第16話 チュートリアル編:その2『はじめての戦闘2』

 前回までのあらすじ!!

 農夫ことアルフレッド・マークス3世に「一緒にイこうぜ♪」などと、やや陽気にサムズアップいいね♪されるのをなんとか避けつつ現状に至るわけなのだが……



「はぁはぁ……はぁはぁ……だ、打開策が見つからん……」


 第15話前話から攻撃を避け続けたせいか、オレもそろそろ体力的に避けるのも厳しくなり、肩で息をするのがやっとである。だが、それは農夫のおっさんも同じのようだった。


「はぁはぁ♪」

「…………」


 ……ごめんやっぱ訂正。ヤツはオレとは違う意味合いで息をはぁはぁしているみたいだわ。まるで絶頂を迎えた時のようなその繰り返し! だがそれがイイ!!(笑)

 もう文の説明も適当になってきたぞ。前話のをそのまま引用しやがってるしなっ!! そうツッコミたいが、その体力もなくなりつつあった。


「(はぁはぁ)ま、マズイ、このままだと作品が本当にボーイズ・ラブBLモノに早代わりしちまうぞ。そ、それだけは避けねばならぬっ! 主にオレの貞操的な問題でな!!」


 ってかこうゆう時にこそ選択肢を導入すべきじゃないのか!? いつもなら自分勝手に挿入されるはずの選択肢が来ないことにオレは焦っていた。


「あっ、選択肢さんなら先ほど家出しましたよ♪」

「だから乱入してこないのか!? そもそも選択肢の家出ってなんだYo!? 誰の許可を得て家出しやがったんだ選択肢さんは!! あとついでに静音さん……。一応そこは地の文なんだからを勝手に読まないようにな!」


 静音さんにそうツッコミつつも、ヤツの次の攻撃をどう避けるべきか考えあぐねていた。


「(はぁはぁ)そろそろ、終わりにすんべ……あんまりしつこい男は嫌われるだがん、なっ!!」


 農夫のおっさんはペッペッ……と唾手だしゅ(手にツバをつける事)し、武器であるピッチフォークを手から落ちないようしっかりと両手で持ち直し、いつでもオレに攻撃できるよう中腰になり機会をうかがっている。


「ま、マジで怖すぎんだけど……」


 もはや表記のピッチ・・・フォークがビッチ・・・フォークに見えてしまうほど、色んな意味で恐れおののいていた。


「(……今更だけどさ、何で前話からちょいちょい下ネタが入ってきてんだ?)」


 そんな余計なことを考えているとジリッ、ジリッ……っと農夫のおっさんがオレとの距離を少しずつ縮めてきている。


「(ま、まずい! このままだと相手の攻撃範囲射程に入ってしまうぞ!? 今にもケフィア的な白いモノ飛ばしてきても何ら不思議じゃないぞ!?)」


 な、何か打開策はないか!? と家の中を見回すが……ただただ狭く、ヤツが暴れたせいで主だったモノが床やらなんやらに散乱しているだけだった。


「(またオレは死んじまうのか!?」


 と諦めかけ両目を強く瞑ったまさにそのとき、


「二人とも! そのへんで終わったらどうなのだ? (正直もう見飽きたしな)」


 勇者である天音がオレたち(主に農夫)に『停戦』の呼びかけをしてその場に乱入してきた。あと何かボソリッと小声で聞こえたのは気のせいだよな?


「お姉様の仰るとおりですわよ二人とも! 喧嘩はよくありませんわねっ!! (そろそろ食べ物もなくなりましたし……)」


 ……どうやら葵ちゃんは食べ終わったようだ。オレの分は残してくれなかったのね。

 だが、二人の説得にもかかわらずアルフレッド農夫の怒りは収まらない。


「んだども、オラの家さメチャクチャにされた挙句、食べ物も全部食べられ、金目のモノも全部持ってかれたんだぞ! 生きて返すわけにはいかねぇべさ!!」


 そう言われハッ! としたオレは家の中を見回してみる。


「あ~、うん。来た時よりも確実に家の中の備品が少なくなっているね」


 っとそんなことを思ってると、ふとただいま作業中お仕事中の静音さんと目が合ってしまう。


「あ、アナタ様! そんなじ~っと女性を見つめるモノではありませんよ!(照)」


 照れ隠しをし頬を赤らめている静音さんなのだが、その足下には何かを詰め込んだ大きい茶色の麻袋が存在感アリアリな感じでたたずんでいたのだ。


「し、静音さん……。その足元の袋は一体何なのかね? なのかね?」


 オレは答えをしりつつも、その日暮らし風のヒロインのように語尾を繰り返して静音さんに問うてみた。


「えぇ゛これですか? これはそのぉ~…………バンダナ? そう僧侶に必需なバンダナですよ!!」

「そんな大きなバンダナはこの世に存在しない! (ビシッ)」


 静音さんの大ボケに対して、オレは思わずツッコミを入れてしまう。大体なんだよ、僧侶に必需なバンダナとやらは!? 誤魔化すにしても、もう少しだけ捻ろうぜ!


「いやいや本気本気マジマジ。今のワタシはなんてゆうか、そのぉ~……不祥事が発覚して追い詰められた挙句、記者会見で開き直った公務員(政治家)くらいの本気度ですからねっ!」


 うん、それはもう自白したのと同義だからね静音さん。


「ま、まぁそれは棚上げしまして……そうですね。家の中では何かもうアレなので、お外で決着をつけるのはどうでしょうか? 言うなれば……野外お外deプレイというやつですね♪」

「……どれだよ(ぼそりっ)」


『静音さんは自分のことを棚に上げたてまつった』


「そ、そんなんでこの人が納得す……、」

「はい! 分かりました! あなた様の言うとおりですね! さっそく外に出ますので!!」


 先ほどの怒りとは打って変わってしまった農夫のおっさんの態度。静音さんが言うがまま、そそくさと家の外に出てしまう。


「…………」

(何なんなの? この世界では誰も静音さんには逆らえないの? もしかして臨時とはいえ、この世界の管理人だからか???)


「さ、アナタ様もお早く外に行きませんと。……彼氏・・がお待ちですよ♪」


 と静音さんに早く外に行けと促される。


「へっ? ああ……って別に彼氏じゃねぇよ!? (照)」


 あやうく頷き、これから先が納豆ネバーとエンディングストーリーばりに白いモノをかけあう、BLモノまっしぐらになるところだった。


「ちっ……」


 静音さんはオレにちゃんと聞こえるように舌打ちをした。お、恐ろしすぎるわ。

 そうしてオレを先頭に、天音・葵ちゃん……そして何故だか時間をかな~り空けて静音さんが家の外に出てきた。外に出たはいいが麻袋(自称バンダナ)が重いせいか、ずるずると人気者のサンタのように袋を引きずりながら家から出てくるメイド姿は、とてもシュールな光景だった。


「ど、どんだけ家の中のもん強奪してきたんだよ?」


 冗談抜きに、下手すりゃ家の外壁に縄をかけて家ごと盗みそうな勢いだしな!


「ふふっ」


 うーん、うーん……っと静音さんが家の外壁にロープかけ、一所懸命に引っ張ってる姿を想像してしまい、オレは少しだけ笑ってしまう。


「まったくもう、何を笑っているのですかアナタ様は!? さすがのワタシでもそんなことはしませんからね!」


 っとぷりぷりと可愛く拗ねる静音さんは、いつもよりも可愛く見えた。


「冗談、冗談だよ静音さん」


 と静音さんに茶目っ気交じりで言うのだが、


「ワタシならそんな非効率なことはせずに、この家に火災保険をたんまり掛け火を放ち燃やすくらいの子供心……だよNE☆」


 そんな子供心は捨ててしまえ!! 大体子供は家に火災保険なんかかけないぞ! むしろオレが妄想していた姿がカワイイと思えてしまうくらいだわ!



 年払いの掛け捨て火災保険に加入しながら第17話へとつづく

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