第7話 花
きっと、ここまで勇気が出せないのは父親のせいだ。
心の中でそう呟いた。彼は3ヶ月前、少女に性的暴行を加えたとして逮捕されていた。
幸いにもその事で僕がいじめられたりすることは無かった。皆、僕はあいつのようにはならないだろうと励ましてくれた。
だが、いざ自分が父親と似た立場になると、彼の顔が浮かんできてしまう。
途端に彼女が恐ろしく感じてしまうのだ。
「帰ろう」
僕もそう呟いて、彼女と並んで帰路に着いた。
帰ると言ったが、彼女は帰路の途中で何度も僕を人気のない道に連れていった。
そしてその度に先程と同じような熱い接吻を交わし、頬を高揚させながら「帰りましょう」と言うのだ。
10分ほどで家に着くはずの道が、気がつくと2往復するのと同じ程かかっていた。
昨日のように彼女を家の前まで送った僕は、「また明日」と手を振ってその場を離れる。だが、すぐに後ろから彼女の声が飛んできた。
「明日が最後ね」
夕日の悪戯だろう。昨日見た時よりも綺麗に見えたその表情に、僕はまた腹の奥で揺れる何かを感じた。
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