第4話 俺と青春の方向性の違い

唐突にはなってしまった一言。ただ、それは俺の本音だった。

「慣れろって言ったってそうできていたらこんな切れ端に書いて相談するわけない

 じゃないですか!」

思わず熱くなる。新入生のくせにと思われるだろうか?恐ろしくて先輩方の顔が見えない。

昔味わった意見を口に出す恐怖が押し寄せる。

「じゃぁ、君はどうするのが最適だと思うんだい?」

いろは先輩の口調はいつもと同じなのに今の状況のせいか、冷たく聞こえた。

感情が先走って思考が追い付いていない。足元をじっと見つめても

気まずい雰囲気は流れてくれない。

まずい、どうしよう。完全にけんか腰だったのが今は及び腰だ。

様子を伺おうとそっと前を向くと、一二三先輩がなにやら笑いを堪えている。

「…一二三先輩?どうかしたんですか?」

「ぷはぁ、もう耐えられんわぁ!!!」

なにやら爆笑している。考えなしに突っ走った俺がそんなに面白かったのか?

「ごめんごめん、少しムキになってしまったようだ」

いろは先輩も顔をほころばせている。

「ごめんねぇ、市原君~、ちょっとしたテストだったの~」

え、テスト?????????

「先輩にもきちんと意見できるか、また、真っ当な価値観を持っているかのね」

「じゃ、じゃああの悩みは嘘だったんですか?」

「もちろん、一二三の仕込みだよ」

えへへへと笑う一二三先輩。その笑顔にようやく息が抜ける

「はぁぁぁぁ、こっわすぎるでしょ!!!」

少し涙目になりながら、背もたれによしかかる。

「奥苑先輩も知って…ってあれ?」

「冗談だったんですか!!!!」

「知らなかったのか、あれ一二三、伝えてなかったのか!」

「いっけなーい」

頭をコツーンとする一二三先輩、悔しいが似合っている。

「いろはせんぱぁぁぁぁぁいいいこわかったですよおおぉぉ」

「悪かったとは思うがだ、抱き着くなぁっておいどさくさに紛れてさわるなあ」

そっと目をそらすと一二三先輩と目が合った。

「あ、そうだそうだ、市原君のマグカップ買っといたんだぁ、はいどうぞ」

そういいながら手渡してきたのは忠犬ハチ公のマグカップだ。

「あの、これにはどういった意味が?」

「見たまんまだよ!!!!」

「奥苑先輩はどこをどう見たんですか!!」

「前日にNARU●Oを一気見したのさ!」

「赤丸じゃねぇか、いや、俺じゃないじゃないですか」

ついでにハチ公でもない。

「ともかく、マグカップはわが新聞部の会員証だと思ってくれ」

「はぁ、わかりました」

「割ったら出入り禁止になるからねぇ~」

「せめてセラミック製のにしてほしかったですね!」

「というわけだ、市原君、大切にしたまえ」

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