第9話 な

 その帰り道も、彼女は何度も迫ってきた。


 いつも中途半端に途切れるそれは、まるで僕の限界ギリギリまで焦らしているかのようだ。


 そして彼女の家の前に着くと、彼女は2日前と同じ口調でこう言った。


「今日まで誰もいないの」


 あの時は怖くて逃げ出したが、今の僕は餌を目の前にして待てと言われ続けた野犬と一緒だ。


「家に来る?」


 彼女の質問に、僕はYESともNOとも答えないまま、押し入るように玄関の扉を開いた。



 そのまま彼女の部屋に入り、ベッドに彼女を押し倒すと、その上に覆い被さるような体勢になる。


 これから行われることを理解している彼女は、自らスカートの内側にあった最後の防御を脱ぎ捨て、その奥を露わにする。


「今日、3日目よね」


 彼女のその一言で理性が吹っ飛んだ僕は、接吻で限界まで高まっていた彼女への感情の全てを、そこへ力任せに注ぎ込んだのだった。

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