この世にふたり
蓮見庸
この世にふたり
「みんないなくなったわね」
「そうだな、こんなときだから仕方ないだろう」
「それにしてもあんな紙切れだけで、こんなに人がいなくなるなんて思いもしなかったわ」
「同感だな」
「いつになったらみんな戻ってくるのかしら」
「どうだろう、想像もつかないな」
「電車もバスも普通に動いてるのに、もうずいぶんだれにも会っていないのよ」
「おれも似たようなもんだ」
「ほんとに世の中どうなってしまったのかしら」
「わからないな」
「みんないないのに、わたしたちだけなにしてるんだろう」
「日常を繰り返している、かな」
「日常を?」
「そう、日々変わっていく日常をね」
「変わらない日常なんてあるの?」
「そんなもの、古今東西どこを見回したってあるはずがない」
「だったらわたし、もう行かなくちゃ」
「そうだな、おれもそろそろ行かないとな」
「気をつけてね」
「うん、明日また会おう」
新宿駅西口の
この世にふたり 蓮見庸 @hasumiyoh
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
桜の花の扉を開けて/蓮見庸
★3 エッセイ・ノンフィクション 完結済 1話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます