着せ替え人形じっしちゅう!


 こんにちわ皆さん。結城ファムです。

 只今、わたしは結月さんに連れられて着せ替え人形をさせられています。


「ユイさん、恥ずかしいよぉ……」


 露出の多い服を着させられて恥ずかしい。背中や肩、首もとが丸見えだし、スカートだって短すぎて少し動くだけでパンツが見えちゃいそう。


「ちょっと待って。スクショだけするから」

「ふえぇ……」


 何度かポーズを決めさせられて衣装チェンジさせられた。今度の服装は首や裾にゴムが入っている水色のスモックと呼ばれるモノだった。

 幼いイメージをさせる服で今のわたしにはピッタリだと結月さんは褒めていた。


「本当に褒めてる?」

「当たり前じゃない! 幼稚園児服は最高なのよ! じゃあ次はこっちね」


 今度は少し大人っぽい雰囲気のする服を渡された。

 結月さんが家に来た時の服に少し似てる。ブレザーって言うんだっけ? それにチェック柄のミニスカートと黒いタイツだね。

 まあ、さっきの二つよりかは良いかも。


「こんな感じでいい?」

「うんっ! マジ天使ッ! こんな先輩が居たら高校生活が伝説になるよ!」


 えー……そんなに……?


「じゃあ次はコレね。ワイシャツは脱がないで良いから、スカートとブレザーと靴下は変えてね?」


 次に渡されたのは黄色いセーターと白いスカート、それから白いニーソックス。

 大人っぽい服装だけど、ブレザーと比べると少し柔らかくて子供らしい雰囲気が出ていると思う。


「セーターでも天使は天使ね。神様じゃないの!?」


 一瞬わたしの正体が子だってバレたのかと思って内心めちゃくちゃドキッとした……心臓に悪いからそういうことを言うのは冗談でもやめて欲しい。


「じゃあ次はこっちね」


 結月さんが出してきたのはセーラー服だった。ええっー……まだ続くのぉ……?

 制服シリーズを一周着させられると、次はコスプレシリーズに突入していった。

 メイド服やとある日に子供の欲しい物を何でも用意してくれる神様の服や神様を崇め奉る時に着る巫女服など。

 ありとあらゆる部門における服を着させられたと思う。

 その過程で気になった水着はピックアップしてあとで購入することにした。

 これでケーキと水遊びすることができる。でも…………


「つかれたぁー!」

「ごめんね。つい熱中しちゃって」


 三時間以上着せ替え人形をさせられていたわたしは既に精神的にヘロヘロだった。

 肉体は今も兄さんの部屋にあるベッドの上だから一切疲れないけど、精神的にはよくない。

 おまけにゲーム内での時間は現実世界の時間と速度が異なっているため、余計に疲れてしまうのだ。

 こんな小さな子供になんて過酷な労働を強いるの! ぜったいに許さないんだから!


「そこの喫茶店でパフェでも奢ってあげるから許して?」

「パフェ……? うん! 食べるッ!!」


 パフェに釣られました。はい。

 パフェは食べたことないし、見た目だけでもかなり美味しそうな雰囲気を出してるから仕方ないよね?

 パフェの魅力には勝てない。うん、これは世界の理だね。


「ユイさん、早く行こっ!」

「ふふっ、しょうがない子ね」


 わたしは結月さんに抱っこされてパフェが食べられるという喫茶店に入った。

 このVRゲームは子供用ヘッドギアの販売からまだ日付が経っていないため、子供の比率があまりにも低い。十二歳ぐらいの子供をたまに見かける程度だ。

 そのため、わたしのような小さな子供は非常に珍しいのだ。

 ……えっとね、何が言いたいのかっていうとね。


 視線がめちゃくちゃ集まるんだよ……


 なにこれ? わたしにパフェを食べさせないつもりなの?

 めちゃくちゃ見てくるじゃん。猫カフェで猫さんたちと戯れてる時の数倍は視線を感じるよ。


「パフェ、食べないの? 食べないなら私が貰っちゃうけど、いい?」


 うぐっ……


「た、食べる……」


 人生初のパフェがこんなに視線が飛び交う中で食べることになろうとは思いもしなかったよ……


「はい、あーん」

「あ、あーん……!」


 視線が気にならないように目を瞑って結月さんに差し出されたスプーンを口に含んだ。

 ――――っ!? こ、これは……!?


「あっま~~~~いッ!!!」


 これがパフェ!? めっちゃ美味しいんですけど!?

 ちょっと結月さん、もっとパフェを寄越して!

 気がついたら周囲なんて気にならないぐらいパフェに夢中になってた。ここはゲーム内なので実際にお腹が膨れることはないのでいくらでも食べることができる。

 わたしはその勢いのままパフェを食べ切ってしまった。


「…………帰る」


 急に恥ずかしくなってきた。

 わたしはただパフェを楽しんでいただけなのに、お客さんたちはわたしをまるで何かの名物を見るかの如くわたしのことを囲ってきた。

 わたしはパンダさんじゃありませんッ!!

 結月さんの手を引いて急いで喫茶店から退却して行った。


「兄さん!」

「うおっ!? どうしたイリヤ!?」


 正面からロリコンさんと一緒に歩いてきた兄さんを見つけると、わたしは兄さんの大きな胸に飛び込んだ。

 すると兄さんは、わたしの勢いに押し負けて尻餅をついた。

 なんかわたしが兄さんに欲情して押し倒したみたいになっちゃってるじゃんッ!!

 あと、兄さんのHPゲージが少し減ったような気がする!


「ユウキ、ズルいぞ! そこ変われッ!!」

「少しは心配しろよ」


 兄さんと再開したので、今日はここまでにして解散することとなった。


「兄さん、つかれた……」

「こっちは向こうの三倍の時間で動いてるからな。もう夕飯だし、さっさと食べて寝るか」

「うん……」


 わたしは兄さんに抱っこされ、一階へと降りた。

 一階へ降りるとビスケットたちがわたしの元まで寄ってきてくれた。


「やわらかい……」


 こんな疲れてるときにはやっぱりモフモフ成分だよね~。モフ値が回復していくよ……


「ごろごろごろごろごろ~」


 モンブランの首元を撫でると同時にごろごろ言うと、モンブランもそれに合わせてゴロゴロと喉を鳴らした。

 わたしが撫でるのをやめるとモンブランはもう終わりなの? という表情をして首を傾げていた。


「ごめんね。もう眠いの……」


 ( ;´・ω・`)

 猫さんたちは揃ってこんな顔してた。

 ごめんね。平日は毎日満足するぐらい撫でてあげるから、我慢してくれる?


「ほらお前たち。お前たちは週に二日休んでるだろ? ファムだって休みたい日ぐらいあるんだ。あまり贅沢言うなよ」


 お義父さんが猫さんたちに注意するとお義母さんが「猫に何を言ってるのよ」って言ってたけど、猫さんたちは反省したような顔をしてバイバイとわたしに手を振ってくれた。

 わたしもバイバイと猫さんたちに手を振ってお義母さんの元へ歩み寄った。


「まずは手を洗いましょうね」

「はーい」


 それから手を洗い終えてお義母さんに夕飯を食べさせて貰うと、わたしはすぐに深い眠りへと落ちてしまったのだった。




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