第14話 チュートリアル編・その1『家捜し編3』
前回までのあらすじ!!
静音さんのマスターキーという名の元もといモーニングスターにより、農家の鍵付きのドアをぶち破ることに成功したのだった……
ピ~ヒョロロ~♪ ヒョロピ~♪
「あー……空が青いなぁ~。おっ何だか
オレはありもしない
「さて、何でも開くことができるという『マスターキー』によりドアも開きました。それではいよいよ中に押し入りましょうか♪」
「そうだな♪ ……誰かに見つかる前にな」
「ですわね♪ ……ええ。誰かに見つかっては事ですし」
天音と葵ちゃんは粉々に粉砕された元ドアを踏みつけながら、家の中に入って行く。もうさ『家捜し』というよりも、押し入り確定じゃないかコレは……。
「何してるのですか? アナタ様も誰かに見つかる前にお早く家の中へ! ハウスハウス!!」
「あ~やっぱり、オレも入らないといけないのかぁ~」
静音さんに「誰かに見つかる前にさっさと入れ!』っと促されてしまう。RPGのお約束とはいえ他人の家にしかも施錠されたドアをぶち破って家捜しするのは、この物語の主人公としてはいささか抵抗がある。だがしかし、家に入らねば物語が進まないだろう。そう思い静音さんの後に続いて家の中へと入ることにした。
「うへぇ~、木で出来てるとはいえドアが粉々になってるし……」
オレはこの家の住人に同情しながら、なるべく元ドアだった木の破片などを踏みつけないよう、ゆっくりと忍び足で入った。それはドアを壊してしまった
バキッ!! ……ごめん前言撤回。思いっきり踏んじゃったよ。
「アナタ様、足元にはお気をつけ下さいね。あとドアの破片などは先が尖ってて危ないですよ」
などと静音さんがオレに気遣いの言葉をかけてくれる。きっと自分のメイドとしての本分を思い出しての言葉だろう。
「よっ、と」
オレはドアの残骸をなんとか乗り越え家の中に押し入った。家に入るとさっそく……というか、既にみんな各々中を調べ物資を探していたのだ。
天音は本棚を調べ、葵ちゃんは台所で食料を、静音さんはタンスを下から順に開けている最中だった。
「(何コイツらは事前に役割を打ち合わせとかしてんの? それに何で静音さんはプロみたいな開け方してんだよ……)」
泥棒のプロがタンスなどを開ける際には、必ず
……~からなのだ! じゃねぇよ! そこまで細やかな犯行の描写説明はいらないだろうがっ!
※よい子のみんなは真似しないでNE☆
「ちっ……。シケてやがんなこの家は!?」
タンスには何も
「(いやいや、盗みに入って物資に文句なんかつけるなよ。どんだけ厚かましいんだよ、アンタ。盗人
っとオレは呆れながらにそう思ってしまう。
「おっ! 本の中にへそくりがあったぞ! 額面はえ~っと……5シルバーだな♪」
本棚を探していた天音が
「5シルバー? それってこの世界の貨幣単位なのか? どれくらいの価値があるもんなんだ?」
「『シルバー』とはこの世界の貨幣単位で、5シルバーなら『かいふく草』が1つ買えます。また『1人分の宿屋代』ほどでしょうかね。やっぱりこの家はシケてやがりますね」
静音さんは丁寧にこの世界の貨幣価値を説明してくれたが、その額面にはご不満の様子。あとさ、あんまり「シケた、シケた……」って売れ残った去年の花火ばりに言わないで欲しいよなぁ。なんか悲しくなるからさ。オレはそんな静音さんを尻目に、葵ちゃんがいる台所へと目を向けた。
「うーん……。パンや干し肉などの食べ物があればいいのですが……」
葵ちゃんは上へ下へと台所の戸棚を隈なく探しているようだが、口ぶりから察するに生憎何も見つけることができない様子である。
「葵お嬢様、パンではなく原料の小麦や大麦・ワインなどもないのでしょうかね?」
「静音。ええ、それが
どうやらこの家は農家らし、野菜のみの食べ物しかなく、パンや肉・ワインなどとは無縁の生活をしているようだ。
「ま、それも仕方ないだろうな。パン・肉・ワインなどは一部の裕福な者しか口にできないしな。庶民の家ならこれくらいが普通であろう」
そう天音がこの世界について補足してくれる。どうやらこの世界では貧富の差がとても激しいと見受けられる。
「ちっ。
「(おいそこのクソメイド! お前どんだけ
そうして静音さんが腹いせにツボを叩き割ろうとツボを持ち上げた、まさにそのとき!
「おめえら! オラの家で何してんだこの野郎!?」
運悪く、いやタイミングよく家主が帰ってきてしまったようだ。そして当然の如くお怒りのご様子であった。
それはまさにシナリオどおり。オレは顔を引き
「(ど、どうする? どうするよおい!)」
だが無常にも空気を読まず、選択肢さんは都合よく出現してくれない。
「何か言ったらどうなんだ? ああんっ!?」
家主さんがブチ切れ5秒前。右手には干し草をすくうフォーク状の農機具|(いわゆるピッチフォーク)が、武器として装備されていた。さながらデーモン系モンスターっぽいシルエットでより怖い。
「あ、あのですね。これはつまり、その…………」
オレはなんとか誤魔化そうとするが、今まさにこの状況では誤魔化しようがない状態である。
「(や、やばい。やばすぎるだろこれは!? この後どう行動すればいい? 読者のみんなどれか選んでオレを助けてくれ!!)」
『素直にあやまる』ドアを壊したので、たぶん許してくれません
『説得する』果たしてそんなことできるのか(笑)
『とりあえず
いやいやいや、何でいつもいつも3つ目の選択肢はそんなにはっちゃけてるんだよ!? しかも何気に毎回それに誘導してるよな!? お願いだからもうちょい真面目な選択肢を表示してくれや! ってか勝手に家に押し入って家捜しした挙句、更に「
「(だとすると…………オレがとれる行動は1つだよな!)」
『オレは素直に謝りつつも、家主を説得することにした』
「あ、あのですね……」
……だが、残念なことにどう言い訳すればいいのか、上手い言葉が見つからなかった。
「(そもそもドアを壊したのは静音さんだし、家捜しいてるのもコイツら3人なわけで、オレはただそれを傍観してただけだしなぁ~。オレが取り繕う必要あんのかよ?)」
「ほら、黙ってねぇで何か言ったらどうなんだ?」
家主である農夫のおっさんは右手に持っていたピッチフォークの武器で、オレのわき腹を小突いてきた。しかもその先っぽがちょっと当たって痛いやら、くすぐったいやら(照)
「おいそこの赤い髪の女。おめえさ、オラの家で何してたんだ?」
農夫のおっさんは今度は本棚付近に居る赤い髪が目立つ天音に声をかけた。
「ふむ、私か? 私はただこの家の本棚を整理していただけだぞ! ダメなんだぞ。本の中にお金を隠しておくだなんて!(怒)」
「そ、そったらとこにオラのへそくりさ、隠してあっただなんて……。すっかり忘れてたべ」
天音は「『これは私が生涯大事に預かっておくからな!」っと言い本に隠されていた、へそくり5シルバーを自らの懐へと仕舞い込んでしまう。
「す、すまねぇべさ、そったらとこにへそくりさ隠してて……」
「(おいおい……冗談だろ?)」
何故か逆に物取りの天音先生が説教をして、盗まれたはずの家主が謝るこの構図。オレは天音の自分棚上げ理論構築に対して驚くことも忘れ、若干引き気味になってしまう。
「じ、じゃあ! おめえさは、そったらとこで何をしてたんだ?」
気を取り直した家主は、今度は台所にいた葵ちゃんに声をかける。
「ワタクシですか? ワタクシはこの家にある食べ物が
と葵ちゃんは子供を叱るように家主の食生活に説教を始めたのだ。
「す、すまねぇべさ。今後は野菜だけでねぇく、バランスよく食べるんで許してけんろ……」
またしても加害者である葵ちゃんが説教をして、逆に被害者である家主が謝っている構図。「そんなに好き嫌い言うのなら、この食べ物はワタクシが生涯をかけて胃の中で預かっておきますからねっ!」っと、葵ちゃんは台所にあった茶色い袋に食べ物を詰め込み始めていた。
「(……な、何なのコレは??? 何でそんな横暴な言動で状況を乗り切れていやがるんだよ!?)」
そうして家主は今度は静音さんの方を振り向き、丁寧な言葉使いでこう問いかけた。
「あ、あの失礼なのですが……あなた様は一体私の家で何をなさっていたんでしょうかね? あっ、いえいえ。決して他意はないのですよ。だから誤解しないでくださいね。ほんっと申し訳ないです、はいーっ」
家主はとても丁寧な標準語で静音さんにそう聞いたのだ。いや、聞いていたというよりも屈服していると言っても過言ではない。それになんだか商人みたく両手をニギニギと手もみをし、ご機嫌伺いをしているようにも見えた。
「(何で静音さんに対しては標準語なんだよ。……ってか、そもそも
オレは家主に対し、そうツッコミそうになったがなんとか思い留めた。だって右手に装備されているピッチフォークの武器が怖すぎるんだもん♪
「あーワタシですか? ワタシはこの家の施錠されたドアを作者から預かった
「(盗人猛々しいとか、そんな生易しいレベルじゃねかったわ。恫喝も恫喝。もはやただの
などと静音さんは家主を
「す、すみませんでした。ですが今年は長雨のせいで農作物が不作でして、自分が食べる物にも苦労するほどなんですよ。ですからその……」
「そんな言い訳がワタシに通用すると思っているのですか!? ほら、その場で小銭ジャンプしてみなさいな! さぁ早くしなさい!」
その
「は、はいーっ! 申し訳ございません!! すぐに始めますので……」
と静音さんが言うがまま素直に従いドスン! ドスン! っと、その重い巨体で小銭ジャンプをするとチャリン♪ チャリン♪ とポケットから何枚かのコインが床にこぼれ落ちてしまった。
「ほら見なさいよ! 1、2……4シルバーもポケットに隠し持ってたじゃないですか! もしかしてワタシの目を
静音さんは隠していた事に腹を立て、お怒りモードに突入していた。
「いえいえ、滅相もございません! ですが、これは私の全財産でして……」
「だから言い訳しないの! さっさとそれを拾い、ワタシに渡しなさい!!」
静音さんは床に落ちた4シルバーを家主に拾わせた挙句に、その全財産をすべて強奪してしまう。
オレはそれらのやり取りをぽかーんっとアホな子の顔で眺めていると、家主のおっさんに声をかけられてしまう。
「おめえはオラのこの家で何やってんだべっ!? ざっけんじゃねーぞこの野郎!(怒)X100」
「(な、なんかコイツら(主に静音さんに対する)の怒りがすべてオレの方に振り向けられてねぇか!?)」
先ほどとは打って変わった家主の態度。むしろ今までの
「ええっ!? お、オレは何もしてないよ!?」
「おめえは何もしてねぇのに、他人の家に勝手に入ったり、施錠されてるドアを粉々に壊したり、タンスを開けたりすんのか!? ああん!! (怒)」
「(い、いやそれらは全部
っと口に挟もうとしたのだったが、先に家主に喋られて言い訳する機会を失ってしまう。
「ま、まさかおめえ……最近流行の『
そう言うと家主は再びピッチフォークの武器を構え直しながら、今にもオレのお腹に突き刺そうと少しずつにじり寄って来る。このままだとまたお腹に最先端のアクセサリーが増えてしまうだろう。だが、そうはなるまいとオレは慌てて言い
「ち、ちがっ……オレは
慌てて否定するオレに対し、周りにいるクソヒロイン共は各々好き勝手なことを言い始める。
「ほ、本当なのか……。まさかキミが
などと天音はこの世の終わりのように嘆いてしまい、
「お兄さま……刺し入れには行きますからね!」
対して葵ちゃんはオレに何かを刺したいご様子だ。そしていよいよ本命のあの人が口を開くのだった。
「アナタ様……どうか
静音はそう吐き捨てるようにオレに言葉をかけてくれた。またしても三者三様ではあるが、三人共に必要以上オレを激しく責め立てるのだった。あと静音さんのは全然一言じゃないよね!?)
「こ、こんなに理不尽なことってあるのかよ……」
オレは嘆きとも悲しみとも取れる言葉を口にしてしまう。ってかコイツら全員、自分の事を棚に上げすぎだろがっ!! あとそこのクソメイド。お前が原因のほぼ9割以上を占めてるからな! ある意味で独占禁止法の解禁状態だわっ!
次回予告:『チュートリアル:は・じ・め・て・の戦闘編』をお楽しみに♪
第15話へつづく
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