第3話 は

 彼女の家は、意外にも僕のと近かった。


 ひとつ車道を挟んだ向こう側、徒歩5分程度のところだ。興味が無いことは知ろうとしない。人間はそういうもんなんだなと、改めて思い知った。


 家の前まで一緒に歩くと、彼女はこう言う。


「3日間家に誰もいないの」


 それがどうかしたのかと聞くと、彼女は「私が1人きりだってことよ」と呟いた。


 年頃の彼女の口から発せられた言葉が一体どう言う意味なのか、同じく年頃の僕にはすぐに分かった。


 分かったものの、その先に進む勇気を母親の腹の中に置いてきたようで、心情として手持ち無沙汰だった。


「僕の家には母親がいる」


 そう答えてしまってから、しまったと思った。


「ならいい」


 彼女は苦手な物を夕食に出されたような表情をして、家の中へと入ってしまった。


 もし、あそこで了解の意を示していたならば、僕は彼女のあの制服の内側を覗くことが出来たのだろうか。


 腹の裏で何かが揺れるのを感じながら、僕は我が家に向けて身を翻した。

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