いつか。【糸川×馬木】
今日は私の従兄弟の兄の結婚式。
ジューンブライドってやつだ。
美しい教会、真っ白なウエディングドレス、綺麗なステンドグラス、女子の憧れが詰まったイベントだ。
「いやー、俺も呼んでもらえるとなんて嬉しいな。」
力は私の隣でヘラヘラと笑ってる。
従兄弟は力のことを知っていて、この結婚式に招待したらしい。
別に呼ばなくても良かったはずなのだが、これは従兄弟の優しさだろう。
「力、今日はおとなしくしててよね。」
「なんだよ九華、その言い方だと俺がいつもやべえやつみたいじゃん。」
「やばいでしょ。声大きいし、テンション上がるとすぐ騒ぐし、それに美人と巨乳を目で追うし。」
「さすがに場をわきまえることくらいできるわ。あと美人と巨乳を目で追うのは男の性だ。仕方ない。」
「仮にも付き合ってる私の前でそれをしないでよ。ほら、今もあの人目で追ってたでしょ。」
「だから許してくれって。本能には逆らえないんだよ。」
「せめて逆らおうとしなさいよ。あんた逆らう気ないでしょ。」
私たちがそんなくだらない会話をしていると、今日の主役である従兄弟の康介がこっちに来た。
「やあ、力くんと九華ちゃん、久しぶりだね。相変わらず仲が良くていい事だ。」
「康介さん、お久しぶりです。」
「おっす、康ちゃん。」
「ちょっと力、さすがに康ちゃんはダメでしょ。」
「前は康ちゃんって呼んでたんだからいいじゃん。」
「前って何年前の話よ。もっと節度を持った呼び方あるでしょ。」
「あはは、九華ちゃん良いんだよ。康ちゃんって呼んでくれた方が僕も変に気を使わなくて済むからね。おっと、もう時間だ。それじゃ、今日は楽しんで行ってね。」
「はい!」
「じゃーなー、康ちゃん!」
スーツ姿のかっこいい新郎は足早に部屋の外に出ていった。
式が終わり、披露宴を迎える。
康介さんがいらない気を回したのか、私と力は隣の席を指定されていた。
「九華、式の途中めちゃくちゃ泣いてたな。」
「そりゃそうでしょ。従兄弟が結婚するんだから。」
「そんなもんなのか。」
「力は結婚式行ったことないの?」
「今日が初めてだな。兄弟いないし従兄弟も歳下だけだし。」
「へー。そういえばさ、ジューンブライドって言うじゃん。なんでこんな梅雨の時期に結婚式するのが良いんだろうね。」
「それは発祥のイギリスが6月に日本とは逆に、カラッとした陽気で晴れやすいかららしいよ。」
「そうなんだ。あ、披露宴始まるよ。」
会場に入ってきた花嫁さんは結婚式とはまた違う、凄く綺麗で華やかな姿だ。
ピンクのドレスが凄く可愛く美しい。
「私もあんなドレス着てみたいなー。」
「九華もああいうのに憧れるんだ。」
「そりゃそうよ。女の子は憧れるもんよ。」
「ふーん。」
力は急に興味を無くしたのかそっぽを向いてしまった。
しかしすぐに顔を真っ赤にしてこちらを向いた。
「いつか、着させてやるから。俺が。」
「...あんたそんなことよく言えるわね。」
「うるせえ。悪いか。」
「ううん。悪くない。」
「...なんか暑いな。」
「...そうだね。」
披露宴が無事終わり、各々解散となった。
力と私は見送りをしている康介さんのところに挨拶に行くことにした。
「康介さん、今日はご苦労さまでした。」
「康ちゃんおっつー。」
「ああ、2人とも今日は来てくれてありがとう。楽しんでくれたかな?」
「はい!花嫁さん凄く綺麗でした!」
「そうかい。あとで本人に言っておくよ。そういえば、披露宴が始まってすぐに2人とも顔を真っ赤にして反対方向を向いてたけど、喧嘩でもしたの?」
「え...」
「ああ...」
まさか蒸し返されると思っていなかった私たちはまた顔を真っ赤にしてしまった。
「あれ、なんかまずいこと言っちゃったかな。ごめんね。」
「い、いえ、康介さんは何も悪くないです。」
「そーそー、康ちゃんは何も...ってその言い方だと俺が悪いみたいじゃん。」
「それはあんたが後ろめたいと思ってるからじゃない?私はそんなこと一言も言ってないわよ。」
「なんだよそれ。」
「ははは、2人ともラブラブだね。付き合ってる噂は本当のようだ。」
「康介さん...それ噂になってるんですか?」
「そりゃそうさ。長い付き合いでようやくカップルになったのか、結婚もそう遠くないかもって親戚中で話題だよ。ちなみに言い出しっぺは九華ちゃんのお母さんだよ。」
「お母さん余計な噂立てないでよ!」
「九華おかん余計なことを...」
「何はともあれ楽しんでくれたなら良かった。それじゃあ、次の見送りがあるから。気をつけて帰ってね。」
「はーい。」
「うぃーっす。」
康介さんがいなくなると少し気まずい雰囲気が流れる。
「力、なんかごめん。」
「いや、大丈夫。九華のおかんが噂話好きなのは今に始まったことじゃないし。」
「そうだね。」
「じゃあそろそろ帰るわ。」
「うん。気をつけてね。」
「あ、そうだ。九華。」
「何?」
帰ろうとしていた力はこっちを振り向いて笑った。
「披露宴で言ったこと、俺は本気だから。じゃあな。」
そう言うと力は駆け足で帰って行った。
残った私は顔から火を吹きそうなほど熱くなった。
「はぁぁ!?」
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