第2話 三角公園の水飲み台
彼と彼女は「三角公園」の朝と昼の違いを知らない。が、懸賞が掛かっているとあって人が群がり、公園の写真をバシャバシャ撮っている。
「そういえば、この<三角公園>って1回も一緒に入ったこと無いよね?行ってみようか」
彼女が頷くと、車道を横切り<三角公園>に踏み入った。とはいえ、特別どうと言う事などある筈もない。
「うーん、俺も一人ではこの公園に来た事はあるけど昼ばっかだったなぁ。違いなんてあるのか?」
ぶつぶつ言いながら、取り敢えず3台設置されている内の、1つの石のベンチに腰掛けた。夜なので多少お尻がひやっとする。しかし、それが心地良くもあった。
「なんか気づいた事ある?」
「うーん、どうかなぁ。よくわかんない。普通の公園だよ、狭いけど」
「そうだよねぇ。何が昼と夜で変わるんだろ。まぁいいや。気になるけど」
コンビニで購入したポテトフライを二人で摘まんでいる。
「喉乾いちゃった」
彼女は公園の真ん中にある水飲み台に向かって行った。その水飲み台は公園に来る人が少ないのでかなり古しくなっている。
「その水、大丈夫かなぁ」
「きっと大丈夫よ。あれ?ねぇ、ちょっと来て」
彼女は何かに気づいたようだ。彼が水飲み台に駆け寄る。
「蛇口が2つ、上に立ち飲み用が1つあるけど、蛇口に<青>と<赤>の印があるわよ。普通<赤>なんてないわよね?公園の水飲み場に。銭湯みたい」
「<赤>は大抵お湯用だな。でも公園にお湯用なんて無いはずだけど」
彼はそう言って何も考え無しに<赤>印の蛇口を捻ってみた。
「うわっ!」
二人同時に声が出て水飲み台から離れた。<赤>印の蛇口からピンクががった液体が流れ出て来た。
「なんだこれ!」
暫く流しっぱなしにしていると、何だか甘くていい香りがしてきた。
「ん、その割にはいい匂いがするぞ」
彼は流れて来たその液体を少し舐めてみた。
「あ、甘い。いちごミルクみたいな味がする」
「ほんとに?」
彼女も舐めてみた。確かにいちごミルクの味がする。
「うそぉ~。こんなの出て来るか?普通!」
「だよね!私、お腹壊れちゃうのかなぁ」
「きっと大丈夫だよ。特に悪いような味がしないし。でも、これ冷たくてうまいな!」
彼がそう言うと、<赤>印の蛇口から出てくるものを手で掬って本格的に飲んでみた。
「やっぱりいちごミルクだ!信じられん!」
彼女もがっつり飲んでみた。
「ほんとだ~!いちごミルクだね!つめた~い!ふしぎ~!」
「しー。声、でかいよ。もしかして、これが昼と夜の違いかもだよ。だって普通、蛇口からいちごミルクなんて出てくる筈ないじゃん!」
「そうね。<赤>印の蛇口があること自体、少し変よね?」
「じゃぁ、黙ってそーっと帰ろう。そんで明日、また明るい内にここに来て<赤>印の蛇口の事を確かめよう。他の蛇口にも何かあるかもだし」
彼がそう言うと、二人は<三角公園>から何事も無かったかのように手を繋いでスキップしながら帰って行った。
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