ありのままのアナタへ
天狼牡丹
第1話『花束の出来る工程を見ている。』
『花束の出来る工程を見ている。』
死んだような目をしながら、人が街を行き来している。
風を切るように横断歩道を駆けている少女は、ヘッドホンに流れる音楽に身を委ねている。
彼女の通学鞄は、沢山の教材が入っているようで、彼女が動くたびに音を立てる。
彼女にとって見るものすべてが色鮮やかで、まさに青春を謳歌している、と言っても過言ではない。
うなじに流れる汗も、じっとりと濡れた長い髪の毛も。
それを気にすることなく、前に突き進めることも。
道を進めば、いずれ大通りから狭い道へと分かれていく。
狭い道が坂道だろうと、彼女の脚が恐れることはない。
ただ耳に流れる音楽を口ずさみ、今まで同様に坂を駆けあがる。
「あー、あっつ」
坂を上り切った後。
彼女が額の汗を手の甲で拭いながら、坂の上から街を眺める。
その景色が段々同じにしか見えなくなったら、それはもう心のキャンバスが真っ黒なのだ。
そして人間は何度でも、そのキャンバスを真っ白に塗り替えることだってできる。
彼女は、くるりとその景色に背を向け、またお気に入りの歌を口ずさむ。
明日はアイスを買って帰ろう、と思いながら。
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