第17話 チュートリアル編:その2『はじめての戦闘3』

 前回までのあらすじ!!

 最近やや下ネタに寄りつつあるこの物語を進めるべく、オレたちは家の外に出て『はじめての戦闘』とやらを繰り広げようとするのだが……



「…………」

「…………」


 な、なんだろうか……この両者沈黙は? 家の中ではわさわさしていた(=騒ぐこと)オレ達&家主こと農夫のおっさんだったのだが、外に出た途端なんともいえない沈黙というか雰囲気で誰も言葉を発しようとしなかった。


「オラ……一体なにしてんだべ」


 うんうん。まったくもってそのとおり! 無益な争いはやめるべきだよね♪ それにこっちは紛いなりにも『勇者ご一行様』だしな! ここは平和的解決の話合いがモアベターだよ。

 家に出るまでの間、少しの時間を置いたことでお互いに気ががれ冷静になれたのだろう。このままなら誤解をき、説得すればどうにか戦わずに済むかもしれ……


「いえ、それでは困りますよ! あなたは貧民階級の分際で勝手に家に押し入られただけでなく、施錠されていたドアを壊された挙句に家の中をメチャクチャにされ、食べ物や備品・金目のモノを強奪され、その上で小銭ジャンプまでさせられたのですよ! それも名もなき民『村人D』にですよ! 本当にこのままでよろしいのですか! あなたは後悔なさらないのですかっ!! あと貴方はチュートリアル的な役割なのですから、ちゃんとその果たしてくださいな!」


 長々と静音さんは目の前にいる農夫のおっさんに説教を始めていた。もはやそれが『説教』なのか、ただ『ディスり』たいだけなのかわからなかった。まぁたぶん後者だろうけどな。

 ……ってかオレの設定が村人Cから村人Dへと、華麗なる降格されてるのは何故だろうね? あと静音さん、アンタも自分のした犯罪ことをオレに擦り付けないでくれっ!!


「静音さん! お願いだからこれ以上この家主のオジサンをあおらないでくれよ!!」


 オレは静音さんにこれ以上事を荒立てないよう懇願するのだった。


「そうだべ! 僧侶様のありがたいご高説でオラ目が覚めたべさ!!」


 だがしかし、時すでに遅しのようだ。


『僧侶:静音の説得により、アルフレッド・マークス3世は本来の目的を思い出したようだ!』

『アルフレッド・マークス3世のテンションがMAXとなり、殺気やるき満々になりましたとさ♪』


「覚悟すんべ! この『盗人E』め!!」

「わー!? やっぱりこんな展開なのかーい!?」


 そして何故だかオレの役割設定名アルファベット表記がどんどん落ちているのは、もはや気のせいではないぞ! そのうえ敵役の農夫のおっさんはオレだけが標的のようだし。もはや憂鬱ながらに『目標を真ん中センターにいるオレに入れてスイッチ』状態である。これはあまりにも、あまりにも理不尽すぎるこの状況である。「どう打開すればいいのか!?」とオレが思ったそのとき、



「ふむ。そろそろ飽きてきたし、物語を進めるには私達勇者一行も参加せねばならないな! みんな各々自分の武器をとり、戦闘態勢になれ!!」


 ようやく天音が自分の設定・役割を思い出したらしく、この物語の『勇者』として初めての号令をかけ、どうやらオレを援護してくれるようだ。


「お姉様……わかりましたわ!」

「やれやれです。まったく仕方ないですね」


 葵ちゃんも、また意外なことに静音さんまでも参戦してくれるようだ。むしろオレとしては静音さん自体が1番の敵という認識をしていた。


「天音に葵ちゃん! そして……静音さん! みんなみんな、ありがとうっ!!」


 オレは17話目にして初めて『仲間』を得られたようだ。ただそれだけの事なのに目がうるうるとしてしまい、なんだか泣きそうになってしまう。

 まぁ本当の原因は主にコイツら(主にクソメイド)で、オレは完全に巻き込まれただけなんだけどな!


「(バサッ)さあ! どこからでもかかってこい!」

「(ピッピッ!)ワタクシも準備万端ですわ!」

「(ダンッ!)アナタ様……この貸しは高くつきますからね!!」

「(すちゃ)オラも・・・準備できたべさ!」


 天音は銀行の帯がついたままの万札の束を両手に持ちながら、葵ちゃんは右手にハンディカメラを装着し、静音さんは右手にモーニングスターを装備すると地面に叩きつけ、そして最後に農夫のおっさんももピッチフォークを構え直した。


「ってか天音は何で札束なの!? 成金セレブなの!? その腰に携えているいかにも・・・・勇者が持っていそうな、伝説っぽい武器『剣』は使わないの!? あと葵ちゃんのハンディカメラは武器だったのかよ!? 確か武道家って設定・・だったよね!? ならカメラじゃなくて『素手』なんじゃ!? そして静音さん! 僧侶なのにあんたが1番物騒なんだよ! あと敵のおっさんも! あんたはあんたで、何ちゃっかりオレ達の仲間グループみたいな感じに混じってるんだYo!?」


 もう周りが完全無欠ボケ役ばかりで、この物語唯一のツッコミ役のオレは忙しすぎる状況である。そこでオレはある重要なことに気づいたのだ。


「あ、あれっ!? みんな(敵含む)は武器あるのに、オレには武器はないわけ???」


 他の仲間達はいつの間にか各々勝手に武器が出現しそれを装備したのだが、肝心のオレの武器は一向に出てこなかったのだ。

 もしかして昔のアニメのように叫ばないと出てこないのかもしれない。


「オレの武器よ! 出てこーいっ!!」


 そう金色に輝くボールタマタマ集めみたく、思いっきり空に向かって叫んだのだが……


 しーん。


 うん、一切の反応がないね! どうやら違うらしいぞコノヤロー♪


「き、キミ……大丈夫なのか?」


 オレがいきなり叫んだことで天音には本気で心配され、


「お兄様……そんな!!」


 葵ちゃんには頭がおかしいヤツと悲しそうになげかれ、


「アナタ様、何を中三・・みたく叫んでいるのですか? この童貞風情がっ!!」


 静音さんには中二から中三へと昇格された挙句に童貞をディスられ、


「おめぇさ、頭がかわいそうなヤツだったんだな」


 あろうことか、敵のおっさんにすら同情される始末。


「…………」

(何コイツらの連携は? もしかして事前に打ち合わせとかしてんのか!?)



 主人公が武器を持たないまま、お話は第18話へとつづく

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