Root 1-3; 夜空の散歩
この物語は選択に始まり、分岐を続け、結論に至る。
最良を求め、続いていく。
終わりのある、終わりのない物語。
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「きれい。」
真冬にもかかわらず、ワンピース姿の少女はそう呟いた。
「え、、あ、はあ、確かにそうですけど。。。」
「あのー寒くないんですか?風邪ひきますよ。」
「大丈夫。いつもこの格好だから。」
「か、カレーとか好きかな?」
~~
「あ、やっべ。」
店の入口の二重扉に掛かっている、看板は”CLOSE”の面が表示されている。
今日に限って閉まってる。
「なんだよ。なんで閉まってるんだよ。。。今日定休日でもないのに。」
ボヤキながら、店の中を覗こうと目を凝らすが、明かりも見えない。
「はあ、諦めるしかないか。」
ふと振り返り、少女を見ると、少女は少し驚いているようだった。
「あ、ごめんなさい。おいしいカレーをご馳走しようと思ったんですが、お店が閉まってるみたいで。。。」
「・・・・・・・・・・」
少女はなぜか、かなり驚いているようだが、怒ってはなさそうだ。
寒空の下、結構歩かせたのに、肝心のお店が閉まってるなんて・・・最悪だ。
出会った坂道から徒歩約10分。真冬に10分歩かせておいて、お店閉まってましたーなんて、デートだったら最悪だ。
(まあ、デートなんてしたことないが。)
「んーどうしようかな・・・」
この片田舎のこの時間帯ではロクに空いている店は無く、この店を除けば、もうすぐ閉店のコンビニか、さびれたスナックしか選択肢がない。
あいつにこの子を連れた状態で会うのは、かなり気が進まないが。。。やむなしか。。
気は進まないが、代替案を提案してみる。
「コンビニで暖かいものでも、買いに行きませんか?」
少女はコクリと頷いた。
透きわたる星空の下、さらに歩くこと10分、コンビニへ着いた頃には自分の手は悴んでいた。
少女はあの格好で本当に寒くないのか、不思議に思いつつ店内へ足を進めた。
♬♫~♪♬~♪~
いつもの入店音を聞きながら、暖かい店内へ少女と主に入った。
「寒かった。。。」
つい、心の声が漏れてしまったが、閉店間際のこのコンビニには誰もいないとわかっているので、独り言が漏れても気にしない。
「ちょっとここで待ってて。」
店の入口近くにあるイートインスペースを指さして、少女に声を掛けた。
コクリと少女は頷いた。
歩みを進め、レジを除くとあいつが暇そうにスマホをいじりながら座っていた。
「よう、暇そうだな。」
そう声をかけると、
「ういー酒でも買いに来たのか?このクソ寒い中ご苦労なこって。」
目線はスマホから動かさない。
僕はレジ横にある暖かい飲み物が陳列してある棚から、ココアとブラックコーヒーを一本ずつ取り、レジへ出した。
「肉まんも2つくれ。」
そう告げると、あいつはめんどくさそうに立ち上がった。
「はいはい、おふたつですねー」
あいつはレジ下の消毒液を取り、手に吹きかけ擦り込みながら、肉まんが入る保温庫へ進んで行くと、視界に異変を感じたようだ。
「あれ、だれ?」
それはそうだ。この場所にはにつかない美少女が佇んでいるのだから。
少女はイートインスペースと入口の間に佇んでいる。
顔はかろうじてこちらから見える。どうやら周囲の景色が気になるようで、辺りを見渡している様だった。
「おい、誰だよ。あの美少女は!・・・・・まさか、ついに一線を超えて。。」
急にこちらへ振り向き、汚物を見るような目でこちらを睨んでいる。
「いや、そんなことしてないから!お前が思っているようなことは何にもしてないから!!」
驚くのは分かるが、なぜ、そんな目を向けるのか・・・・あいつに落胆しながら、続けた。
「大学の坂道にあんな格好して一人で居たから、寒いかと思って暖かいものでもあげようかとー」
「攫ってきたと。おい、早く親御さんのところへあの子を返して、警察へ出頭しよう。仕方ない、出頭に付き合ってやるよ。。。。」
「おい、まて、話聞いてたか?一人で佇んでたって言ったよね?誘拐とかじゃないから!」
「んじゃ、どうやってここまで連れてきたんだよ?」
「あの格好じゃ寒そうだし、レイコさんの店のカレーを食べさせてあげようと思って、あの子にも『カレー食べるか?』て、聞いたら食うって言うから」
「だったら、なんでここに来るんだよ。今日店開いてただろ?」
「それが閉まってたんだよ、レイコさん所・・」
「そんなはずがねえ、俺はあそこの店のカレーを食べるために、わざわざ定休日以外を狙ってシフト入れてんだぞ!今日は間違いなく、開いてたはずだ!!」
「そんなの知らねえよ!行ったら店閉まってたんだよ!カレー食いたいのはこっちだよ!!」
そんなはずはないとばかりに、あいつはスマホを取り出し、電話を掛け始めた。
呼び鈴がなるが、すぐに電話の相手は出ない。
しばらく呼び続けると、電話がつながったようだ。
「あ、レイコさん、俺っす。今日お店やってないんですか?」
「え、風邪ひいたんすか?マジですか?大丈夫ですか?」
「あ、もうすぐ俺バイト終わるんで、帰りにお店寄りますよ!なんか必要なモノあれば言って下さい!!」
「あー大丈夫ですよー全然、え?・・・そうですねーそれじゃあ、今度カレー奢ってださい。それで十分っす!」
「はい、んじゃ、またあとで、お大事にっす!」
電話を切ったあと、あいつはなぜか何かをやり切ったような達成感の余韻に浸っているようだった。
「おい、俺の言ったとおりだったろ。。。。レイコさん、風邪かなんかか?」
「みたいだ。体調悪いから今日は店閉めてるらしい。いやー疑ってすまんねー」
嬉しそうにケラケラと笑っている。おい、さっきまでの扱いから一転しすぎだろ。
「にしても、誰なの?あのかわいい金髪ちゃんは?どう見ても未成年だし、見た目は中学生くらいか?」
「いや、俺もわかんないから、困ってたんだよ。」
「分かんないなら、警察連れて行きゃいいじゃん。」
「いきなり、あの強面がいる交番に連れて行って、お前だったらどう思うよ?」
「んーガキの時にあの強面と一緒に居たら、いくらメンタル強い俺でも泣いちゃうかもねー」
「だろ、せめて、状況とか聞いてあげて、そのあと、交番行こうと思った訳よ。」
「ふーん。なるほどね。まあ、いくら可愛いとは言っても流石にあの年の子には手を出さなそうだし。。。。」
「おい、ふざけんなよ!」
「冗談だってー怒んなよ。まあ、状況はなんとなくわかったが、あんまり長居するなよー俺はこの後大事な用があるから、こんなバイトさっさと上がりたいからさー」
ウキウキなのがこちらにも伝わるくらい、鼻歌を歌いながら再度、手を消毒し、備え付けのトングであつあつの肉まんを一つずつ取り出して、それぞれ包装紙へ入れていく。
「カラシは?」
「いらない。」
「はいよー572円になりますー」
慣れた手つきでレジを打ち込み、商品もレジ袋へ詰めていく。
「IC払いで。」
「かしこまりー」
チャリンと音が鳴り、支払いが終わり、商品を受け取り、少女のもとへ戻って行く。
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