第3話 方向性
「どうやったら親友と絶交できますか」
思わず息が詰まる。
しかし動揺しているのは俺だけだったようで先輩方はホワイトボードやら
パソコンやらなにやら準備を始めている。
「こ、こんな質問ばっか取り扱うんですか?」
思っていたのと違う、なんかもっとこうやんわりとした質問にやんわりと答える
やんわりとした部活だと思っていた。
「思いっきり面食らったという顔をしてるね、市原君」
どこか懐かしそうな笑みを浮かべているのはいろは先輩だ、特徴的な
ポニーテールを揺らしてパソコンを立ち上げている。
「まぁ、そういっても通過儀礼のようなものだしねえ~
いろはもかなりビビっていたじゃない」
いろは先輩とは対照にのんびりとした口調でせっせとホワイトボードを
用意する一二三先輩。それをボーっと眺める俺。
「俺も準備なんか手伝いますか?」
「お、立ち直りが早いじゃないか」
「まだ衝撃が届いてないだけですよ」
苦笑いを浮かべながらそう返す。
長机を片付け小さな机を出し、周りに座る。
いろは先輩がホワイトボードの前に立ち取り仕切る。
「さて、今週のお悩み相談を始めようか。いつも通り奥苑は書記かつ司会で、
私と一二三と市原君でアイデアを出していこう」
「はい」
「まかせといて~」
取り扱う悩みゆえに不安はあったがそれっぽい雰囲気に若干のわくわくが
隠しきれないでいた。
「そもそもこれ悩む必要あるのか?」
そう切り出したのはいろは先輩だ。
「切っても切っても切れぬ縁なんだから親友なんだろう?
ならば切ろうとするよりも慣れるほうが効率がいいのでは
ないだろうか?」
いや、元も子ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!
待てよ、普段からこんな感じなのか?
叫びたい衝動を抑え周りの様子を伺う。
…いや、みんな黙っちゃってますやん。
「異論がないならこれで行こう」
なにやら、すっきりした顔でそう告げるいろは先輩。
確かにそうかもしれないけど、何かが違う。
相談者は何でも打ち上げられる間柄の親友と不仲になりこうして相談してきたのだ。
こう返すのは何かが欠けている。そう、配慮だ。
「先輩、反論いいですか」
「ん、どうした?」
初めての本格的な活動で先輩に意見するのは腰が引けるが、言わなければならない。
そんな気がした。
「先輩って親しい友達いたことありますか?」
「「「えt」」」
完全に言葉を間違えた気がする。
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