第2話『花と散る』
血みどろの甲冑が、音を立てる。
丘の上の兵士は、足元を見て小さく絶叫した。
先程肩を並べて戦っていた、戦友がもう動かなくなっているからだ。
誰かが言った。
最期に立つ者が、常に勝者であると。
その言葉が嫌になるぐらい反芻して、自分を苦しめる。
どうしてこんなことになったのだろうかと。
自分だけ生き残っても、何もできないのに、と。
戦いとは何のためにあるのだろう。
戦いは、いつだって甘い理想の成れの果て。
甘い言葉と理想だけで成り立つ世界は、きっと夢の中だけだ。
仁愛では、誰も救えないのと同じように。
剣を抜いた王者は、開いた傷口の痛みを必死に耐えながら前に進む。
彼の脳に浮かんでいたのは只1つ、再びこのような戦いを繰り返させないという望みのみ。
命を賭けたその想いは、いつかきっとかなうのだろうか。
小さな平和を願う戦士の墓に、そっと誰かが花を手向ける。
かつての小さい戦も、大きな戦争も、戦っていた兵士たちは同じ思いであっただろう。
敵であろうと、味方だろうと、きっと思いは一緒だった。
誰も悲しまない、平和な世界が続きますように。
墓に手向けられた花の花びらが、空にそっと向かって舞った。
ありのままのアナタへ 天狼牡丹 @Kanawo
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