こいつらも妖だ」


まずいところに来たかもな……


「森の中では言いそびれてしまいましたが私この神社の神使の狐なんです!」



「神の使いだから変化が上手いのか…」


人間と思うくらいの変化……流石だな


「いえいえ!私 狐と人との間の子どもなので変化出来ないんです……耳と尻尾がでるくらいで……」


えへへ、と言いながら獣の耳を出し触る


半妖か…


「銀と神楽は正真正銘、純粋な妖です」


ちらりとさっきの2人をみる


「オレは送り狼の銀!」


「……私は鴉天狗の神楽」


随分と人間らしいな……


普通は化けられないはずだが……



まあ、鴉天狗は置いといて


「送り狼って神の使いなのか?」


青丹が思っていることを言ったので少し驚く


「確かにオレは神の使いでは無かったけどかずら様に使いにして頂いたんだ!まあ毛色が白っぽいしそれで神の使いにしてもらえたのかもな!」


大口開けて笑っているが…


「毛色の話が本当なら大雑把すぎるだろ…!」


「…毛色だけではなれない私がそうだしな…まあ…私は白い髪で産まれたかった…」


銀を羨ましそうに見つめる神楽


「他にも神使の妖がいるんですよ!会っていきますか?会っていきますよね?」


押しが強い……


目を輝やかして尻尾振ってるし…


断りずれぇ


「会ってくぞ!」


まあ、そうなるよなー


「今いるのは……和泉いずみ!」


そう呼ばれて出てくるのは……


「楓様!!!おかえりなさい!」


少し巻いた短い白髪…紅い目…


「蛇か」


「わあ!よくお分かりになりましたね!」


とても嬉しそうにしている


「あ、ああ…妖だと思えば 雰囲気でな」


白い蛇か…神使にピッタリだな


なぜか和泉と呼ばれた男が俺を睨んでいる


…って…体が、動かないんだが?……蛇に睨まれた蛙か俺は


「楓様……この変な男は誰ですか?!」


「変って言うな!確かにヒーロは変だけど!」


悪口か!?


「こら!睨まないの 緋彩様が困っているわ!」


「しゅるるる…」


睨むのをやめたおかげで動けるようになったが……和泉は納得のいってない顔だ…


「すみません…いつもはこんな事しないんですけど…」


「……まあ…大体理由はわかるが…」


ふと、階段の方をみる


下からは分からなかったがここからなら都の景色がよく見える


「……変わったな」


空からでもわかったが 人間が妖に怯えながら暮らすなんてな…


「緋彩様も京の出身なのですか?」


「ああ、生まれは違うが…育ちはここで……」


緋彩は悲しげな顔をする


「あ、青丹様はどちらのお生まれですか?」


空気を察した楓が青丹に話を振る


「……うーーん、青丹捨て子だからわからん!……育ちは東の方の山奥!」


「あらぁ……」


どっちも何かを抱えていらっしゃるご様子ぅ


「あー、えーっと…ここの神社はですね 1か月前までは参拝者の方が多くて陰陽師の方も出入りしていました!」


なんの話をしているの私っ!これだからお馬鹿って言われるのよ!


「……陰陽師ぃ?」


「青丹は祓い屋!」


祓い屋……?!


「…え…まだ…存在していたんですか!!?もう全滅したのだと思っていました…!」


「全滅した?どういうことだ?」


こ、こんな面白くない話に食いつくなんて…やっぱり同業者がきになるの……かな?


「それがですね……」

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