日曜日は特別らしい?



 目が覚めた。まだ日が昇ってないのに、目が覚めた。


「……なにしよう」


 お義母さんの部屋で寝かされてたけど、そのお義母さんが部屋に居ないんですが。


「下に行けばいるかな?」


 とりあえず一階に行けば誰かしら居るでしょという安易な考えのもと、わたしは一階に向かうことにした。


「んっ~~~~!」


 ど、ドアノブに手が届かぬ……

 この身体小さくなりすぎじゃない?

 というか何でこの部屋ドアノブが二つあるの? 嫌がらせ? 届かないからやめてよ。

 ……仕方ない、『空中浮遊』を使おう。

 神子だけ扱える『神技』の一つ、『空中浮遊』は空中を自在に浮くことができる素晴らしい能力だ!


「これなら余裕で届くね」


 扉を開けて地面に着地する。


「うっ!」


 力を使った影響でフラッときた。

 これが神技の反動だ。神技は人智を越えた能力故、神子であろうとそう簡単には扱えないものなのだ。

 この程度ならちょっと頭が痛む程度だったのに、身体が小さくなってる影響か反動も大きくなってる。

 あまり無理に使うのは良くないね。

 さて、扉は開いた! では下へと向かおうじゃないかッ!


「……うわっ、ここにあったか」


 第二の関門、階段がわたしの前に立ち塞がった。早朝でまだ暗いため、大変危険だ。

 けれど、わたしはもうこの対処方法を知っている。

 パチッと近くにあったスイッチを押すと階段に明かりが照らされた。


「ふっ、他愛ない」


 階段降りよ。

 転ばないよう、一歩ずつ気をつけながら階段を降りる。

 未だに身体のバランス感覚に慣れてなくて歩いているだけでよく転ぶので、階段はより慎重にゆっくりと降りる。


「よいしょ、よいしょ……」


 この手すりが非常に有り難い。手すりの有り難みを今初めて知ったよ。

 ありがとう手すり。君のことは忘れない。

 わたしは廊下を進んでお店の扉を開けるとモップを使ってお店を掃除しているお義母さんの姿があった。


「ファム? まだ寝てて良いのよ?」

「もう寝られない」

「……そういえば昨日は昼寝してたね。じゃあ猫ちゃんたちと遊んでてくれる?」

「うん」


 猫さんたちはモップに手を置いたりして掃除の邪魔をしているようで、今すぐ退けて欲しい感じだった。

 わたしが呼んでみると猫さんたちは一斉にわたしの方を向いて集り始めた。


「そのままお願いね」

「はーい」


 ゴロゴロゴロゴロ…………モンブランがめっちゃかわいい! 柔らかいビスケットはどこかな?

 ビスケットは膝に乗せると気持ちいいんだよね。

 エクレアは右手にいると落ち着くし、他の猫さんたちも可愛いから抱きしめたいッ!

 モフモフ天国だぁ!


「もふもふもふもふ~!」


 肉球が柔らかい!

 もうこれはわたしのために存在していると言っても過言じゃない!

 わたしが猫さんたちをモフモフして楽しんでいると、掃除を終えたお義母さんがわたしを抱っこして二階へと連れ戻された。

 あうっ~! わたしの猫さんたちが~!


「ほら、そろそろ始まるから座って見てなさい」

「?」


 朝からテレビなんて、何かやるのかな? しばらくテレビを観ているとお義母さんの大好きなアニメが始まった。

 ……なにこれ?


「プリキャアよ」


 プリキャア……?

 なんか言いにくいんだけど。そのアニメは三十分続いた。

 おおよそのストーリーは日常生活をしていてそこに悪役っぽいのが登場。変身して敵を倒す。以上!

 最初は子供騙しだろうなと観てたんだけど、思った以上に面白かった。

 あの変身後の可愛らしい服が欲しいと思うぐらいには面白かったよ。


「朝ごはん」

「まだよ。あと二つ観てからね?」

「二つ?」


 何かと思って観てみれば、ライダーと戦隊だった。どちらも男の子向けって感じなんだけど、ライダーはどちらかと言うと大人向けって感じた。

 お義母さんほど嵌まることはないだろうけど、週一で観る価値はあると思う。


「来週も観ましょうね」

「うん」

「じゃあ朝ごはんにしましょ。颯斗を呼んで来てくれる?」

「はーい」


 お義母さんに頼まれたので、兄さんの部屋に行く。

 そして、扉を開けて――――――


「兄さ……」

「変身ッ!」


 扉を閉めた。

 なんかスゴく恥ずかしいものを見たような気がする。一周回ってわたしの方が恥ずかしいんだけどッ!?


「……そういえば王宮では入る前にノックしてたね」


 あの常識がこっちでも伝わるかわからないけど、一応やってみよう。

 扉をコンコンと叩いてノックする。

 けれど、反応はなかった。


「通じないのかな……?」


 また扉を開けて同じことをされても困るし、ここは無限に叩き続けよっか!


「兄さん兄さん! 朝だよー!」

「起きてるよ! 着替えてから行くから、ファムは先に行っててくれ」

「はーい」


 わたしは階段の試練を潜り抜け、一階に降り立った。


「はい、あーん」

「あーん」


 朝食はお茶漬けと呼ばれる食べ物だった。『和の文化』というのはこの日本という国において最も重要視されている歴史らしく、それをわたしにも教えるためでもあるらしい。

 朝食を食べ終えるとしばらく猫さんたちと戯れることにした。


「猫ちゃん肉球ぷにぷに~!」


 今日もモフ値を補給すると、兄さんとお義母さんとわたしの三人でこの前のデパートへ行くことになった。

 この前は最低限を揃えただけらしく、もう少し買い足したいんだとか。

 それでも一着しか服を持ってなかったわたしから見れば十分多いと思うんだけどね。

 そんなわけでわたしたちは、デパートへとやって来た。


「颯斗、似合ってると思わない?」

「そうだな」


 兄さんは興味無さげに適当な返事をした。

 どこの世界に行っても男って服に興味ないよね。適当に似合ってれば良いと思ってる。

 わたしは冬を過ごすことができれば何でも良いんだけど、お洒落というのはできるならしたいものだ。


「こっちはどうかしら?」

「これの方が良い!」


 トップスはTシャツやノースリーブで、ボトムスはショートパンツやスカートをメインに買った。

 比較的露出が多い方だと思うけど、子供ならこんなものかもしれない。同い年ぐらいの女の子の服装は足とか丸出しだし。

 王宮でそんな格好してたらはしたないって言われて拷問三時間は確定だね。

 ワンピース一枚で過ごしてたわたしにとって、ニーソは生命線だったよ。

 ……わたし、生命線多いね。


「少しお茶でも飲んで行きましょうか」

「うん!」


 わたしはメロンソーダをお義母さんにお願いした。家でも飲めるけど、メロンソーダはわたしのお気に入りだ。

 あのシュワシュワした感覚が良くて、嵌まってしまった。

 まあ、淹れたばかりだと炭酸が強すぎて吐くんだけどね。


「ダメよ。お昼だって近いんだから、オレンジジュースにしなさい」

「えー」


 あっさりと却下された。

 ちょっと頬っぺたを膨らませてみたけど、無視された。

 炭酸はお腹が膨らむから仕方ないと言えば仕方ない。

 ……おやつの時に飲んでやるんだから!



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る