第3話 「白黒星」

スフィアの撃墜により、ファーガス軍は甚大な被害を被った。

そしてそのまま戦況は一変すること無く一夜を迎える。

それでも厳重に見張りは欠かさない。


「レオ、お前は夜目が利くだろ」

「まあ...夜目が利くとは言っても、こうやって見張りをして敵の位置を伝えるぐらいしか今はできないよ」

サルトと見張りをするのは26歳のレオ。

内向的な性格ではあるが、夜目が利き、視覚嗅覚聴覚が非常に優れている。


しかし先程の特攻により片足を失い、全身とはいかないものの、軽い火傷を負っている。

治療を放棄し、自主的に見張りへと志願したのだ。


「全く...不屈の精神だな」

「そんなことないよ」

「...お前ほど謙虚なやつはみたことねぇ」

「はは...それほどかな?」

「そういうとこだぞ」


仲間が居ることが、サルトにとって辛いことでもある。

しかしその辛いことが、自分にとっての安らぎともなっているのだ。


「ん...?」

サルトが銃を構える。

レオが望遠鏡で500mほど先を覗き込んだ。

「あれは...」

「どうした?」


「敵が進軍してk」

一発の銃弾がレオの顔を撃ち抜いた。

倒れ込み、出血は止まらない。


息をせず、ピクリとも動かなくなってしまった

「!?レオ!?おい!」

「なんで...!?進軍なんかできるはず...」


「おいっ!見張り!さっきの銃声は何だ!?」

上官が大声でサルトを呼んだ。


「じょ、上官...」

「どうしたんだ!?」

「て、敵襲です・・・!前方500m先から...恐らく...7000はいるかと...」

「直ぐに戦闘準備に取りかかれ!!」


前線も先程の銃声に気付き、戦闘態勢に入るが、満身創痍での戦いになることに変わりはないであろう。

(恐らく...前線は直ぐに崩壊する...)


スフィアも先程飛行したばかりだ。

当然だがコストが高いため、量産型ではない。


「この防衛線を防ぐのは、前線に居る5000ほどの兵と、我々100足らずの兵士...」

「おい!サルト!まだ息があるなら降りてこい!」

「アルス!」

すぐに視察塔から降りていく。


「・・・やるしかない」

「お互い、覚悟を決めろってことだ」

「...ああ」


「しかし...何故あんなにも動けるんだ...?あっちにだって負傷兵は多くいるはず...7000もの軍隊を連れて動くなんて不可能に近いはずだ...」

「それこそ不屈の闘志ってやつだろう。国を守るためには...命だって惜しくはないんだ。あいつらも...そして俺らもな」

アルスは妙に落ち着いていた。

このような最悪の事態を頭に入れていたかのように。


――前線――

「よっしゃ...撃て!」

銃声がただ只管に闇夜に木霊する。


松明などで明るくすれば位置がバレ、撃ち込まれてしまう。

つまりは、真っ暗闇の中で戦わざるを得なくなったのだ。


「なんだあれ...?」

キャタピラのようなもので前進してくる鉄の塊が僅かに見えた。

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