第19話 はじめての『魔法』

 前回までのあらすじ!!

 オレの入力ミス(主に静音さんの指示ミス)により、チートメニューの『一時停止Pose』の影響で、このRPGの世界が静止フリーズしてしまったわけなのだが……、



「と、とりあえず『緑色のAボタン』を押して『解除キャンセル』っと」


 チュンチュン♪ チュンチュン♪ 空中で静止していた鳥達が一斉に朝チュンを強請るよう激しく動き出した。ほっ、どうやら世界が再び動き出したようだ。


「き、気をつけてくださいませアナタ様! この世には触れてはいけないボタンもございますので……」

「だ、だったらそんな危険なチートコントローラーをオレに預けないでよねっ!?」


 武器は武器でも、このコントローラーは究極機械武器オメカウェポンくらい危なすぎんだろ!!


「まぁ、ある意味この世界を手にした気分に浸れますよね♪」

「あ、うん……というよりも、完全にこの世界そのもの・・・・』だよね? だって『このゲームを終了する』とかヤバなもんまであるんだもん」

「と・に・か・く、です! まずは気を取り直して、『黄色のYボタン』を押して『メニュー』を開き『相手の情報を見る』を選択してくださいませ!」


 オレは言われるがまま、今度こそ間違わぬようちゃんと『黄色のYボタン』を押すことにした。

 メニュー一覧の中には、『たたかう』『にげる』『作戦の変更』『仲間を変える』『家に帰る』『情報』『装備』『道具』など、次々に様々なコマンドがオレの目の前の空中に表示される。オレはいくつかある中の『情報』を選び、またその中から『相手の情報を見る』を選択してみる。

 するとアルフレッド敵役のおっさんの目の前に、青く輝く光の輪が回転しながら現われ銃のスコープのように十文字に線が入り、その中心は丸く穴が開いていたのだ。


「これはいわゆる『ライブラ《情報探査》』と言う簡易魔法の一種でございます。この魔法の大きな特徴は、『相手のレベル』『弱点』『得意な事』また『体力HPゲージ』などが調べられます。ちなみにですが『ライブラ』は戦闘時だけでなく、非戦闘時日常時つまりそこらにある『モノ』や、また『味方』にまで使えますので、困ったときや分からないモノを調べたい、味方の詳細ステータスや敵から攻撃を受けた異常状態などの情報が知りたい時には是非活用してくださいね♪」

「へぇ~。なんか魔法とか出てくるとマジでRPGの世界って感じになるよね!」


『ライブラ』はただ相手の情報を見るだけの簡易魔法なのだが、オレにとっては魔法を使うという行為そのものに興奮していたのだ。……別に変な性癖があるわけではないことを一応ここに記す(笑)


「まぁそうですね。言うなれば今のアナタ様は……色んな意味で童貞魔法使いってことですよね(笑)」

「あ、うん……。何かごめんね、童貞でさ」

(な、なんだろう、静音さんにさり気無く童貞を馬鹿にされたディスられた感と、あと草やされた感がヒシヒシと伝わってくるのだが……気のせいか?)

「……まだ終わんねぇべか?」


 オレが少し待ってくれ! っと言った言葉を律儀に守ってる敵役のおっさんのその言葉にはっ! っとしてしまう。ある意味で帽子チックに。


「っとと、今は戦闘中だったよな! まずはチュートリアルに集中しないとな……」

「ちなみになんですが『ライブラ』は使い続けると経験値としてレベルが上がり、より高度な『情報』が得られるようになります。また他の魔法を使う時でも、その魔法を使えば使うほど経験値が増え、魔法Lvが上ることにより戦闘時や日常時でも有利に物語を進めることができますので、これを覚えておくと後々便利になりますよ♪」

(やべっ、19話目にして作者が真剣マジでRPGっぽいこと書き始めやがった。これからもこの調子で頼むぞおい!)


「そうだよね静音さん! せっかく初めて『魔法』を使ったんだからちゃんと活用しないとねっ!! さてと、おっさんの情報は……っと」

 オレはアルフレッド敵役のおっさんの目の前に展開している『ライブラ』に注目する。

「…………んんっ!? ね、ねぇ静音さん。この『情報』には間違いはないんだよね?」


 オレはその知り得た情報をにわかには信じられなかった。


「ええ、もちろんです。いくらレベル1のライブラ先生とは言え、表示されてる情報はちゃんと正確ですよ」

「あー。この情報は『正確」なんだぁ…………あはははっ」


 それが何か? っと可愛らしく首を傾げながら静音さん。オレは知りえた情報を誤魔化すように笑う。決して気が触れたせいではないからな。だってさ、読者のみんなもちょっくら情報これを見てくれよ!


『名前:アルフレッド・マークス3世  性別:おっさん 年齢:15歳 Lv:98 HP:300万以上 職業:農夫  弱点:お金がないこと・童貞 得意なこと:お花を育てること ただいまの総資産0、いやむしろマイナス・・・・……etc』


「こんなんツッコミどころが満載だよNE☆。正直もう何からツッコミャいいのか、わからんさね! (←どこの方言?)性別表記もアレだし、しかもオレたちよりも年下だしさ、それにレベルに至ってはほぼカウント・ストップカンストだし、HPもヤバイし、しかも何より重要情報である弱点が『お金がないこと+童貞』とか、一体この情報が何の役に立つって言うんだよ!? あと得意なことが『お花を育てること』とか容姿のわりに可愛すぎるんですけどっ!(怒)」


 オレは全身全霊を持って総ツッコミをした。それはもはや日本の国内総ツッコミ数GDTに相当するかもしれない。


「(ってかさ、このレベルとHPは『ラスボス』クラスだよね? そんなラスボスがチュートリアルの初っ端に出てきていいわけなの? こっちとらレベル1なんだぜ。だから今一度ゲームバランスというものをだな、イチから勉強しやがれってんだっ!)」


 ……果たしてオレは誰に対して熱く語ってるんだろうか?



 常に国内総ツッコミ数GDTを増やしつつ、第20話へとつづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る