ギルドハウスって響きが良くない?
わたしがゲームを始めて数日が経ちました。
兄さんが居ない日中はゲームができないため、わたしはお義父さんの監視のもと、猫さんたちと遊んでます。
「ファム、ちょっといいか?」
「なにぃ?」
お義父さんに呼び掛けられてわたしは、お義父さんの方を振り向いた。
お義父さんは何やら本のような冊子とペンのような形をした木を渡してきた。
これは、鉛筆って言うんだっけ?
「お前もそろそろ文字が書けるようにならないといけない歳だからな。それで練習しな」
この世界の文字は『日本語』と呼ばれる言語が扱われており、ひらがな、カタカナ、漢字の三つが併用されている。
言語が三つあるってなかなか変わってるよね。
けれど唯一の救いは、王宮で使っていた文字とカタカナが同じ文字で、発音すらも同一だったことだ。
もし違う言語で通じ合うことができなかったら、わたしは今ごろ不安でいっぱいだったと思う。
言語は大事だね。よしっ! まずはひらがなから勉強しなくちゃっ!
「ニャー」
「なに? 一緒に勉強してくれるの?」
「ニャー」
わたしは猫さんたちと一緒にひらがなのお勉強に励んだ。ひらがなの横にカタカナが書かれていたため、発音とかには何の問題もなかった。
猫さんたちは、わたしが動かしてる鉛筆をジッと見ていたから、飛び付きたかったんだと思う。
それにしても鉛筆は便利だ。羽根ペンと比べて持ちやすいし、書きやすい。何よりインクを必要としない所が素晴らしいと思う。
紙の質感もかなり良い。これだけ書きやすい紙はなかなか無い。わたしのためにいったいいくら使ったのだろうか……?
「ただいまー。ファム、帰って来たぞ……って勉強してたのか」
「あっ、兄さん。おかえりなさい」
勉強に夢中になっていたせいで、時間をすっかり忘れてしまっていた。もう兄さんが帰ってくる時間になっていたようだ。
「今日もゲームするか?」
「うん! するっ!」
わたしは、猫さんたちにバイバイして兄さんと一緒に二階へと上り、ゲームの世界へとログインした。
「よしっ、今日はギルドハウスに行こう」
「ギルドハウス……?」
よくわからないけど、カッコいい名前してるね。
「ギルドハウスっていうのはな……」
兄さんから聞いた話によると、ギルドハウスとはプレイヤーたちがチームを作って拠点とする場所のことで、大会とかランキングが行われる時に作戦会議の場所として使われるらしい。
そんな場所に顔出しする理由は、わたしも自動的にそのチームに入ってしまっているので自己紹介することも含めているとのこと。
「まあ、そんなわけだ。別に堅苦しいヤツはいないし、注意するのはロリコンぐらいだ。気ままにやっていけ」
「う、うん……! がんばる!」
「ほら、着いたぞ」
兄さんの話を聞きながら歩いていたら、いつの間にギルドハウスにたどり着いていたようだ。
ギルドハウスの外見は普通の一軒家って感じがする。ハウスって言ってるから間違ってないとは思うけど……
「想像してたのと違う」
「やっぱりそう思うよな。けど、中はちゃんとしてるぞ?」
そう言って兄さんがギルドハウスの扉を開けると、わたしは中へと足を運んだ。
「わぁ……!」
中に入ると木製の大きなテーブルや切り株でできた椅子、日常系アニメでよく見る黒板など、現実で一度も見たことのないものばかりだった。
わたしは早速近くにあった切り株でできた椅子に座る。
ちょっと硬いけど、王宮生活で使っていた椅子よりかは柔らかいと思う。
「ユウキさん、その子が妹さんですか?」
「ああ、イリヤだ。仲良くしてやってくれ」
ややラベンダーが掛かった白い髪に、濃いめのラベンダー色をした綺麗な瞳を持った女性がわたしに近寄ってきた。
結月さんと比較すると、ちんまりとしていてとても可愛らしい感じだった。
このゲームは現実世界と身長を変えることはできないので、この女性は現実世界でもこの身長なのだろう。
年齢はわからないけど、保護者は見えないから十五歳以上なのは確かなので、同い年から見ればやはり身長は低いのだろう。
王宮生活をしてた頃のわたしは栄養失調で身長は低いし、痩せ干そっていたけど、彼女ほど小さくはなかった……と思う。というか思いたい。
これより最大の身長が小さいとか言ったら本格的に小学生じゃん! いや、今はわたしの方が低いんだけど、わたしって若返ってるじゃん?
ノーカンだよ。ノーカン。今のわたしはこれから大きくなるんだからね!
「かわいいかわいい……!」
「ふみゅぅ……」
「そのうちイリヤがプラムを撫でるようになるかもな」
「それはない!」
どうやら彼女はプラムというらしい。
プラムさん? プラムちゃん?
うーん……とりあえず、どっちも呼んでみることにして、反応を確かめてから呼び名を決めよう!
「プラムちゃん!」
「ブウゥーーーーーーッ!!!?」
わたしがプラムちゃんと呼ぶと、コーヒーを口に含んだ兄さんがコーヒーを噴き出した。
きたないなぁ……
「お前、五歳児から見ても小さいらしいぞ」
兄さんが小刻みに震えながらプラムちゃんに言うと、プラムちゃんはムッとした表情をしてわたしの両肩をガッシリと掴んできた。
「プラムお姉ちゃんって呼んで」
……お姉ちゃんを付けると、結月さんの二の舞になりそうだからやめておこう。
強く抱きしめられて身体が圧迫されるのはよくない。下手すれば死ぬ。でもプラムちゃんって呼ばれるのは嫌っぽいし、プラムさんと呼ぶことにしよう。
「プラムさん」
「お姉ちゃん」
「プラムちゃん!」
「……プラムさんでよろしい」
そんなにプラムちゃんって呼ばれるのイヤなの?
「プラムちゃんで良いんじゃないか?」
「良くない!」
プラムさんの後ろからは筋肉がむっちりとしたガタイの良い男性がやってきた。
プラムさんと仲良さそうだし、もしかしてそういう関係なのかな?
「兄さん兄さん」
「なんだ?」
「夫婦なの?」
「ああ、そう――――」
「違うよッ!!」
「違う!」
兄さんが肯定しようとすると、顔を真っ赤にしたプラムさんと男性がスゴい勢いで否定した。
こういうのアニメで見たことある。確か、両想いっていうヤツだよね?
「おいおい、ムキに成りすぎだろ。子供の戯言だろ? それともなんだ? もしかして本当にダンテはプラムのことが好きなのか?」
「そそそそそそそんなわけないだろ! こんなチビ好きなわけないだろ! な、なめてんのか!?」
めちゃくちゃ動揺してるじゃん。こんなに動揺してたら流石にプラムさんも…………あれ? 落ち込んでる……?
わたしは落ち込んでいるプラムさんの裾を引っ張って、誰にも気づかれないように話しかけた。
「付き合ってないの?」
「付き合ってないよ。だって、ダンテさんが私なんかを好きになるわけがないじゃない」
え、えぇー……
二人とも、鈍感過ぎじゃない?
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