彼女との出会い
Root 2-1;彼女との出会い
「あなたに会いに来た。」
少女が放った言葉の意味を聞こうとしたが、少女は神隠しにでも遭ったかのように突然居なくなった。
少女が居なくなった直後、周囲や立ち寄った場所を探したが、見つけることはできなかった。交番にも通報したが、ここ数日の間に海外からの宿泊客も、町外からの訪問者も居なかったことから、少女の存在を信じてくれなかった。
少女を探し始めて、どれくらい時間が経ったのかわからなくなる頃には、降り始めていたまばらな雪は次第に強くなり、少女の捜索を阻むぼどの吹雪へ変わっていった。
寮の門限が過ぎても、日付が変わっても少女を探し続けたが、アイツやレイコさんに捜索をやめるように強く止められ、僕は諦め寮へノコノコと帰ってしまった。結局、少女を見つけることはできず、僕は自分の愚かな”選択”に嫌悪感で心は一杯になっていた。
本当に少女は自身で、少女の帰るべき場所へ帰ったのだろうか。
あの吹雪の中、町を彷徨っていたのではないのか。
それとも、何か事件に巻き込まれたのか。
少女の行方が心配で、心配で、たまらなかった。吹雪が治まるまで研究室にも顔を出さず、自室で自分を責め、少女の無事を思うばかりであった。
なぜ、早く事情を詳しく聞いてあげれなかったのか。
なぜ、あそこで声をかけてしまったのか。
後悔が頭をめぐる。
~~
まだ雪がちらついているが、丸2日も続いた猛烈な吹雪が収まり、僕は少女を探しに下界へと下る。ちょうど少女と最初に出会った時間帯に、少女と出会った場所まで行くことにした。
除雪が間に合わず、2日間の積雪が僕の行く手を阻む。
この土地に来てしばらく経ったが、もともと雪とはあまり縁のない場所で生まれた僕にとって、雪の積もる坂道を降りるのにはまだ慣れていない。降り積もった新雪の下には凍った路面があり、ゴムスパイク付きのブーツを履いても、歩く程度のスピードで降りるのがやっとだ。
苦戦しながら、薄暗い坂道を下っていると、少女らしき女性が立っているように見えた。
頼む。少女であってくれ!
そう心の中で祈りながら、慌てて女性の元まで近寄っていく。
次第に容姿がはっきりと見えて来たが、街灯の下に立っていたのは少女ではなかった。
「そんな。。。」
目の前の彼女は少女ではないことに気が付き、落胆し歩みが止まる。
少女はどこに行ったんだ。
無事なんだろうか。
あの吹雪で、
嫌な不安が頭を過ぎったその時、
「なにか、用かしら?」
彼女が話しかけて来た。
少女ではないことに気づき、あまりよく容姿を見ていなかったが、彼女もこの場所には似合わない格好をしていた。
澄み切った海のように碧い目と褐色の肌、
肩まで伸びた美しい黒髪。
日本人ではなさそうだ。
服装も無地の淡い青のワンピースとビーチサンダル、
マフラーも手袋も身に着けず、
どう見ても地元の少女ではない。
背丈も160 cm後半くらいだ。
容姿からは高校生か入学したての大学生くらいに見える。
碧い吊り上がった目の為かどこかムスっとした印象を受けるが、
顔立ちは全体的にきれいに整っている。
「黙ったまま、
少女との共通点を見つけ、ついつい話しかけられたことも忘れて、彼女を凝視してしまった。
「あ、あの!すみません、これくらいの背丈の金髪少女を知りませんか?」
あまりにも、少女のことが気になりすぎて、質問されているのにも関わらず、彼女へ背丈を身振りで示しながら質問を投げかけてしまった。
彼女は急に大声を上げた僕の声に驚きながら、
「・・・・・ああ、あの子の事ですね。知ってますわ。」
「あの子は無事なんですか?」
「ええ、まあ、今はここに居りませんけど。」
良かった。
本当に良かった。
少女は生きてたんだ。
僕は少女を見殺しなんかしていなかったんだ。
心に安堵が広がり、目元が熱くなった。
「ちょっと、あなた。
「あ、す、すみません。あの子と2日ほど前に会ったんですが、途中ではぐれてちゃって。その後、探し回ったんですが見つけられなくて。。。あの子の事が心配で、心配で。」
自分の目元をコートの袖で擦りながら彼女に事情を話した。
(―――ここでも、あの女の話か――)
彼女が何かつぶやいた気がし、とっさに顔上げる
「えっ?何か言われました?」
「いえ、何もございませんわ。」
なんか言ってた気がするけど、気のせいかな。
「ところで、他の女性の事を考えながら、私の顔をジロジロと見つめるなんて、失礼極まりない方ですわね。」
「あ、いや、それは、さっきも言ったように…」
「言い訳は聞きたくありませんの。何かで弁償していただかないと私の気もすみませんわ。」
「ええ。。。そんな・・・」
確かに僕が見つめ過ぎていたのは悪いと思うが、ただ少しだけ彼女を見てただけで、怒られるようなことをしたとも思えないし、少女の事も説明したから尚更怒らないでもよさそうなのに。
彼女の怒りをどう鎮めようか困り果てていると、彼女から思いもよらない言葉が出てきた。
「カレー」
「へ?」
「カレーライスというお食事を
「え?」
突然の彼女の言葉に戸惑う。
確かに少女と一緒にレイコさんの店のカレーを食べに行こうとしたが、結局お店は閉まっていてカレーは食べれなかった。
少女から聞いたのか?
というか、なんで”にも”なんだ?
少女は食べれてないのに。
というか、そもそもカレーを奢るだけでいいのか?
「あの子は連れて行けて、
「いや、いや、そういう訳では・・・」
「では、案内してくださる?」
「は、はい。」
彼女の一方的で強引な態度に負けて、考える暇もなく、レイコさんのお店へご案内することになった。
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