第5話  これからの方向性

「で、お前新聞部どうなんだよ」

「どうってなんだよ、あ、ウィンナーもらうぞ」

昼休み。それは学生にとって貴重な交流時間であり、憩いの時間だ。

「いや、うちの新聞部ってちょっとしたいわくつきだぞ?」

「なら、もう少し早くいってもらいたかったな、お、卵焼きも

 もらうぞ、うん、うまいな」

入学当初は弁当を誰と食べるか、いそいそしかったクラスも今や

すっかり慣れグループも固まってきている。

「先輩に聞いた話では入りたくても入部届が受理されないんだと」

「…俺が入ったことで信憑性が薄れたな、ミートボールもうまいな」

まぁ、ゴールデンウィーク直前の今日は比較的騒がしいほうか。

「お前どんだけ俺の弁当食べるんだよっ!!」

「弁当は残すなって親に言われたからな」

「…人のものはとるなとは言われなかったのかよ」

「ごちそうさまでした」

そんな流れにうまく乗り切れずにボッチ飯の覚悟を決めていた時に

話しかけてきたのが今白米を書き込んでる岩戸だ。

きれいな五厘狩りの頭はおもわずこずきたくなる。

「まぁ、あくまで噂だぜ。それより、お前美女に囲まれてるせいか 

 顔色よくなったな」

「毎日校内走らされてるからな」

おかげで毎日ぐっすりだ。

「いいなぁ、走るだけで美女とお茶できるとか」

「お前には野球部がお似合いだよ、ていうかうちの部活の先輩方って

 そんなに有名なのか?」

「大野先輩と小野先輩だろ?そりゃな、入学以来ずっと二人で定期試験の

 一位と二位独占してんだぜ?」

「…あの人達ってそんなにハイスペックなのかよ」

大野いろはと小野一二三。入部したての頃、苗字呼びが聞き取りずらい

という理由で名前に先輩をつけて呼んでいるが、恐れ多いな。

「なおかつ、クッソ美人。いいなぁ」

「まぁ、悪くはないな」

例のテスト以降それといった業務はない。

今月号ももう作り終えてしまっているらしく、来月から

教えてもらう予定だ。

ドリンクもあり自分のスペースもありなおかつ騒がしくない。

読書環境でいったら図書室にも引けを取らないだろう。

「んじゃ、俺野球部の準備行ってくるわ」

「おう、行ってら」

教室を出る彼を見届け次の授業の準備をする。

岩戸以外に話す奴のいない教室は居ずらく、そっと席を立つ。

自販機へと向う途中、中学の頃とは違い居心地のいい環境に

自然と笑みがこぼれた。

「廊下って面白いんですか?」

急に話しかけられ驚くもすぐに臨戦態勢に切り替える。

「…なんか用か、鈴原」

鈴原元子。俺でも知っている学年の問題児。というのも

入学してそうそう同級生を泣かせ(男女含む)、先生を困らせ、学年中に

「こいつはやばい」と認知させた質問製造機。

俺も同級生の女の子を泣かせている場面を見たことがある。確か吹奏楽部の子だったか?ちょっとしたパニックみたいになっていた。

どんなに質問をしてもただ、純粋な顔で違う難問を投げかけてくる悪意のない鬼。

「どうやら、私のことは知っているみたいですね。なら自己紹介が

 省けて何よりです、市原美幸さん」

「で、何の用だよ」

「単刀直入に言います、私を新聞部に入れてください」







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俺と青春の方向性の違い 白木雪 @SIRAKIYUKI

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