少年は相棒の過去を知る
「まず、何から話そうか……。ジン君はこの絵画に描かれている、この方について聞きたいんだよね?」
「え? は、はい」
うーん、と唸ると国王様は僕とエミリーに長椅子に腰かけるよう言った。僕達が長椅子に腰かけると、対面に国王様が座った。
「それじゃあ少し長くなるけど、始めから話していこうか」
♢♢♢
今からおよそ三百年前、世界は混沌とした戦乱の時代だった。“
この六種族の中でも
故に
やがて男は
男はたった一人で一万四千の
後れてやってきた
「我の軍門に下れッ! 我が配下となりて、我と共に世界を取ろうぞッ!!」と。
普通ならば下らない夢物語だ、と一蹴されるだろう。だが、
そこで、本体の兵士の波が分かれ、
二種族の王の戦いは苛烈を極め、その戦いは丸二日にも及んだ。
こうして
これが後に王の右腕と呼ばれることとなる、技術王ガレス・デトロイトとの出会いだ。
こうして
それにより、己の技術力に誇りを持っていた
その魔法は雲を裂き、空の彼方で爆裂すると陽が沈んでいたにも関わらず、まるで昼間のような明るさが丸一日続いたという。
その様子を目の当たりにした
後に王の叡智と呼ばれる魔導王アグラエル・マギアとの出会いである。
次に
だが、やはり一種族と三種族の連合が戦えば結果は見えている。最終的に残された僅かな
後に王の剣と呼ばれる闘王アルバ・テスタロッサとの出会いだ。
こうして集まった
こうして三種族を配下に加え、残すは大陸最強の
向かったのは大陸の中央、唯一この古の大戦に関わらなかった七つ目の種族“
そして、そのことを知っていたからこそ、他の五種族は隣接しながらも、
それ故に臣下達でさえ怪訝な顔を見せたが、
その条件故に子供の内は
大樹の根元、そこに
だが、彼女の姿を捉えることが出来たのは
本来
まだ
ティターニアはそれを了承し、
ただ、
流石の
こうして大陸の三種族を配下に加え、二種族と同盟を結んだ。残るは別大陸、別名“魔の大陸”に巣くう
それでも
しかし、帰ってきた大使の姿は無残な物だった。
両手足を
大使は常にこう、話続けていたそうだ。
「
大使の無残な姿を見た
その激戦は
だが、
幸い魔物の力は
古の大戦が終わり、世界は確かに平和になった。だが、その平和な世界にはいなくてはならないはずの英雄の姿が無かった。
人々は涙を流し、その英雄の名を後世に語り継ぐと誓う。
残された臣下や国の民達は
偉大なる
♢♢♢
「――と、まあこれが昔の話だね。ジン君が知りたがっていたこの絵画の御方は僕やエミリーの御先祖様。御話に出てきた
「……」
僕は隣で話を聞いていた当のアレクに視線を向けると、そんなこともあったなッ! と何時ものように豪快な笑い声を響かせていた。
はぁ……と思わずため息が漏れる。
「それじゃあジン君、僕からも質問させてもらおうかな。一体、ジン君はアレクサンダー様とどういう関係なんだい? アレク、そう呼んでいたよね?」
無言で隣に腰かけているアレクに視線を向けると視線が交錯する。アレクは僕に対し何を言うでもなく、ただ無言で頷いた。
それは言っていいと捉えていいんだよね?
僕は覚悟を決めると国王様の方に向き直る。
「僕とアレクの関係は少し複雑ですが、師弟であり、相棒であり……友だと……僕思っています」
「そう、か……アレクサンダー様と君が……」
それ以上国王様は僕に声を掛けることは無く、瞑目し何かを考えているようであった。どうしていいものかと思っていると、突然頭を乱暴に掻き乱された。
何事だと思って頭を見れば、アレクの大きな手が僕の頭を乱暴に撫でていた。確かに乱暴ではあるけど、僕はアレクに頭を撫でられて悪い気はしなかった。
大きくて、ごつごつとしていて、それでいてとても優しい手だ。
「ガハ八ッ! そうか、師弟であり、相棒であり、友である、か」
「駄目だった?」
「そんなわけなかろう。まだ出会ってから数日ではあるが、我はジンのことを気に入っておる。我もお前のことを弟子だとも相棒だとも、友だとも思っておるわ」
そうか、でも国王様の話を聞いて納得がいった気がする。僕がアレクに初めて会った時に感じた思わずついていきたくなるような魅力、あれは英雄アレクサンダーの持つ人を惹きつける力だったんだなと。
「おっと、もう随分と夜も更けてしまったね。ジン君、今日は城に泊っていきなさい」
「え、でも……。僕みたいな奴が王城に泊るなんて危険なんじゃないですか?」
「ははっ、大丈夫だよ。君はエミリーの恩人なんだ、それにもしも何か言ってくる奴がいるなら僕が黙らせるから」
笑顔で国王様に言い切られてしまう。冗談めかして言ってるけどこの人ならば本当に出来てしまうから怖い。僕は苦笑を浮かべた。
「分かりました、それではお言葉に甘えさせていただきます」
「ああ、それと。まだ自己紹介をしていなかったね。僕はツヴァイ・フォン・ヴェラムエイジ、第五代ヴェラムエイジ王国国王を任されている」
するとすっと笑顔で手を差し出された。僕はその手を握ると、固く握手を交わす。
「改めて、風間塵です。よろしくお願いします、国王陛下」
「ああ、大衆の前でなければ僕のことはツヴァイさんとでも呼んでくれ、あんまり国王様とか陛下とかって言われるの好きじゃないんだ。なんなら、お義父さんって呼んでくれてもいいんだよ?」
悪戯っぽい笑みを浮かべてそう言うツヴァイ様に僕がぽかんとしていると、慌てたように横からエミリーが割って入った。
「お父様っ!」
「ははっ、冗談だよ。冗談」
顔を赤くしているエミリーのことを少しからかうとツヴァイ様は立ち上がった。
「それじゃあそろそろ夕食の時間だ。二人共、ついてきてね」
ツヴァイ様の言葉を最後に、僕達は執務室を退室した。
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