第2話 校内には意外と悩みが落ちている

春先の木漏れ日が優しく校内に差し込む。

それは植物だけではなく生徒までも活気づかせるらしい。

一階生徒玄関前はストレッチをする集団やこれからグラウンドに向かうであろう野球部やらで

賑わっている。

「で、奥苑先輩どこに向かうんですか?」

慣れた足取りで人込みを進む先輩の背中に話しかける。

「ん、それはついてきてからのお楽しみ~」

そのまま人込みを抜け体育館へとたどり着いた。

扉越しでもわかる熱気と掛け声は凄まじい。

重たげな扉を開けると色々な部活が活動を始めていた。

入学式や新入生オリエンテーションの時は広く感じた体育館が狭く感じる。

「さぁて、目安箱を回収するぞ~」

「へ?そんなものありましたっけ」

「ふっふっ、いっちー、あれを見ろ!!]

ゆびを刺された方向はステージだった。

そこには、明らかに異質な七色の箱が設置されていた。

「いや、趣味悪っ!なんでレインボーなんですか!?」

「目に優しいかなあと思って」

「いや、優しくないでしょ、明らかに毒キノコの色でしょ!」

椅子に置かれているそれにうかつに近づこうとは思わないだろう。

そう思っていると三人の女子が恐る恐るその箱に近づき手紙らしきものを入れた。

「ちゃんと、役目を果たしているだと…」

「一種の度胸試しみたいなもんよ、さっ、回収するよ」

見た目とは裏腹に意外としっかりしているらしくそれなりに重たい。

三階まで運んだ時には息が少し上がっていた。

部室には相も変わらず本を読む先輩方がいる。

レインボー目安箱をを一目見ると二人とも本を置いて机の上を片付け始めた。

「市原君、目安箱を置いておくれ」

二つ組み合わせた長机の真ん中にどんと目安箱を置く。

「うちの新聞部の主な活動はね、目安箱のお悩み相談を受けること

 なんだよ、えっと、あるかなぁ」

奥苑先輩が何やら目安箱の中身を探っている。

「たいていは恋愛相談とか、部活の愚痴とかが多いんだけど今回はあるかなぁ」

「その返信を毎月の新聞でやるってことですか?」

「そそ、お、あっちゃったかぁ」

なにやら、一つの手紙を取り出す。

「うあぁ、また難題そうだなぁ、ほれ、見てみ」

手渡されたのはノート切れ端のようなものだった。

そこには、きれいな字でこう書かれていた。



     「どうやったら親友と絶交できますか」

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