第5話 牛鬼

「もうすぐ着くぜェ」


「これはどこに向かってるんだ?青丹わからん」


「アタシ達が元々持ってた山に行く」


そうそう


「その近くに牛鬼ぎゅうきが1匹根城を作ってまして困っているんですよ……彼ら凶暴ですし私たちじゃ太刀打ち出来ないんです」


牛鬼か


「……消せと?」


「そこまでは言ってない…ただボク達の邪魔にならない程度に遠ざけて欲しい…」


じゃないと余計な争いがおきる



「…青丹…話し合いは出来そうか」


「そう言うの青丹無理ってジジイが言ってた!!」


……は?


何故か俺に視線が集まる


「え、俺?」



「じゃあ青丹達いい知らせ待ってるぞ」



「……え」


_____




「なんで1番体力の無い俺が……」


ガサガサと木々の間を進む


「にしても牛鬼どこにいるんだ?この辺住むには不便すぎ…」


ずるっ


「あ、」


木の根に足を取られ傾斜をずり落ちる


まずい…擦り傷じゃすまないな……


「何やってる死ぬぞ」


落ちる途中の木の上にいた黒い着物をきた人に襟を掴まれ引き上げられる


「お前こんな所で何やってる?」


「ゲホッ…苦し…」


「おー悪い」


ポイッと平坦な所に投げられる


「お前……誰だ?」


その言葉を聞くとニタァと笑う


「……俺か?俺は牛鬼だ。さァ怯えろ!!」


……こいつが牛鬼…人の姿をしているな…


「お、俺は緋彩、牛鬼…助かったありがと……」


「おおっと!!礼を言うな!俺死んじゃうから」


死ぬ…?なんでだ…?


「と言うか あれはたまたま通りかかっただけであって助けたかった訳じゃ無いぞ!!」


言い訳してるし…


「それより、だ。俺を探してたようだがなんかようか?」


その言い方…だいぶ前から見てたのかよ……


「まあ…話が通じそうなやつで良かった」


「そう俺は話が通じる牛鬼」


何故か自慢げだが少ししてはっとする


「べ、別に人間に興味があるわけではないぞ!」


「それで話なんだが」


「……聞こう」


赤舌が困っていることを話した


「出ていけってことか……無理だな」


「なんでだ?」


「だって人間から離れるならここくらいしかねーんだもん」


……は?鬼ってやつは人を喰うためにいるんじゃ


「人間見てると手を貸さずにはいられねぇんだよ」


「……」


コイツまさか


「…良い奴……?」


「……なに?」


急に牛鬼の目の色が変わる


まずい……怒らせたか?


少し身構える


「なぁーに言ってんだよぉ!良い奴って……へへ」


どこか嬉しそうに笑っている


「はっ!えっと…まあ、なんだ…山を変えるにはどこか他のいい場所をよこせ……と、あの5人組に言っといてくれ、それで考えてやるってな」


……?


「5人組?あいつら4人だろ」


その言葉に少しキョトンとしたがすぐに納得した


「ああ、あいつやっぱり抜けたのか…」


あいつ……抜けた?


「知らずに仕事受けたのか緋彩ー!あいつら訳あり女衆だぞー?!」


名前呼びで肩を組んでくる


「ちょ、ちょっとまて!色々と情報がありすぎて……って言うか急に馴れ馴れしいな…」



「とにかく1つ言えることはあいつら4人は人間を恨んでる…気をつけろよ」


俺は恨みなんて全くないけどなー


「……赤舌…」


まさか俺を牛鬼に殺させるためにわざと送り込んだのか…?


ということは…


「青丹が人質か……!」


___



「ヒーロ遅いな」



「…………そうだろうなァ」


ギラッ


「え?」

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